じゃあな


 じゃあな。
 それがあいつの最後の言葉だった。

 いつものように馴染みのバーであいつと酒を酌み交わしていた。
 いつものように明け方まで馬鹿な話に花を咲かせていた。
 いつものように店を出てまだ靄の煙る朝の街をさまよった。
 いつものようにいつもの場所であいつと別れる。

 じゃあな。

 いつものようにあいつはそう言った。
 いつものように俺は自分の住処へと帰る……はずだった。
 あいつと別れた瞬間感じた違和感。
 気がついたら俺はあいつのあとをつけていた。

 いつもとは違う道。
 いつもとは違うあいつの背中。
 いつもとは違う胸騒ぎ。
 やがてあいつは見慣れたマンションへとその姿を消した。


 じゃあな。

 俺は床に転がるあいつと俺の女に言った。

 俺はいつものように朝の街をさまよう。
 俺はいつもとは違う真っ赤なシャツを身に纏う。
 いつもとは違う俺にいつもの俺が告げる。

 じゃあな。


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