TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2001
【Soul Surfin' Crew】
2001.8.23 横浜スタジアム
8月23日木曜日。 その日は前日の荒れた天気とはうってかわって、青空が広がっていた。 夏の定番となっているTUBEの野外スタジアムライブ。それはナゴヤ球場、甲子園球場、そして横浜スタジアムで行われている。 本来であれば前日の22日に行われるはずだった、横浜スタジアムでのライブは台風のため、TUBEにとって野外ライブでの初めての延期となった。 それでも、スタジアムはほぼ満席だ。これだけでも、ファンのTUBEに対する気持ちが伝わってくるようだ。 ステージには三角形の形を作るように3本の柱が立てられており、それぞれのてっぺんと、1番高い奥の柱には中ほどに球状のドームが平行四辺形を描くように設置されている。 そして6時15分。その3つのドームからエレベーターで現れる、春畑、角野、松本のメンバーたち。前田は1番高いところから現れるかと思いきや、ステージの左端から、1人乗りのホバークラフトのような乗り物に乗って登場。この時点で会場のボルテージも一気に頂点にのぼりつめていく。 1曲目は今回のツアータイトルにもなっている「Soul Surfin' Crew」。綺麗に揃った手拍子がスタジアムに響く。続けて「−花火−」「Only You 君と夏の日を」とヒットナンバーを飛ばす。既にスタジアムの観客は一体となって、TUBEの繰り出すメロディを盛り上げていく。これぞライブの醍醐味と言えるのだろう。 ここで最初のMCが入る。前田曰く、今回のツアーのコンセプトは「スペイシーな世界」で、銀色の輝くコスチュームのコンセプトは「光GENJI」なのだそうだ。会場に笑いがこぼれる。そして、「今回の台風のせいで全くリハーサルが出来なかった」と言う。それを聞いて、ついついハプニングを期待してしまったのは私だけではあるまい。 「初恋」のカップリング曲「Risingu Sun」、そして「Tシャツの恋」「シャララ」と少しゆったり目の曲が終わったあと、突然ステージ両脇に設置された大型ビジョンに映る「おめでとう」の文字。このスタジアムライブの前に行われていたホールツアーに出ていなかったコーラスの伊藤"リンダ"一義とパーカッションの沓野"オジジ"行秀が戻ってきたことに対するメッセージなのであった。伊藤は「記念に1曲歌います」とギターでRidingの「空を見上げて」を弾き始める。さあ、いよいよ歌詞が始まるぞというタイミングで「両手を上げてバンザ〜イ!」と観客全員でバンザイ。残念ながら歌の披露はなし。ここで、沓野の指導により、次の演奏曲「Long Vacation」の振り付け指導。そして、全員の「お兄さ〜ん」の呼びかけでTUBEが再登場。TUBEにとって久しぶりのレゲェ調ナンバー「Long Vacation」を習ったばかりの振りに会わせてスタジアム一体となったグルービングを楽しむ。 再びMCをする前田。 「アーティストには未発表曲というものがあります。エリック・クラプトンとか、マライア・キャリーとか、日本語版のみボーナストラックとして未発表曲を収録とかあるでしょ? まあ、ぶっちゃけて言えば『ボツ曲』なわけです。え? 収録にもれただけ? そうです、もれた曲です。TUBEにも未発表曲があります。この間やったナゴヤ球場でのライブは今年が最後だったいうことで、ついでに、いやせっかくなので、ここでも披露したいと思います。ただ歌詞に無理があるのは18歳の時に書いたものなので、勘弁してください。TUBEのテーマ曲のようなものを作ろうということで書いた作品です。Sea Side Band!」 デビュー当時を思わせるリズムに各メンバーがそれぞれにソロパートがあるこの曲では、その各自のソロパート時に大型ビジョンに映る「まえchan」や「はるくん」という言葉を声援として投げかける。そう、まるでアイドルのコンサートのようにだ。不思議と自分も若返ったような気がする。 続いて演奏された「情熱」の後、アルバム「Soul Surfin' Crew」の1曲目に収録されている「Ocean Message」が流れ、ステージはバラードタイムに。途中声を詰まらせながら語り掛けるように歌い上げる「サラバ青春」、そしてサビでの放水がおなじみとなっている「十年先のラブストーリー」。 演奏後、ステージが暗転。そしてインド風の音楽が流れ始める。そこに登場したのは竹馬を履いて大男となった伊藤"サイババ"一義であった。彼の登場で先ほどまでのムード満点のステージから一転、怪しげなムードとなるステージ。そして、はじまるバイオリンとパーカッションによる演奏バトル。弦楽器と打楽器という一見土俵違いの勝負は、逆に聞くものの耳をひきつける印象的なものであった。やがて奇妙だったステージは妖艶なステージとなり、幻想的なものと変わっていく。その幻想的な音楽からイントロの始まる「真夏の雪」でライブは再開。「初恋」へとつなげていく。 「みんなが野外で聞きたいと思う曲を演奏します。TUBE15年の集大成とも言える曲です。あー夏休み!」 ひときわ高い歓声に包まれるスタジアム。そして「さよならイエスタデイ」へ。この曲の途中では前田と沓野とのパーカッションバトルが繰り広げられ、観客も手拍子で答える。間に軽いMCをはさみ、「燃える煙るモナムール」「恋してムーチョ」と立て続けに演奏。最後にはド派手な花火が打ちあがり、最初のステージが終わりを迎えた。 アンコールまでの間に、スタンド側ではどこからともなくウェーブが始まる。1度、2度…。何度目かのウェーブが終わり、手拍子と共にTUBEコールが始まる。アンコールステージは近い。 アンコールは緑色のレーザーを放ちながらエレベーターを上る春畑のギターから始まった。衣装は一昔前の宇宙戦士を思わせるような、重みが感じられる派手な物。春畑を乗せたエレベーターが頂点に達する直前、1番高いところにあるドームに雷が起こり、爆発。そこに登場する前田。派手な演出でアンコールステージは始まった。 緑色の花火が次々と打ち上げられる中「What's wanna do?」が演奏される。次の「You'll be the champion」では、ステージ上に火柱が上がり、一転赤の世界に。そしてアンコールステージ最後の曲は「月と太陽」。演奏後、再び照明の落ちたステージにTUBEコールが響く。 最後のアンコールステージに現れたのはドラムの松本。独特の語り口でステージの雰囲気を穏やかに盛り上げていく。ここからはメンバー紹介。角野が呼ばれ、春畑が呼ばれ、長髪のかつらをかぶった前田が登場すると、一際大きい笑い声が会場を駆け抜けた。マイクを受け取った前田がサポートメンバーを紹介し、最後のアンコールステージはメンバーがTUBEが夏の存在になったと1番感じた作品という「Beach Time」からスタート。そして今回のステージにぴったりといえる「Hot Night」へ。そしてメンバー全員がステージ中央に集まると、大量の水飛沫が彼等を包んだ。 全身ずぶ濡れとなった前田が静かに語り始めた。 様々なことがあったこの1年。そして突然襲われた2人のツアースタッフの訃報。その内の1人はわずか3日前に天に召されたという。 「辛いこと、嫌になること、悲しいこととかいっぱいあると思う。でも、それでも自分の信じる道を突き進んでいけば、きっと道は開けると思います」 TUBEが何度も歌にも載せてきたメッセージ。静寂に包まれたスタジアムに暖かい拍手が起こる。そしてステージはクライマックスを迎えた。 涙に声を詰まらせながら「サザンクロス」を歌う前田に観客は無言で応える。 インストゥルメンタルで静かに「Keep on sailing」が流れる中、彼らは「ありがとう」という声を残してステージを後にした。 観客のTUBEコールがいつ止むともいえず続いていた。 『いつまでも 君のために サザンクロス輝くよ たまには負けそうになる夜もあるけど その笑顔とやさしさに癒されて君を照らすよ そんなには強くないこの胸は一人じゃ輝くことも出来ないよ 君という空がなければ』 演奏曲 |