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後部座席の恐怖
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独りの女性が車を運転していた。
彼女は人気のない峠で、偶然見つけたガソリンスタンドに車を滑り込ませる。
クラクションを何度も鳴らしてようやく出て来たのは愛想の悪い不気味な男で、彼は車にガソリンを入れながら、彼女や車の中を舐め回すように見たという。
手持ちの現金が無かったため、店員にカードを手渡した。男はカードを受け取ると、彼女を振り返りつつ事務所へと戻って入った。男はなかなか戻らず、事務所を見ると、何やら電話をしているらしい。腹が立ったが、彼女は男が出てくるのを辛抱強くまった。
ようやく戻ってきた男は、「このカードは使えなくなっている」と言う。
そんなはずはない、と彼女が強い口調で言い返したが、「今、クレジット会社が電話に出ているから事務所まで来てくれ」と事務所に引き返してしまった。
車を降りたくなかったが、カードを返してもらわなければ車を出すわけにはいかず、彼女は車を降りて事務所へと向かった。
彼女は事務所の中に入り込み、机の上に放り出されている受話器を持ち上げた。しかし受話器の向こうから聞こえるのは、ツーという機械音だけ。
振り返った彼女の目に、事務所の扉の内鍵を閉める男の姿。彼女は逃げ道を探したが、事務所の扉はひとつだけ。逃げるほどのスペースもない事務所で、彼女はあっという間に壁際に追い詰められてしまった。
男の腕が彼女の身体に伸びてきた。おそろしい力で肩をわしづかみにされ、彼女がもうだめだ、と思った瞬間、
「もう、大丈夫だ。今、警察がくる」男は彼女の予期しない言葉を口にした。
呆然とする彼女に、男は、彼女の車の後部座席にナイフを持った男が潜んでいるという。
その時、ガソリンスタンドの店員の通報でやってきたパトカーが彼女の車を囲み、驚いたことに店員の言った通りに、車の後部座席から見知らぬ男を引きづりだした。
後に彼女が警察に聞いたところによると、男は、下の町で彼女が車を離れている間に乗り込んだという。彼女を殺すタイミングを図って、ずっと後部座席に潜んでいたとのことだった。
もし、ガソリンスタンドの店員が機転を利かせて、彼女を車から降ろさなかったら、、、。
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おそらく、この話のオリジナルはアメリカ。
都市伝説に分類されているこの話は、風説というよりも、よく出来たショートホラーストーリーである。
類話として、「電気を付けなくて良かったな」、「ベットの下で」などがある。
この手の話が都市伝説とされているのは、おそらく、「私の友人(もしくは、そのまた友人)が体験したんだけど、、、」というおなじみのフレーズをともなって伝達されるからであろう。
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