目覚まし!

  那奈から解放された太助は、部屋に戻るとすぐに着替え始めた。すると、何処からともなく目覚し時計の音が聞こえてきた。電子音ではなく、鐘を叩いて知らせる、うるさいタイプの目覚まし時計の音だった。
「紀柳の目覚ましかな?」
 やがて、別の目覚まし時計の音も響き始めた。二つの目覚ましが奏でる音は、煩わしさも伴い、これで起きない人がいるのかと思える音だった。
 登校の支度を終えた太助が、階下に降りようとしても、紀柳の部屋から目覚まし時計の音が止まることはなかった。この音で起きないのかと思いつつ、紀柳の部屋の前に立つと、太助はドアをノックした。
「紀柳〜!起きないのか・・・・・」
 ドアを強く叩き直しても、中からの返事は目覚ましの音だけだった。太助が紀柳の部屋の前で逡巡していると、「あっさご飯!あ〜さご飯!」などと、妖しげな歌を歌いつつ、ルーアンが通りがかった。
「たー様、無駄よ。あの子がそう簡単に起きるわけないわよ。あの子、朝弱いし、この寒さだものねぇ」
 言いたいことを言い終えると、再び妖しげな歌の続きを口ずさみながら、ルーアンは階下に降りていった。すでに頭の中は、朝食のことで一杯らしい。太助も階段を下りようとしたが、朝食はみんなで食べた方が楽しいし、目覚ましをかけると言うことは、起きる意志があるのだろうと思った。太助は、ドアに手をかけると、
「紀柳!ごめん!入るよ!」
 中に入った太助は、ベッドで丸くなる紀柳を見つけ、そして部屋が春先のように暖かいことに気が付いた。紀柳の寒さ対策のためか、ファンヒーターが唸りを上げている。いくら紀柳が寒がりだとは言え、一晩中点けっぱなしと言うのも考えにくいから、おはようタイマーでも使っているのだろう。
「・・・・・なっ!」
 太助は部屋を見回すと驚きの声をあげていた。寝ている紀柳に向かって、沢山の弓矢が狙いを定めていた。古今東西の洋弓、和弓が弦を引き絞られ、矢をつがえている。矢の先は鈍い光を放ち、本物であることを主張していた。引き絞られた弦は留め金に掛けられていた。更に留め金から紐が伸びていて、一ヶ所にまとめられると、矢が飛び出すのを押さえていた。その脇には、切れ味の良さそうな斧をかついだ、熊の人形が置かれていた。そして、その熊は動き始めている。
「ちょ、ちょっと待て・・・・・紀柳!」
 太助は、紀柳を起こそうとしたが、熊が斧を振り下ろす方が早く、束ねられていた紐は切断された。拘束から解き放たれた矢は、喜びを現すかのように、狂喜の声のような風切り音を残し、ベットに鋭く突き刺さった。ベッドの上はハリネズミの様になってしまっていたが、そこに紀柳の姿はなかった。布団と共に跳ね上がった紀柳は、空中で躰を捻ると、突然、太助に向かって鋭い蹴りを繰り出した。太助も、日頃の試練のおかげか、頭を抱え込みながらも何とか蹴りをかわしている。鋭い音が、太助の頭上を通過して行った。そして、紀柳は音もなく静かに降り立つと、眠そうな顔つきで、ボーっと突っ立っていた。まだ、夢の中を半分、彷徨っているらしい。やがて、身を震わせると、背中を丸めて呟いた。
「・・・・・寒い」
 紀柳は寝ぼけ眼のまま、開いているドアを眺めた。そして、ノロノロという表現がピッタシの動作でドアを閉めると、部屋の暖かさを確認するかのように、吐息をついた。
「ほぅ・・・・・昨夜、寝る前にきちんとドアを閉めたはずだが?」
 紀柳は眠さの為か、それとも考え込んでいるのか、どちらとも取れない姿で立っている。そして、太助は驚きの連続で、声を上げる事もなく呆然としていた。
「・・・食堂に行かないと・・・・・しかし、道程を考えると・・・・・厳しい試練だな・・・・・・」
 紀柳は、緩慢な動作でパジャマのボタンをはずし始めると、着替える為にベッドの方に移動していった。しかし、床に座り込んでいる太助には気づく素振りもなかった。やがて、ベッドを目にすると、まるで魅了されたかのように着替えの手を止めた。紀柳は、トロンとした目つきで、ベッドを見つめていた。
「あぁぁ・・・試練に誘惑はつきものと・・・言う・・・が・・・・・・」
 脱ぎ掛けたパジャマもそのままに、紀柳はしなだれかかる様にベッドに倒れ込んだ。床に両膝を着いて、上半身をベッドに預けた格好で、紀柳は静かな寝息を立て始めた。
 部屋に鳴り響いていた目覚ましのの音はいつの間にか消えていた。静かになった部屋には、太助が唖然と座り込んでいるだけだった。
 太助は頭を振ると、気を取り直して立ち上がった。そして、紀柳を起こそうと近づくと、太助の顔は真っ赤になっていた。紀柳は、脱ぎかけたパジャマの上着ははだけ、ズボンも途中で引っかけたまま眠り込んでいた。この部屋の室温なら、風邪を引くと言うこともないだろうが・・・。赤い顔を背けながら、太助は紀柳の肩を揺らした。
「紀柳、紀柳・・・・・起きなくていいのか?」
「・・・ん・・・主殿・・・・・後・・・少し・・・・・」
 紀柳は、自分の腕を胸元に引き寄せると、上半身を丸めて再び微睡みの中に沈み込んでいった。
「紀柳・・・・・」
 太助は、紀柳の起きる気配のない事に、わざとらしい溜め息をつきながらも、ベッドに寄りかかる紀柳を見つめていた。意識してはいないのだろうが、上半身を丸める事によって、お尻が太助に向かって突き出されているような格好になっている。そして、自分の鼓動が早鐘のように打っている事に、太助は今更ながら気が付いた。そして、紀柳の寝姿に太助の下半身は脈打ち、自己主張をはじめていた。そして、興奮を抑えようと、一呼吸おいてから、太助は紀柳の耳元に囁いた。
「紀柳・・・紀柳、起きないと大変なことになっちゃうよ・・・・・」
 太助の囁きに、紀柳は赤子がむずがるように呻くと更に体を丸めた。太助に向かって、余計にお尻が突き出されることも知らずに。
 起きそうにないことを確認すると、太助は紀柳のお尻の目の前に座り込んだ。そして、脱ぎかけのパジャマに手を伸ばすと、ゆっくりとズボンを下ろしていく。目の前に、白いショーツに包み込まれた、紀柳の魅力溢れるお尻が現れてきた。指で押せば、柔らかく押し返してきそうな弾力に満ち溢れていそうなお尻が、太助のすぐ目の前にあった。そして紀柳自身を包み込んでいる場所は、柔らかそうな盛り上がりを見せ、ショーツに多少のシワを寄せていた。太助は、ゆっくりと指を伸ばすと、そっとショーツの上から紀柳のお尻に触れ始めた。予想通りの弾力の良さに、太助は感動を覚え、紀柳が起きないように気を遣いながら、お尻に指を這わせ続けた。
 さわり続けていると、太助は紀柳の秘裂を包み込んだ辺りに、微かな染みが描かれているのに気が付いた。指で触れてみると、確かな湿り気が感じられた。太助は、染みの現れた辺りで、更に指を動かしていく。すると、太助の指の動きに合わせ、見る間に染みが広がり始めた。太助が夢中になって指を動かすと、湿った音が響き始め、溢れ出る液体は指も濡らし始めた。
「ん・・・くぅぅ・・・・・」
 漏れ出たような声に、太助が顔を上げると布団で口を押さえた紀柳と目があった。
「紀柳・・・・・」
 太助は調子に乗りすぎたことに気が付いた。夢中になって指を動かしているうちに、紀柳を起こしてしまったらしい。普段なら、慌てふためく所なのに、落ち着いている自分に太助は気づいていた。紀柳も太助の目の前から逃げることもなく、そのままの姿勢で待っていた。紀柳の顔を見ると、頬は赤く上気し、瞳も潤んで太助を見つめていた。そして、その事が自分の落ち着いている原因だと、太助は思った。
「紀柳・・・・・どうして欲しい?」
 太助は、自分でも意地の悪い質問だと思ったが、自然と口から流れ出ていた。
 紀柳は、太助の言葉に顔を更に赤くすると、ベッドに顔を伏せてしまった。しばらく身動ぎもせずにいた紀柳だったが、やがて、ショーツに手を伸ばすとゆっくりと下ろし始めた。いままで、ショーツに包まれていたお尻が、太助の目の前で生身の姿を現していく。ショーツは丸まりながら下りていき、紀柳の秘裂も露わになっていく。秘裂とショーツの内側に滑りのある液体の橋が架かっていた。下りていくショーツと秘裂の間が広がると、橋は細くなり、やがて消えていった。すっかり現れた紀柳の下半身に、太助は更なる興奮を覚えていた。
 太助は、ゴクッと喉を鳴らすと、紀柳の秘裂に向かって指を伸ばした。紀柳の柔らかい襞を少し刺激するだけで、蜜がこぼれ落ちるように溢れ出てきた。太助の顔前で下着を脱ぐという行為が、紀柳の興奮を高ぶらせていたらしい。太助はショーツの上からの時より、激しく紀柳の秘壺の入り口をなぶり始めていた。
「んぁ・・・はぁ・・・あっ・・・・・くぅあぁぁ・・・・・」
 太助は、紀柳の声を聞きながら、指を動かし続けた。
 ふと、時計が目にはいると、あまり余裕が残されていないことに、太助は気が付いた。膝立ちで躙り寄ると、太助はズボンを下ろし、自分のモノに手を添えると、紀柳の蜜壺の入り口にあてがった。
「はぁ、はぁ・・・あ、主殿・・・・・まだ・・・もう少し・・・んあっ!」
 太助は紀柳の言葉を止めるかのように、勢いよく蜜壷の中に潜り込ませた。蜜に溢れた紀柳の秘壺は、抵抗無く太助の男根を飲み込んでいく。太助は奥まで突き進めると、紀柳の肉壺の感触を堪能し、なるべく長く味わいたいかの様に、ゆっくりと引き戻していった。
「はぁあぁぁ・・・あぁ・・・・・んくっ!」
 肉壺の入り口、ギリギリまで引き戻すと、再び勢いよく潜り込ませていく。強弱をはっきりつけた動きに翻弄され、紀柳の官能はたちまち昇り始めた。紀柳の中で、キュキュッと締め付けられると、太助はあまりの気持ちよさに打ち震えていた。
「んぅ・・・あぁぁん・・・・・んぅぅあぁぁ・・・・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・き、紀柳・・・気持ち良い・・・よ・・・・・」
 太助は紀柳の腰をつかみ直すと、ペースを上げて秘肉の奥に向かって腰を送り込んでいく。紀柳も、太助のモノが与える快楽に翻弄され、飲み込まれていった。太助の男根が潜り込むたび、ジュ、グチュッと卑猥な音が鳴り響いた。太助のモノは紀柳の中を往復するたびに、柔襞に力強く扱きあげられていった。
「き、紀柳・・・俺・・・・・もう・・・」
「あぁぁ・・・あ、主・・・殿・・・このまま最後は・・・い・・・や・・・・・」
 紀柳は、一度も太助と向き合っていないこと思いだしていた。しかし、太助の動きは止まらず、このまま最後まで達してしまうのかと、紀柳は頭の隅で寂しさを感じていた。その時、紀柳の体の中から、太助のモノの感触が消えた。
「はぁ、はぁ・・・紀柳・・・・・ごめん・・・・・」
「主殿・・・・・」
 太助は、紀柳の体を仰向けにすると、再び紀柳の中に沈み込んでいった。正面に現れた太助を見たとたん、紀柳の中にあった先程の寂しさは一瞬で消え、たちまち歓喜に包まれていった。紀柳は太助の背中に腕を回すと、強く抱きついている。太助も紀柳の唇を奪い、紀柳の舌を探り当てると、強く絡ませていった。
「紀柳・・・このまま・・・・・」
「はぁ、はぁ・・・主殿・・・・・」
 太助は、耐えに耐えていたモノを解き放つべく、最後のスパートに入った。後から貫いている時とペースは一緒だが、紀柳の中で感じる快楽と一緒に、愛おしさも太助の中に湧き上がってきた。
「あ、あ、あぁ・・・んぁあぁぁ・・・主殿・・・・・」
 紀柳も先程とは違い、素直に快楽の波に乗り始めた。そして、いつの間にか太助の腰に足を巻き付けると、更に奥まで太助を導くかのように抱き付いていた。
「き、紀柳!」
「あぁ・・・主・・・殿!」
 太助は紀柳をきつく抱きしめ、奥深くまで辿り着くと、熱い樹液を解放した。紀柳も、太助に強く抱きつきながら、体の奥に現れた熱い固まりに強く反応した。
「あぁぁぁぁ・・・・・」
 太助の放ったモノが、体の奥に現れたとたん、紀柳の頭の中は真っ白になり、紀柳の意識は飲み込まれていった。
「はぁ、はぁ・・・紀柳・・・・・」
 太助は、荒い呼吸を繰り返しながら、目の焦点の合っていない紀柳に呼びかけた。やがて、紀柳の瞳が、太助を捉えた。
「・・・・・あるじ・・・殿」
 ボッと言う音が聞こえそうな勢いで、紀柳は顔を赤らめた。そして、自分の中にまだ太助が居ることを感じると、そっと太助の胸に顔を埋めた。

 キッチンでは、那奈とルーアンが太助達を待たずに食事を始めていた。シャオは、まだ下りてこない太助と紀柳を心配するかのように、天井を見上げていた。ルーアンは、朝からよく入るなと言うぐらい、一心不乱に朝食をかき込んでいた。那奈は、食事をせずに太助達を待っているシャオを見ると、妖しげな笑いを浮かべていた。
「太助様が紀柳さんを起こしに行くと、なかなか下りてこない事が、たまにあるのは何故なんでしょう・・・・・」
「ひひひひ、太助も朝から頑張ってるんじゃないかなぁ」
「はぁ・・・紀柳さんは、お寝坊さんです・・・・・」
 シャオは、那奈の言った言葉を深く考えずに答え、再び天井を見上げていた。