ＡＣＴ.８６ 万事豆腐 (2000.06.25)
| 今アルバイトをしているところは、海沿いの工業地帯にあるため付近に飲食店が非常に少ない。コンビニですら１キロばかり歩かないとないのだから、下手な田舎よりも寂しいところである。 そんなわけで、敷地内には社員食堂がある。社員食堂と言っても、もちろん我らアルバイトも利用することが出来る。実は今回のアルバイトで社員食堂を利用するのが生まれて初めてであった私にとって、社員食堂は安くておいしいものか、安くてまずいもののどちらかだと考えていた。ようは安いんだろうなぁという印象が強いわけだ。が、そこは定食で６５０円。お世辞にも安いとは言えないと思う。私の感覚がおかしいのだろうか？いや、でもやっぱり高いよねぇ？まあ、それでも決してまずくはないので、私はいつもそこを利用しているのだが。 メニューは定食３種、カレーに麺類と少ないが、カレー以外は全て日替わりになっているので、メニューで飽きることはない。現に三週間近くここを利用しているが、定食のメニューがダブったことはまだないのだ。 で、定食とカレーを頼んだ場合には小鉢が一つ付いてくるのだが、小鉢にはメニューがたくさんあって、自分の好きなものを透明な冷蔵ケースから取り出すことになっている。いくつかあげると、納豆、ゴボウサラダ、マカロニサラダ、里芋の煮っころがし、冷や奴といったサイドメニューから、プリン、フルーツゼリー、果てはバナナといったデザートまで準備されている。ちなみに一番人気はバナナだったりするから意外だ。 さて、今日の私は豚の冷しゃぶ定食を購入して、小鉢には山菜の煮付けを選んだ。ここの定食には野菜がふんだんに使われているので、普段野菜不足の私には正直うれしい内容なのだ。今日の豚しゃぶにもたくさんのレタスとオニオンスライス、貝割れ大根が添えられており、この暑い時期にはちょうどいいなどと思いながらモグモグ食べていた。 私が座っていたのは４人がけのテーブルで、今は私しか座っていない。しかし、徐々に人が混み始めると、無条件に相席状態になるのが普通だ。と、私の向かいに一人のおじさんが座った。水色のＴシャツから、太い腕を覗かせている辺り、運送を担当していると思われた。おじさんのメニューはカレーであった。私はカレーを食べるときには、だいたいゴボウサラダといったサラダ系の小鉢を選択する。これも野菜を取らなければいけないという思いからだ。しかし、おじさんが取りだしたのは冷や奴だった。カレーに冷や奴という取り合わせも珍しいと思う。まあ、今日は暑いから、カレーだけでは得られない清涼感でも求めたのだろうと勝手に解釈しながら、ご飯を頬張っていた。 椅子へと腰掛けたおじさんはおもむろにスプーンを握り、冷や奴の小鉢を持ち上げた。おお、さすが肉体派は冷や奴の食べ方も豪快だなどと感心していたら、おじさんは意外な行動に出た。スプーンですくった豆腐を口へと運ばずに、そのままカレーの中へと入れてしまったのだ。それも全部。 茶色のカレーに浮かぶ、白い豆腐の島々。遠目に見ても、おいしそうには見えない。過去にも書いたが、私は結構色々な種類のカレーを食べたことがある。同じ豆系と言うところでは、豆カレーや納豆カレーを食したことはあるが、さすがに豆腐カレーは食べたことがない。しかし、おじさんはそんな私の視線を気にすることなく、豪快にカレーと豆腐とご飯をぐちゃぐちゃに混ぜ、口へと運んでいく。その食べ方を見ている限りでは大変おいしそうだ。あくまで、見ている限りの話だが。 そして、ものの数分でそれを食べ終わったおじさんはとっと席を立ち、食堂を後にした。 にしても、豆腐カレーは旨いのか？確かにご飯の変わりに豆腐を使ってみたら意外とヘルシーでいけるかもしれない。しかし、ご飯まで加わってしまうとどうなんだろうか。 私が自宅で豆腐を食べる機会は意外に少ない。そもそも私には豆腐料理のバリエーションが少ないのだ。おまけに、豆腐料理で火を使う場合、その前の下ごしらえが結構面倒で私は嫌いだ。いわゆる、水抜きというやつだ。普通は布巾か何かで豆腐をくるんで、上にまな板などの重しを乗せてしばらく置いておく。時間がない場合なんかはお湯で軽く茹でるなんて手もある。が、面倒なのだ。そこまでしてまで食べることもないかと思ってしまうのだ。だから、自宅で食べる場合はほとんど冷や奴か鍋物である。一度だけステーキを作ったことがあったが、手間以上の味が出なかったので、私の中では二度と作らないことになっている。そんな豆腐だから、カレーに入れるなどという発想は私にはとても出てこない。かといって、今度真似てみようかという気にもなれない。 今度誰か食べてみて、味の詳細を教えてはくれないものだろうか。あと、今思いついたのだが、ビーフシチューに豆腐を入れてみた感想も合わせて、是非！ |