アア


 駅から歩く帰り道 ふたつの影と並んで登るいつものサカ
 遠くで聞こえる電車の走る音 水のせせらぎ消されたカワ

 カーテンの透間からいつもと同じ光が差し込む部屋のアサ
 雨が降っても開いたことのない ビニールをまとったカサ
 日差しを受けてわずかに光を放つ粉々に砕けた揃いのサラ
 花瓶の横で体を横たえ涙を流すようにその身を散らすハナ

 アナタは言った ワタシが嘘をつくのは人間の悲しいサガ
 ひとつ嘘をつくたび アナタの表情が隠される仮面のナカ
 ワタシは答えた 仮面はアナタの嘘を惑わすアナタのワナ
 ひとつ嘘をつくたび ワタシの仮面は剥げ落ちる深いアナ

 いつまでも一緒だ なんて明日に生きるための言葉のアヤ
 アナタの簡単な言葉で簡単に外れてしまう こころのタガ
 横に眠るアナタとの思い出は 毎日一つずつはじけるアワ
 静かに頬を流れる ワタシの涙で渇きを潤すアナタのハダ
 触れているだけで凍ってしまいそうな冷たいアナタのカタ

 いつかは消えるワタシの首に残った アナタの掌形のアザ
 決して消えないワタシの掌に残った アナタの最期のアカ


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