月刊労働組合(平成18年6月号)

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アイフル問題と労働組合の役割

長谷川 敦(アコムユニオン執行委員長)

問題なグレーゾーン金利

 金融庁は4月14日、消費者金融大手のアイフルに対し、貸金業規制法違反が多発したとして業務停止命令を出した。 新聞やテレビで報道されているので詳細については割愛させて頂く。 この問題は、金融庁の有識者懇談会「貸金業制度等に関する懇談会」にも影響し、 グレーゾーン(灰色)金利撤廃や貸金業者への規制を強化する方向で一致した。 灰色金利とは、利息制限法の上限金利(年15〜20%)と出資法の上限金利(年29.2%)の間にあたる金利のことだ。 上限金利を超える融資について、出資法が刑事罰を科しているのに対し、利息制限法は原則無効だが罰則規定を設けていない。 現在、消費者金融の多くが灰色金利で融資している。 最近では利息制限法の上限を超える金利の支払いを制限する最高裁等での判例が相次いでいるほか、超過利息の返還請求訴訟が増加している。 このことは、灰色金利を適用しているクレジットカード業界等にも影響している。 金利引下げはリスクも伴う。 2000年の出資法改正による上限金利の引下げ(年40.004%→29.2%)以降、闇金問題が多発し、振り込め詐欺に代表されるように社会問題化している。 違法行為に対しては、行政による処分、罰則の強化が必要と考える。 金融業界に従事する私たちとしては、一方的な金利引下げや規制強化には賛成しかねる。 しかし、灰色金利が多くの問題の原因であることも事実だ。また、多重債務や過剰貸付のような問題がある以上、ある程度規制は必要である。 灰色金利が撤廃されることで超過利息の返還請求といったリスクがなくなり、規制強化により問題の改善が図れるならば、 業界としても良いことであると考える。法改正により業績低下が予測されるが、これまでの業界の体質から脱却し、 今後も発展できる強い企業を目指していくべきであろう。

厳しいノルマと企業不祥事

 アイフル報道は多くのメディアで取り上げられ消費者金融業界のイメージダウンにつながった。 平成17年の消費者金融市場における「消費者ローン」の融資残高は約24兆円となっている。 業界の果たす役割と社会的責任は重く、信頼回復は急務であると考える。   アコムの従業員からは、「解約が増えた」「苦情が増えた」「業務を行うことに不安がある」「仕事に自信を失った」といった声があった。 また、報道に便乗した無理難題や嫌がらせもあったとも聞いている。 問題が発生する以前の3月28日に、大手消費者金融7社は、「消費者金融市場をより一層健全化するための自主的取り組みについて」を発表した。 アコムでも全従業員に対し通達されたが十分には理解されていない。自主規制はよいことだ。 しかし、それを実行するためには、従業員への指導や教育、フォロー体制が必要ではないだろうか? 不祥事は、どの企業でも発生する可能性はある。各企業では、問題発生防止のための取り組みをしていると思う。 アコムでは、平成10年に「アコムビジネス倫理綱領」を制定しコンプライアンスの定着化に取り組んでいる。全従業員に対し、 ビジネス倫理研修を実施、「アコムビジネス倫理綱領」をまとめた小冊子を配布、 カードタイプの「ビジネス倫理自己チェック」の携帯を義務付けている。 コンタクトセンターでは、電話応対内容のモニタリングを実施し、コンプライアンスの徹底と応対品質向上を図っている。 そのような取り組みをしていたとしても、利益追求にとらわれ、利益と倫理のバランスが崩れてしまう場合もある。 例えば、収益確保や目標達成のため厳しいノルマや強制的な指示命令が従業員に与えられることにより問題が発生すると考えられる。 目標達成を根拠にコンプライアンスを軽視した営業行為が常態化し、現場の状況が経営側に伝わらないとしたらどうであろう?

重要な労働組合の存在

 企業倫理の確立や健全性を確保するためには、外部からのチェックや経営側だけの取り組みでは足りない。 従業員による経営チェックも必要である。従業員は経営者が知らない現場の実態を知っていることが多い。 従業員からの情報を活かし、内部からのチェックを機能させるためにも労働組合の存在は重要だ。 労働組合と経営側が同じベクトルで緊張感のある労使関係を築くことができれば、事業展開における経営の効率性が上がり、 内部管理体制が強化され健全性も向上する。 アコムユニオンは、安心して働き続けることのできる職場をつくることを目的に、お客さまへのサービス向上と企業倫理の確立、 健全な会社の発展のために組合活動を行っている。団体交渉では、規定やその運用について、また職場における問題について、 経営側と協議し問題の解決にあたっている。今後も労使間での緊張感を保ちつつ、同じ目標に向かって、 健全な会社の発展に助力していく所存である。 そして、業界の信頼回復と健全な発展に寄与し、そこで働く人たちが自信と誇りを持てる業界にしていきたい。