イモムシ女 / だるま女 |
所はインドネシアの小さな島。日本人カメラマンが現地人に「いいものを見せてやる」と見世物小屋に案内された。 そこは森の中の、臨時に建てられたとおぼしきバラック小屋。しかも、案内人によれば、今晩開店するバーだと言う。 案内されるままカメラマンが扉をくぐると、中は薄暗く、部屋の真ん中に置かれた丸テーブルを中心にして、数人の男たちが酒を飲んでいた。 目が暗闇に慣れ、丸テーブルの上に何が乗っているかが分ると、カメラマンは愕然とした。そこには、両手両足を切断された、若い全裸の女性が居たのだ。 テーブルのまわりの男たちは、だるまのようになった女性をこづきながら、楽しげに酒を飲んでいる。女は薬漬けにされているらしく、虚ろに天井を見上げていたという。だが、ふいにカメラマンと目が合った瞬間、女は小さな声で「たすけて…、たすけて…」とうわごとのように繰り返しはじめた。 カメラマンはこの無残な見世物が日本人女性と悟ったものの、なすすべもなく、案内人に勧められるままに何杯かの酒をあおり、そのバーを立ち去ったという。 後にカメラマンが聞いたところによると、この恐ろしいバーは、2、3日で小さな島々を転々とするため、警察も摘発できないでいるのだそうだ。 ![]() この「だるま女」の話は、電気通信業界では、中国九龍城での出来事ということで広く語られているとのことである。 主人公は商社マンで、女性はイタリアで行方不明になった、友人の奥さんだったという。この女性は後に救出され、今は日本のどこかの病院にひっそりと暮らしているという。 ![]() 「だるま女」は、そののたうつ姿から「イモムシ女」とも呼ばれる。また、「ジャパニーズ・コケシ」と書かれた看板があったとの説もあり。 まあ、なんにせよ、あんまり趣味のいい話じゃない(笑)。なんか、昭和初期のカストリ雑誌の猟奇話みたいだねえ。 ![]() なお、被害者の女性は、海外旅行先のブティックの試着室でさらわれたという説も多いようだ。このあたりは、フランスの風説「オルレアンの噂」に類似性がみられる。 「オルレアンの噂」とは、1969年、ジャンヌ・ダルクで有名なフランスのオルレアンで流れた風説で、町の(実名の)ブティックの試着室の裏側が隠し扉になっていて、そこで試着した何人もの女性がさらわれてしまっている、と言うものだ。 さらわれた女性は、裏社会のシンジケートから買春組織に売られているとのこと。 この「オルレアンの噂」、始めは女学生の間での噂話でしかなかったが、そのうち行方不明が「事実」として語られ出し、警察が真偽を確かめるべく、その店を捜索するという事態にまで至ったという。 もちろん、件の試着室に裏口などなかったそうである。 この風説の的になった店は経営者がユダヤ人だったこともあり、研究者によればユダヤ差別との関連も見い出されるという。 |