レンタルライフ


 それにしても便利な世の中になったものだ。

 お金さえあればどんなものであろうとレンタルできるのだから。

 おかげで私の人生は幸せそのものだ。

 近代的で快適な家。乗り心地抜群でカッコイイ車。
 そして家の中のありとあらゆる家具や電化製品。
 全てレンタルだ。
 気に入らなくなれば変えればいい。
 それだけ選択の幅も広がり、楽しみは尽きない。

 明るい仕事場。仕事熱心な部下。
 これも全てレンタルだ。
 しかし、そのおかげで私が社長を勤める会社の業績は鰻登りであった。
 レンタルした物でレンタル料金を稼いでいるというのも不思議な感じはするが、おかげで金銭的な苦労はしないですむ。

 美しい妻。可愛い子供達。愛敬たっぷりのペット。
 これらもすべてレンタルだ。
 しかし、私には何の不満もない。
 例え嘘で作られた虚像の世界であっても私には全て現実の世界なのだ。
 本当に私は幸せだった。

 そんな幸せな生活に水を注す一つの手紙が届いた。

『いつも当社をご利用頂きましてありがとうございます。
 生憎ですが、お客様のご利用になっていらっしゃる商品の有効期限が近づいてまいりました。継続利用される場合は早急に継続処理をお願い致します。
 なお、有効期限が過ぎました場合には強制的に回収させて頂くことをあらかじめご連絡しておきます。』

 有効期限?
 おかしい、私がレンタルしている物に有効期限は設定していなかったはずだ。
 私が契約解除をしない限り、毎日自動で貸出期間が更新され、支払いも自動で行われていく。何か別に借りていた物なんてあっただろうか……

 その日から私は何者かにつけられるようになった。
 私は何を借りたのかどうしても思い出せずに不安な日々を送った。
 そして遂にその日が来た。
 ここのところ毎日私の後をつけていた男が私の目の前に現れ、何やら紙を取出しながらこう言った。
「お客様がご利用になっています商品の有効期限が参りましたので、この契約書に書かれているとおり、強制回収をさせて頂きます」
 その契約書に目線が行った瞬間、私の体に鈍い衝撃が走った。
「し、しまった……あ、あれを、わ、忘れて……い……た…………」
 私の体はその場に前のめりに倒れやがて動かなくなった。

 白い衣服をまとった科学者らしき男が水槽の前で何やら呟いている。
「あれほど、忘れないで下さいって言ったのにねぇ。まだ人工で作る体には限界があるから、定期的な交換が必要だって……」
 その水槽には1つの脳が浮かんでいた。


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