m a k e s h i F t
liVe2003.04.14
槇原敬之 CONCERT TOUR 2003
「本日ハ晴天ナリ」

2003/04/12 @ 東京国際フォーラム



4月12日土曜日。
前日夜更かしをしすぎた私は2時過ぎにゆっくりとベッドから起き上がった。
カーテンを開けると外はあいにくの雨模様。目を何度もこすりながら出かける準備を始めた。
槇原敬之との出会いは10年以上前。当時バイトをしていたレンタルビデオ店で聞いた「どんなときも。」が始めて聞いた曲だ。その店に勤務していた新入社員のH氏と一気に惚れ込んでしまった私たちは、その頃出た彼の2ndアルバム「君は誰と幸せなあくびをしますか」を何度もH氏の車内で聞きながら、一緒に歌を歌ったものである。
あれから10年以上の月日が流れたが、今も僕は彼の歌をよく聞いている。
ファンにとっては寂しい事件もあったが、そんなことはあまり関係ない。
彼の歌は非常に心に染みる。かっこ悪い男心を歌わせたら天下一品だし、女性の心が一番よく分かっている男性アーティストの1人でもあると思う。
繊細な詩の中に織り込まれた幾重もの感情の系譜が一つ一つ、時にはバラバラに、時には一斉に胸の中に押し寄せてくる波動は、なんとも形容しがたい思いを僕に与えてくれるのだ。

さて、堅苦しい文章はここまでにしまして、このように10年以上も彼のファンをしている私ですが、やはり彼のライブは初体験であります。
開場は東京国際フォーラム。
去年、globeのライブで来た時があるので、今回が2回目。かなり大きい箱であります。しかも今回は2階席。槇原さん(以下マッキー)を近くで見れないのは残念ですが、じっくりと彼の歌声に耳を傾けたいと思います。

開演は5時でしたが、10分ほど遅れて、場内が暗転しました。
20から始まるカウントダウン。残り5からはサンダーバードの声がサンプリングされていました。カウントダウンにあわせてバンドの面々が次々と現れ、最後にマッキーが登場。オープニングソングは意外にも「キミノイイトコロ」。2000年に発売された「太陽」というアルバムの曲です。観客が一斉に手拍子を始め、会場内のボルテージは否が応にも盛り上がります。2曲目の「Turtle Walk」ではアコースティックギターを手にしての熱唱です。この曲ではバンジョーが非常に印象に残りました。カントリー調のアレンジがいい感じです。その後に最初のMC。まずは感謝の言葉。大阪出身だが東京に来るとホームタウンに戻ったようで緊張するという言葉に、観客も拍手でこたえました。
「24hr supermarket」、「STRIPE!」とポップな曲が2曲続き、「ファミレス」で少ししっとりと。「STRIPE!」はアレンジがかなり変わっていて、サビの辺りまで全く曲が思い出せませんでした。少々意外な選曲だったこともありましたし。
ここでまたMC。一言「暑いね」と言うと、タオルで汗をぬぐいます。会場からは盛んにマッキーという掛け声が。それに「はいよ!」と気軽に答えています。汗を拭ったり、水を飲んでいたりして少々時間がかかってしまったところに「待ってるからゆっくりやって」とある観客の言葉にちょっと聞き取りづらいながらも必死に聞き取ろうとして、笑いながら答えるマッキーに人柄のよさを感じずにはいられませんでした。
また、カバーアルバムを出したいよねという話から、次に歌うという「ヨイトマケの唄」についてのお話が。この曲は、美輪明宏が小学生のときに授業参観で着飾った母親の中、一人作業着のまま来ていた友達の母親の姿に感銘を受けて作ったとのこと。ちなみにヨイトマケとはいわゆる土方仕事の中でも整地をする人です。大人数で大きな重りを引き上げ、それを落とすことで整地をするんです。
この曲は1965年の曲ですけど、昔にこういう曲があることに感動したとマッキーは言います。最近ではサザンの桑田さんもカバーしてましたね。
わからない人のために言うと「おとうちゃんのためならエ〜ンヤコラ♪」っていう曲です。1回ぐらい耳にしたことがあるのではないでしょうか。
私自身、昔の世相を写し出しているので泥臭いイメージがあったんですけど、しっかりと槇原サウンドになっていることに感動いたしました。ストレートな歌詞が、マッキーの歌声に合っている感じ。これが聞けただけでも今回のライブに来た甲斐がありましたよ。
ここで一旦バンドメンバーが下がり宣伝をかねたMCが。今回のツアーグッズにマッキー直筆のマウスバッドがあったんですが、それって顔になっているんです。全体が肌色になっていて。まあ、正直使うのには抵抗があるような代物です。これって、美輪さんのジャガーが肌色だということに張り合ったのだとか。まあ、冗談でしょうけど。
一通りMCが終わったところでマッキーが1人ずつ呼び込みながらメンバー紹介。ここで、素でドラムを呼び忘れるアクシデントあって、必死に謝っている姿が印象的でした。
そしてここからはアコースティックコーナー。
慣れ合いになるのが嫌でここのコーナーは日替りで行っているとのこと。複数回来ている人には嬉しいサービスです。今回は東京ということで「東京DAYS」を。これまた懐かしい曲です。これは5thアルバム「PHARMACY」に収録されていて、マッキーが24歳の時に作った曲とのこと。今は34歳なんだよと笑いながら言うと、このことに驚きを見せる観客もいて、それを見てはしゃぐ姿が見えました。
ここでギターが一人追加され、「君の声を待つ夜」を演奏。
さらにパーカッションが追加。ここでメンバーが座っているものについてのお話。みんなが箱や脚立なのに対してパーカッションが座っているのはと「カホン」いうペルーの打楽器。木箱の裏に丸い穴が空いているだけの楽器なんですけど、サンバなんかではよく使われるものです。試しに鳴らせてというマッキーのリクエストでサンバ調のリズムを刻んでくれます。これでサンバスイッチが入ったというマッキーがサンバダンスを披露。器用な方です。ここで何故かサンバつながりで浅草サンバカーニバルの話へ。胸に房のような飾りだけをつけて踊る女性がいるけど、あれを左右自在に回せる人がいるんだよいう話にバンドメンバーは少々驚きの様子。それから話は脱線に脱線を続け、最後にはその房飾りが代々家に受け継がれていく花嫁道具になっている始末。メンバー内で大うけしているさまを見てほほえましく感じたり。少々、観客をほったらかしという感もありましたが。
ようやく、本題に戻ってコンサートで皆さんと出会えたのも一つの縁だということで「縁」を演奏。
再びMCに戻り、ここで観客の方にも手拍子で参加を依頼します。「3・2」という3回叩いて、1拍置いて2回叩くリズム。まず練習ということで観客が拍手を始めます。するとその手拍子にあわせて「恋のバカンス」を歌うマッキー。サービス旺盛です。
ミスのない綺麗な手拍子に賞賛の声をあげるマッキーとメンバー。しかしここでマッキーが少し声のトーンを落としつつ「失敗は許されない」というきついお言葉。
「ちょっとシートを触ってみてください。いたって普通のシートです。しかし、実はここに最先端のチップが搭載されていて、手拍子を失敗をするとシートが落下します。そのまま上野駅発の夜行列車に乗せられます。目の前に東京駅があるというのに。大丈夫です、私たちも失敗したら落下します」
これには観客もメンバーも大笑い。そのままの勢いで「さよなら小さな街」へ。個人的には自分の手拍子が気になってしまって、歌に集中できなかったというのが本音です。同じリズムを刻みつづけるのは大変なんです。「オケピ!」でコンダクターも言ってましたし。
次のMCでは、どのような現象でも己が関与しているという事象についてお話。
槇原家では4匹の犬を飼っているそうで、仕事を終え家に戻ってくると、ある時は部屋がものすごい惨状になっている。ところが、ある時は全く綺麗なままである。どうしてこうも違う結果が出てくるのか。マッキーは考えたそうです。よくよく考えてみると、部屋がものすごいことになっているのは、仕事を終えた後に酒を飲みに行ったりして遊んでいたときで、家に戻ってくるときはさも仕事で疲れたかのような表情で帰っている。多分これはこういうことなのだろう。人間の双肩には悪魔と天使がいるという話がよくあります。先ほどのように遊びに行ったときは悪魔が家に飛んでいき犬達にこう言うのです。
「お前たちのご主人様は仕事で忙しいと言いながら、今は酒を飲んで遊んでいる。だからお前たちも好きに遊べばいいのだ」と。
そして、仕事が本当に忙しく帰りが遅いときは天使が家に飛んで行きこう言うのです。
「みなさん、ごきげんよう。あなたのご主人様はお仕事で大変お忙しい。ですから貴方たちもおとなしく待っているのですよ!」と。
悪魔と天使の話は冗談としても、犬や猫は主人の帰りを事前に察知して玄関で待っていることなどがあります。これは主人の匂いに反応しているわけではなくて、人間が微弱ながら発信している電磁波を受信しているのだという説があります。つまり、彼らはその受信によって私の行動を把握しているわけです。そうです、全ての結果は己の行動が起こしているのです。
なるほど、思い当たる節が無きにしも非ずなお話です。
よく忙しくて夢が叶わないと言ってる人がいますけど、それは本当に夢を叶えようとは思っていないのです、という言葉は正直耳に痛いです。
長い長いMCを経て、いよいよコンサートは後半に突入。
最初の曲は「花火の夜」。季節的にはちょっとずれていますが、そんなのは関係ありません。サビの部分ではステージに照明で花火が映し出されました。次は「Hungry Spider」が。これまた意外な選曲です。これも好きな歌なので自分のテンションも上がります。「これはただの例え話じゃない」「雨ニモ負ケズ」と次々とシングル曲が流れ、次に来たのが「Cowboy」! もうこの曲大好きなんです。マッキーの英語発音は非常にかっこいいので、ものすごくさまになります。次に演奏された最新シングル「Wow」では、サビの部分で会場が一体となって「フゥ!」と腕を振り上げて吼えます。これって事前にファンクラブ会報に載っていたそうで。マッキー自身もこのツアーでこの曲がどんどん好きになってきたそうです。
いよいよコンサートもクライマックス。
「本日ハ晴天ナリ」は曲の最後で「AMAZING GRACE」へとつながるアレンジバージョン。今回のコンサートツアータイトルにもなっている曲だけに、しっとりと聞かせてくれます。ステージの後ろが赤く夕焼けのように染まり、歌詞のように今日は雨降りだったのですが、心の中はまさしく晴天ナリでありました。
曲の終わりと共に緞帳が下がってきました。緞帳が下がる終わり方は新鮮だったので、ぼんやりとその下がった緞帳を見ていたのですが、その緞帳に描かれている絵がなんとアルバム「本日ハ晴天ナリ」のジャケットに描かれている絵なんです。うまい演出にちょっと感動。
アンコールを待つ拍手の間からかすかに聞こえてくる歌声。その歌声は徐々に大きくなります。よく耳を澄ますとそれは「どんなときも」のサビのフレーズでした。観客の中で続く「どんなときも」。何回目かの歌いだして緞帳があがり、ツアーTシャツに着替えた面々が登場。ここでなんとマッキーは愛犬ケンタくんをつれての登場。そして観客の歌った「どんなときも」のサビを歌ってくれました。ケンタくんはこの大勢の観客の前でも暴れることなく、実にいい子でした。
アンコールでは「LOVE LETTER」「遠く遠く」「Ordinary Days」と名曲3曲を披露。中でも「遠く遠く」は個人的に思い入れのある曲だったので、ちょっと胸にぐっと来るものがありました。
そしてエンディング。鳴り止まない拍手を口元に人差し指を当ててマッキーが制止します。そしてマイクを使わずに「ありがとうございました」とご挨拶。なんかTUBEのライブを思い出しちゃいました。ひときわ高く鳴り響く拍手に見送られたマッキーは舞台の袖へと姿を消しました。
あー、終わったんだなと感慨深く周りを見渡すと、ほとんどの客が席を立っていません。拍手を続けているのです。つまりダブルアンコールを要求しているわけです。既に観客側の照明はつき、公演終了のアナウンスも流れました。それでもほとんどの観客は拍手をやめないのです。その雰囲気に圧倒された私はただただ座席に座り、その拍手の音を聞いているだけでした。
マッキーはこのわがままな拍手に答えてくれました。
再びステージに証明が灯ると、ひときわ大きな歓声が飛び出しました。
そしてゆっくりとマッキーが登場。
感謝の言葉を言った後にはじまった最後の曲は「世界に一つだけの花」。
さらに大きな歓声とマッキーの歌声に全身が痺れました。
言うまでもない、SMAPが歌った2003年最大のヒット曲です。
サビの部分ではSMAPと同じ振り付けでマッキーと観客が右手を動かします。皆、覚えてるんだなぁと変なところで感心する私。
こうして3時間半にも及ぶコンサートは幕を閉じました。
お茶目なところをみせながらも、真摯な姿勢で観客と向き合っていたマッキーの姿には感動を覚えました。そして1曲歌い終えるごとに深々と頭を下げるその姿には、歌に対する深い愛情が感じられて、見ていて本当に気持ちのいいステージでした。

残念だったのは、マイクボリュームが中途半端な大きさだったことでしょうか。あとエコーがかかりすぎ。せっかくのMCで聞き取れない個所が多かったんです。あと2階席という場所のせいでしょうか、演奏の音よりも回りの観客の声のほうがよく聞こえていたんですよね。ライブは音響が命なので、ライブに集中できなかったのは本当に残念でした。

ホールを出ると、雨は降り続いていました。
でも本当に会場の中は「晴天」だったんですよ。

音楽に対しての姿勢って大事ですよね ★★★★★


− 公演データ −

槇原敬之 CONCERT TOUR 2003
「本日ハ晴天ナリ」

2003/02/01@大宮ソニックシティ
2003/02/04@宇都宮文化会館
2003/02/08@香川県民ホールグランドホール
2003/02/09@倉敷市民会館
2003/02/11@鳥取県立県民文化会館
2003/02/14@神奈川県民ホール
2003/02/20@京都会館第一ホール
2003/02/21@神戸国際会館こくさいホール
2003/02/23@石川厚生年金会館
2003/03/07@静岡市民文化会館
2003/03/10@熊本市民会館
2003/03/11@大分グランシアタ
2003/03/14〜2003/03/15@福岡サンパレス
2003/03/18@長野県民文化会館
2003/03/19@新潟県民会館
2003/03/28〜2003/03/29@グランキューブ大阪メインホール
2003/04/01〜2003/04/02@広島厚生年金会館
2003/04/05〜2003/04/06@名古屋センチュリーホール
2003/04/11〜2003/04/12@東京国際フォーラム
2003/04/16@仙台サンプラザホール
2003/04/17@岩手県民会館
2003/04/19@青森市文化会館
2003/04/20@函館市民会館
2003/04/23@旭川市民文化会館
2003/04/24@札幌厚生年金会館
全席指定 5775円

- TOUR MEMBER -
ボーカル:槇原敬之
コンサートマスター/ギター:小倉博和
バンジョー、マンドリン、アコースティックギター:有田純弘
ベース:松原秀樹
キーボード:門倉聡
キーボード:柴田俊文
ドラム:松永俊弥
パーカッション:またろう

- SET LIST -
M1
キミノイイトコロ
M2
Turtle Walk
M3
24hr Supermarket
M4
STRIPE!
M5
ファミレス
M6
ヨイトマケの唄
M7
東京DAYS
M8
君の声を待つ夜
M9
M10
さよなら小さな街
M11
花火の夜
M12
Hungry Spider
M13
これはただの例え話じゃない
M14
雨ニモ負ケズ
M15
Cowboy
M16
1秒前の君にはもう2度と会えない
M17
Wow
M18
I got a friend.
M19
本日ハ晴天ナリ 〜 AMAZING GRACE
アンコール
M20
LOVE LETTER
M21
遠く遠く
M22
Ordinary Days
アンコール
M23
世界に一つだけの花
 

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