たった一つの冴えた犯り方


  十


 九人もの男の去勢を間近に見た私は、その光景がずっと頭の中にこびりついてはなれま
せんでした。
 まだ夏休みが終わらないから、その後の溝口君には会っていません。
 あの事件から一週間がたっていましたが、傷は治ったのでしょうか。
 男性ホルモンの分泌が極端になくなってしまったら、いったいどんな気持ちなんでしょ
うか。
 早く会って聞いてみたいと思っていました。
 あれ以来由美さんたちとも顔を合わせていない私は、思い切って例の廃材置き場に向か
いました。
 以前私が八人の男たちに輪姦された時、シャワーを貸してくれたおじさんのところです。
 たいして大きな樹があるわけでもないのに、どこで鳴いているのか周囲には蝉の鳴き声
が充満していました。
 小さな川を渡ってススキの群生を横目で見ながら歩いていきました。
 午後の太陽は今にも川の水を干上がらせるかのような強さで私の上に降り注いでいまし
た。
 廃材置き場の空き地には陽炎がたっていました。
 奥の管理棟に向かいます。
 管理棟は窓にカーテンがかかっていて中の様子がわかりませんでした。
 この暑いのに窓も締め切ってあるし、留守なのかもしれません。
 ノックするのをためらっていると、後ろで声がしました。
「誰だ。なんか用か?」
 振り向くと、スーパーの袋を持ったおじさんが麦藁帽子の影の中でこちらを睨んでいま
した。
「ああ、こないだの坊主か。また来るだろうとは思っていたが、遅かったな。まあ上がれ
よ」
 私の顔を確認すると、急に態度が軟化して険しい顔が笑顔に変わりました。
 おじさんに続いて管理棟に入ると、むっとする熱気が周囲に満ちていました。
 おじさんはすぐに窓を開け放ち空気を入れ替えています。
 その後、買い物袋の中の即席めんだとか肉や野菜類を棚や冷蔵庫にしまいこみ、私に三
百五十CCの冷えた缶ビールを放ってよこしました。
 ビールなんか飲んだことのない私が戸惑っていると、
「あいにくジュースなんか置いてないんだ。まあビールは水みたいなもんだから遠慮なく
飲めや」
 自分でも一缶空けてのど仏を派手に上下させました。
 ここにきた目的が目的だから、私もつまらない倫理観は捨ててニップルを引きあけまし
た。
 指についたビールの泡を振り払いながら、左手に持った三百五十CCの缶を口元に持っ
ていきます。
 よく冷えている所為か苦さはあまり感じませんでした。
 おいしいとは思えなかったけど、渇いたのどに流れ落ちるビールは、その感触だけで気
に入ってしまいました。
「突っ立てないでそこに座れよ」
 古びたソファにおじさんが私を座らせました。
 言われた通りにすると、横に座ったおじさんが私のジーンズのベルトに手をかけてきま
した。
 私は抵抗もせずにビールを飲むことだけしていました。
 すぐにジーンズが脱がされて、下着も下げられます。
 脱がせやすいように私は腰を浮かせました。
 私のすっかり固くなったペニスが現れました。
 暑い部屋の中で、下半身裸になるのは快適でした。
 汗に湿ったジーンズが私の心を縛っていた縄のように感じられました。
 三百五十CCを飲み干して、缶を床に転がしていると、おじさんは私の下半身にすがり
付いて、固くなった先端を口に含んできました。
 フェラチオされるのは二回めでしたが、一回目の溝口君のときと比べてはるかにテクニ
ックが上なのがわかりました。
 感じる部分を執拗に舌で愛撫され、吸われて、私の腰が自動的に浮き上がっていきます。
 でも、伸ばした膝を曲げられて、股を大きく広げられると、射精感が抑えられるようで
なかなかいけなくなってしまいました。

「この格好は男がいきにくい格好なんだよ。男はいくときは膝を伸ばして突っ張るように
していくもんだからな」
 私の股間から顔を上げたおじさんは、私がもっとして欲しいのをわかっていながらティー
シャツをめくりあげて、私の胸をなめてきました。
 乳首を吸われるのは初めてだったけど、すっかり興奮状態にあった私はそこもすでに性
感帯になっているようでした。
 同時にお尻の穴におじさんのごつい指がずるずる入ってきます。
 私のペニスから出た粘液をすくい取ってお尻に塗りこめた後だったから、ささくれ立っ
たおじさんの太い指にもさほど痛みは感じませんでした。
 でも浣腸もしていないのにそんなことをされては、やっぱり不潔感が先に立ってしまい
ます。
 しかし、おじさんの指が私のお尻の中でくいっと曲がり、前立腺を刺激し始めると、そ
んな心理的な抵抗もだんだんどうでもよくなってきました。
「女みたいに犯されて、感じてしまったようだな。もう普通の男には戻れないぜ。とこと
ん調教してやるからな。再びここにやってきたからにはその覚悟もできているんだろう」
「はい。僕は女みたいに無理やりやられたいんです」
 その時の私はお酒の勢いもあってすごく素直になれていたんだと思います。
 
 その後、私は両手を膝のところに縛られてうつぶせにされました。
 この格好は自然に膝が曲がり、お尻を突き出した格好になります。
 首を動かすのもきつい状態で、何とかおじさんを見ると、中ほどに球のある橙色のホー
スと洗面器を持って何か用意しているところでした。
 浣腸だとは思いましたが、そのやり方ははじめてだったので注意深く見つめていると、
なみなみと水の入った洗面器に、おじさんは家庭用洗剤をたらしていました。
 またあのきつい浣腸だろうか。
 おなかが痛くてたまらなくて、何度もトイレにいってするけどちっとも便意は治まらな
い。
 先日のいやな思い出がよみがえりました。
 でも私は黙っておじさんのすることを見守っていました。
「さてと。洗面器一杯分入れてやるからな。洗剤は薄まってるからあまり心配は要らない
ぜ。原液入れられるとたまらないんだがな、これくらい薄めれば大丈夫だ」
 私はそれほど不安な表情だったのでしょうか、おじさんは励ますようにそう言いました。
 すぐに私の突き出したお尻の穴に管の感触がありました。おじさんの指でマッサージさ
れていたからそれは驚くほどスムーズにおくまで入ってきました。
 突き上げられる痛みを感じた私がひとつうめくと、少し管がひかれて楽になりました。
 オレンジの球がおじさんに握り締められるたびに、私のお尻に生ぬるい水が注入されて
きました。
 最初はお尻の入り口のあたりにたまり、その後、するすると大腸を流れてくるのがわか
りました。
 外ではせみの声がうるさく響いています。
 せみの鳴く雑音と熱気のこもった管理室の中で、私は洗面器一杯分の薄めた洗剤液を浣
腸されたのでした。


 十一


 排泄を済ませた後は、しばらくシリコンのディルドゥーを入れられたり、バイブレーター
を入れられたりで、自分の想像通りの方法で調教されたので、私は漏れ出るあえぎ声を抑
えることもできませんでした。
 おじさんも服を脱いで、突き出た腹の下の勃起を私の口に押し付けてきました。
 おじさんは肉体労働者だからか、太ってはいても色黒で、筋肉質ではないけどたくまし
い印象でした。
 そのおじさんの丸い亀頭を私は夢中で吸いました。
 大きく口を開かないととても咥えることができないくらいに太い棒です。
 アナルを電動バイブの刺激で蹂躙されながらするフェラチオは、複数の男に犯されたあ
の時の事をまざまざと思い出させてくれて、私の興奮は今までにないくらいに高まりまし
た。
 去勢された彼らの映像を思い浮かべながら、自分に置き換えて、その恐怖を味わってみ
たいと、本気で思っていました。
「どれ、尻をこっちに向けろ」
 おじさんが私の口から棒を引き抜いて言いましたが、私は身動きしにくいように縛られ
ているのです。
「速くこっちに向けるんだ」
 おじさんの容赦ない平手打ちが私の右のお尻にあたり大きな音を立てました。
 動きにくい体を必死に動かして、私はお尻をやっとおじさんのほうに向けることができ
ました。
「こんなでかいバイブを簡単に根元まで咥えこめるようになったんだな。これなら外人と
もできそうだ」
 深々と入っていたバイブがおじさんの手で引き抜かれました。
 外人と聞いて私の胸はまたきゅんとなりました。
 インターネットで見た黒人のドデカイあれが目に浮かんできたんです。
 今入れられているバイブレーターも女性用の大き目のだけれど、黒人のそれは比較にな
らないくらいに太くて長いものだったから。
 いずれは私も黒人に犯されたりすることがあるのかしら。
 そのときはどんな格好でやられるんだろう。そう考えると胸が苦しいくらいに波打って
しまいました。
 じゃ入れるぞとおじさんが言って、私のお尻の穴はふたたび広げられ、さっきの無機質
なおもちゃとはまた違った、生身のペニスがずるずると私の中に入ってきました。
 さんざん快感を感じていた私ですが、生身のそれはさらに深い快感の淵に私をいざない
ます。
 いったん根元まで入ってきたそれが、ゆっくり抜けていき、出入りを始めます。
 う、うん。
 声が出てしまう。
 やっぱり本物とそうでないのはまるっきり感触が違います。
 ズンズンとお腹の奥まで響くおじさんのものが私を狂わせていくようでした。
「もっと尻を閉めろ。力をいれてチンポを食いちぎってみろ」
 おじさんが私のお尻をたたいて言いました。
 お尻に力を入れると、おじさんの物が形さえはっきりするように感じます。
 お尻から入れられた棒に体の奥まで蹂躙されるのは、苦痛と快感をごちゃ混ぜにミキサー
にかけたジュースを飲むようでした。
 おじさんの動きが早くなって、終わりが近いことがわかりました。
 もっとずっと犯して欲しいと思っても、いずれは必ず終わりが来るんです。
 たくさん出してください。
 私はそう叫びました。
「おう、いくぞ、尻に飲ませてやるから一滴もこぼさずのみこめよ」
 おじさんはうめき声を上げて腰を力いっぱい突き出してきました。
 アヌスで感じている棒がびくんびくんとうねるのがわかりました。
 そして熱い精液が私の中に発射されました。
 この瞬間が一番好きです。セックスの欲望を私の中に叩き込んでくる。
 性欲をいっきに開放してしまう。
 性は生なりって誰かの言葉で聞いたことがあるけど、私の中に生命を吹き込んでくれて
いるような気がするんです。
 自分も男だからわかるけど、いった後って一気にさめてしまうんですよね。
 それまでが興奮の坩堝だっただけに、なんだかすごく照れくさくなったりして。
 おじさんはしばらくいったままの状態で私のお尻をさすっていましたが、ひとつため息
を吐いてペニスを抜きました。
 心棒が壊れたようなゆるいペニスが、私のお尻からぬるりと出て行きました。
 私は必死で締め付けて一滴も漏らさないようにしました。
 漏らさないだけじゃなく、おじさんの物を絞り上げてまだ棒の中に残っている液も残ら
ずいただくようにしました。
「まだ物足りないようだな」
 おじさんは再び私のお尻に電動バイブを押し込んできました。
 無機質なそれは懐かしい感触で私の中に入ってきました。
「ちょっとそれで我慢していな。もっと楽しませてやるから」
 おじさんはそういって立ち上がり服を着始めました。
「どういうことですか?」
 聞いても笑うだけで答えてくれませんでした。
 誰か仲間を呼びにいくのかしら。
 想像する私を残して、おじさんは小屋の外に出て行ったんです。
 きっと仲間を連れて戻ってきて、今度は複数の男にお尻を犯されるんだ、そんなことを
考えてお尻のバイブを締め付けていました。
 ひょっとしたら外人もいるかもしれない。
 黒人だったらどうしよう。
 あんなにでっかいのがいったい入るかしら。
 妄想の時間が十分かそこら続いたように思います。
 私に見えない後ろの小屋の扉が、音をたてて開きました。
 足音に聞き耳を立てていましたが、複数の男の足音には聞こえませんでした。
 でも、おじさん以外に誰か……が入ってくる気配が感じられました。
 近づいてくる。
「待たせたな。今からこいつらにおまえを犯してもらうから。嬉しいだろ」
 おじさんが私の見える位置に来て言いました。
 そのおじさんの手には紐が握られ、その先には二匹の土佐犬がいました。