謎のタイムマシン


「おお!遂に完成したぞ!」
「博士、おめでとうございます。で、何が今回は完成したのですか?」
「うむ、今問題となっているゴミ問題を根本から解決してしまうという素晴らしい発明じゃ。その名も『物質原子化銃』!!」
「その名前からしてどのような威力があるのかは分かるような気がしますが、一応それはどういったものなのでしょうか?と聞いておきます」
「話の筋というものが分かっておるな、助手よ。この銃はその名の通りありとあらゆる物質を原子レベルにまで分解してしまうものじゃ。これであふれかえっておるゴミも処分することが出来るわけじゃな」
「お見事です、博士」
「うむ、しかしなぁ……」
「お約束ごとですね」
「言うな!」
「失礼しました」
「うむ。実はこれだけの威力がある銃じゃ。これを使えばどんなものでも分解できてしまう。例え人間であっても……」
「それってめちゃめちゃヤバイ代物じゃないですか!」
「商品化は難しいかのぉ」
「あったりまえじゃないですか!そんなものが流れたら人を殺し放題じゃないですか!何も残らないんじゃぁ」
「そうかぁ……久しぶりにいいものが出来たと思ったんじゃがなぁ。明日にでも処分することにするか」
「多少もったいない気はしますが、改良した方が賢明でしょうね」
「うむ……まあ、今日は寝ることとしよう」

 ズドーン!!!
「な、な、なんだ!?」
「は、博士!一体なんですか、あの音は!?」
「わ、分からん。研究室の方から聞こえたようじゃ。行ってみることとしよう」
「ハ、ハイ!」
「ところで、助手よ今何時かね?」
「えぇ〜っと、午前4時ですね」
「こんな夜更けに、泥棒かのぉ?」
「博士、ここは慎重にドアを開けた方が良いのでは」
「うむ、そうじゃな」
 ギ、ギギギギィ……
「どうです?何か見えますか?」
「暗くてよくは分からん。入ってみるぞ」
「気を付けて下さいよ、博士」
「分かっておる。ん、足に何か当たったぞ。武器になるかもしれん、拾っておくか」
「博士、電気つけますね」
「うむ……」
 カサッ……
「そこか!!」
 ズドーン!!!
「う、うわぁ!!……は、博士。手に持ってるのは?」
「ん?おお、原子化銃ではないか!」
 チューチュー。
「ホッ、ネズミだったのか」
「は、博士、ひ、人だったらどうするおつもりだったんですか!」
「いやぁ、まさか原子化銃だったとは思わんかったわい」
「思わんかったじゃないでしょう!もう、しょうがないですねぇ。ところでさっきの音は?」
「うむ、どうやらネズミか何かが悪さして原子化銃を床に落したんじゃろうな。あの音は原子化銃の発砲音じゃ。すっかり忘れておったよ」
「もう、人騒がせですねぇ……ん?ところで、博士これは何でしょうか?」
「ん?なんじゃ?」
「いや、このでかい箱のようなものです」
「はて?こんなの作ったかな?どれ見てみようか」

「博士、何か分かりましたか?」
「助手よ……私は自分も知らぬ間にすごいものを完成させてしまっていたのかも知れんぞ!」
「どういうことです?」
「これはタイムマシンじゃ!」
「本当ですか!!?」
「私の目に狂いがなければ間違いない。にしても、我ながらよくこのような代物を作れたものだのぉ」
「感慨深そうに感動されているところを申し訳ありませんが、これって本当に博士がお作りになられたんですか?」
「どういう意味かね?」
「少なくとも数時間前まではここにはありませんでした。それが今はある。しかもタイムマシンだとすれば、誰かがここに乗ってきたのではないですか?」
「おお、そう言われてみればそうかもしれんな」
「いや、そうですよ。誰かがこれに乗ってこの時代にやってきたんですよ」
「となれば、その正体を探らねばならんな」
「全く持ってその通りですが、どのようにですか?」
「簡単ではないか。このタイムマシンを使って、これが現れたであろう時間に行き調べればよいのだ」
「博士、お見事です。しかし、操作方法がお分かりになるので?」
「うむ、実に分かりやすく作られておる。問題はなかろう。では早速行ってくるから、留守番を頼むぞ」
「え、博士だけですか?」
「残念ながら一人乗りのようじゃからな。何、すぐ戻ってくる」
「はあ、いってらっしゃいませ」

 ヒュゥ〜〜ン
「操作通りに動いてくれておれば、ここはちょうど1時間前のはずじゃ。しまった、時計を助手に借りてくればよかったわい。まあよい。さてタイムマシンの方はまだ来ていないようじゃな。少し待ってみるとするか」

「かれこれ30分は経っておるはずなのに、一向に現れる気配がないのぉ。もしやわしがタイムスリップに失敗したのじゃろうか……いや、机の上に置いてある物質原子化銃が何よりの証拠。にしても、今宵は冷え込むのぉ。トイレに行きたくなってしもたわい。イヤ、イカンイカン。ここで我慢しなければここに来た意味が無いではないか。ガマンガマン……」

「おかしい。全然現れないではないか。もうわしは限界……急いで戻れば大丈夫じゃろう。ト、トイレへ行こう……」

 ジョ〜〜〜
「ふぅ〜生き返るわい」
 ズドーン!!!
「あ!し、しまった。あの時間になってしもうた!間に合うじゃろうか?アイタタタタタタ!!は、はさんでしもうた。アイタタ、アタタタ……」
 ズドーン!!

「間に合わなかったようじゃなぁ」
「あ、博士、お早いお戻りで。あれ?タイムマシンはどちらに?」
「いや、実はのぉ〜。かくかくしかじかなわけなんじゃ」
「なるほど。となるとあのタイムマシンは一体どこから現れたんでしょうねぇ?」
「分からん。タイムマシンが残っていない以上、真相は闇の中じゃな……」

 それから5年後……
「おお!遂に完成したぞ!」
「博士、おめでとうございます。で、何が今回は完成したのですか?」
「うむ、5年前の記憶を元に遂にわしの手であのタイムマシンを完成させたのじゃ!」
「それは本当におめでとうございます!」
「うむうむ」
「ところで、それでどちらへ向かわれるので?」
「うむ、5年前の謎を解明しようと思う」
「ああ、あのタイムマシンの謎ですね」
「そうじゃ。謎のタイムマシンを使って過去へと戻ったわしがトイレに行っている間に何が起きたのか、それさえ分かればすべて解決するはずじゃ」
「なるほど」
「というわけじゃから、留守番はよろしくな」
「え!また留守番ですか?」
「5年前の記憶から作っとるもんじゃから、大きさも形も一緒なんじゃ。すまんの」
「はぁ、いってらっしゃいませ……」

 ヒュゥ〜〜ン
 バタン!
「おお、ちょうど過去のわしがトイレへと向かった時のようじゃ。さてと……うむ、まだ謎のタイムマシンは現れていないようじゃな。にしても、同じ物が2つもあると紛らわしいのぉ。ん?おお、そうじゃ!この物質原子化銃でこのタイムマシンは消しておこう。同じものはいらんからの。よいしょっと」
 ズドーン!!!
「ああ、しまった!でかい音が出るのをすっかり忘れておった!!」
 ドタドタドタ……
『ま、まずい!過去のわしらが起きてきてしもうた。こ、ここは隠れなければ……』
 ギ、ギギギギィ……
「どうです?何か見えますか?」
「暗くてよくは分からん。入ってみるぞ」
「気を付けて下さいよ、博士」

『懐かしい雰囲気じゃのぉ。ん、待てよ?となると、あの謎のタイムマシンはわしが作ったものなのか?いや、しかし、さっきまでは2つあった。わしが消したタイムマシンは誰が作ったんじゃ?頭が混乱してきたぞ……わっ!』
 カサッ
『な、なんじゃネズミか』
「そこか!!」
 ズドーン!!!
 その瞬間、わしの体は謎と共にすべて分解された。


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