サバイバルゲーム 中学時代 

 

 

 

 1

 

 

「ふーん、中学生になったらピカも大人になってきたって感じだね」

 しゃがんだぷっくの好奇心に満ちた声が聞こえた。

 入学式もすんで、僕らは中学生になったばかりだった。

 いろいろと忙しくて、ここ二ヶ月ほどぷっくとはエッチなしだった。

 

 日曜日の午後、ぷっくの家は両親が買い物に出かけて、僕等二人きりだ。

 ズボンとパンツを膝まで下げた僕は、恥ずかしい所を人目に晒している事で、まだ四月も半ばというのに暖房を入れていない部屋でも寒さは感じなかった。

「目立つ?」

 最近生えてきた陰毛のことだ。

「うっすらとだけど、離れて見てもわかるよ。少し大人のちんちんになってきたみたい」

 僕としては、この変化はあまり歓迎したくないものだった。

 男らしい男って何だか嫌だ。

 中性的な感じでいたいのに、徐々にすね下やら腋毛やらの体毛が濃くなっていくみたいで、なんだかうっとうしい。

「ぴかってさ、女の子見たいになりたいんじゃないよね」

 言いながら見上げるぷっくと目があった。

 ぷっくの指が僕の股間の物、既にいっぱいまで膨張してるそれを握って言う。

「女の子って言うんじゃなくて、今よりあんまり変わりたくないんだよな。そう言うのって変かな」

 下半身が見えるようにシャツを上げていた手を下ろして、ぷっくのポニーテールの頭を引き寄せた。

 ぷっくは、その僕の手を避けるときつく言った。

「ダメよ。両手を下ろしちゃ。手は上」

 僕のタマタマががずきんとくる痛みを伝えてきた。

 ぷっくに握られたのだ。

 腰を引いて逃げたいけど、さらにきつく握られるのがわかっているから、僕は我慢して立っていた。

「じゃあ、ベッドに手をついてお尻を出して」

 命令どおりに、ピンクの花柄シーツのベッドに両手をつき、そして上体を下げた。

 お尻を後ろに突き出す格好だ。

 お尻を出して相手に向ける格好は、完全なる敗北であり服従の姿勢だ。

 こちらからはまったく攻撃できなくて、受身もできない。

 すべて、お任せしますからしたいようにしてくださいというポーズ。犬が腹を見せて寝転んだのと同じようなものだ。

 

 敗北は屈辱を感じるのが当然なんだろうけど、相手が好きな人だと少し違ってくる。

 もうどうにでもしてって思うくらいにあなたが好きよって言う事かな。

 

 ぷっくのベッドの甘い匂いを数回吸った所で、お尻の中心にぬるりとしたものが当たる感触があった。

 大きく吸い込んだ息をゆっくりと吐き出しながら、僕はお尻の力を抜いていく。

 それに合わせるようにして、弾力のある丸い先端が僕のお尻をぐいぐい広げ始める。

 ここでお尻の力を抜かないでいると、引き裂くような強烈な痛みに襲われるのだ。

 僕はもうすでに何度もある経験から、痛みを逃れる方法を習得していた。

 僕のタマタマは、まだぷっくの左手に握られたまま。

 玉のない女には、そこの痛みの実感が無いから、やさしく握っているつもりでも力加減でずきんとくることがある。

 その痛みが次にいつ来るのかわからないのが怖かった。

 

 ぷっくはと言えば、去年の廃屋事件の時から少し性格が変わったみたいだった。

 町外れの山麓にある廃屋で、二人で楽しんでいる所に乱入してきた高校生にぷっくは処女を奪われたのだ。

 それも僕の見てる前で。

 目の前で犯されるぷっくを守れなかった僕自身も、しばらく自己嫌悪になってしまった

けど、ぷっくはそのショックから立ち直ると同時に自らのおとなしい殻を破るためにか、それまで以上にエッチに積極的になった。

 僕はと言えば、守ってやれなかった弱みがあるから、ぷっくの言うことは聞かざるを得ないと思っている。

 ぷっくになら責められるのも悪くないとも思っているくらいだ。

 

 それからだ。

 二人のエッチな行為が、普通のセックスから、よりSMチックになっていったのは。

 ぷっくの考えは僕にはよくわからなかった。

 男嫌いになったのか、それともサディスティックな事に興味を持ってしまったのか。

 ずるずるっとお尻の穴に異物が入ってくる感触がする。

 ネットで買ったディルドゥはこれが三本目だった。

 最初は小さいのから始めて、今はほぼ普通の男のサイズ。

 これが楽に入るようになれば、大人の男も受け入れられるだろうということだ。

 

 もちろん僕にはそんなつもりはない。

 ぷっくだから許してるのであって、他の女にも、ましてや男となんてエッチする気にもならない。

「ずいぶん慣れてきたよね、ここ。少しは感じるようになった?」

 根元まで入ったのが、感触でわかった。

 すっぽり入ってしまわないようにか、根元には睾丸の形の突起があるのだ。

 それが僕のお尻に接触している。

「うん。痛みは感じなくなった。でも、だからといって気持ちいいかどうかは、わかんないよ。はっきり言えばあんまり気持ちよくない」

「そうか。男の人は前立腺があるからここが感じるって聞いたけど、人によるのかな。でも、慣れるにしたがって感じるようになるって言うからもう少しがんばろうね」

 でも不思議だ。

 これだけだと、さほど気持ちよくないのだけど、同時に前を刺激されると、ペニスだけの刺激のときと比べてすごく気持ちよくなってしまうのだ。

 だから、こうしてお尻を犯されるのは嫌いじゃなかった。

 

 ぷっくの手がディルドゥをつかみ、ゆっくり動き始める。

 すっと抜かれたかと思うと、ずずっと入ってくる。

 ぷっくの反対の手は睾丸を握ってるから、ペニスはまったく刺激されていない。

 だから今の状態では、僕は感じると言うほどではなかった。

 しかし、この格好の恥ずかしさが興奮を高めているのは事実だ。

 胸はさっきからどきどきしているし、口が渇いてしょうがない。

「これってさ。腰につけるのもあるんだよね」

 一瞬何を言ってるのかわからない。

「これ、ちんこ模型。ベルトがついててさ。腰に装着して使うの」

「ああ、そうだね。ネットにあったね」

「あれ、今度買ってみようか。あれをつけてしたら、本当にぴかを犯してるみたいだから」

「僕を……犯してみたいの?」

 言葉にするのには抵抗があった。

 でも思い切ってそう言うと、ぷっくはごく普通の話題みたいに答えた。

「うん。面白そうじゃない」

 逆らう気持ちはないけど、ちょっと嫌だった。

 今の状態なら、二人でエッチな遊びをしてるくらいに思えるけど、腰につけてだったらまさに犯されてるって感じだ。

 もしそれで快感を感じるようになったら、再び普通の男女関係に戻るのは不可能になるような気がする。

 普通に結婚したり、できなくなる気がする。

「ねえ、今度さ。ぷっくがお尻出してみてよ。これ洗ってくるから」

 僕はだめもとで言ってみた。

「だめだよ。まだぴか一回もいってないじゃない。私が脱ぐのは少なくともぴかが三回いってからって決めたじゃない」

 そんな事決めたかな。でも、僕が知らないなんていったら、忘れてるだけ、エッチの最中だったからね、とかなんとか言われるに決まってる。

 

 ぷっくの手が睾丸を離れて、すっかり硬くなってるペニスの方に来た。触り方もずいぶん上手になってる。

 直接亀頭に触ると痛いと言うのを理解してくれたみたいだ。

「牛の乳搾りみたい」

 言いながらぷっくの手が僕のものをこすり始める。

 お尻の感覚とあいまって、それは男にとって究極の快感なんじゃないかと思う。

 下半身が電気にでも打たれたように恥じらいもなく震えだす。

 木製のベッドがぎしぎしと音を立て始める。

「うう、いきそうだよ」

 僕が言うと、ぷっくは一度手を離してティッシュを二枚取り出す。

 それで、こりこりになった亀頭を包むようにして、再びこすり始める。

 そこから僕が行くまでは三十秒もかからなかった。

  自分でするときは気持ちいい所でペースをゆるめて、できるだけ快感を長引かせるけど、他人からされるときはそんな手加減ができない。だから一番気持ちのいい時間は一瞬で過ぎ去ってしまう。

 

「たっぷりでたね。どくんどくんどくんって三回くらい発射してたよ」

 ティッシュペーパーを開いて僕に見せながらぷっくが言った。

「その三回。僕のお尻の中で硬い物をずきっずきっずきって感じた」

「発射するとき、一緒にお尻も収縮するからなんだってね。男の人が入れてたらよくわかるんだって。締め付けが良くなるから」

 ぷっくは僕を誰か男に犯させるつもりなんだろうかと、ふと思った。

 そういえばぷっくが馬面に犯されてるのを僕は見ている。

 僕が誰か、男に犯されるのをぷっくが見ることで、おあいこって考えもあるかもしれない。

「私もなんだか感じてきたみたい。してもらおうかな」

 立ち上がったぷっくがピンクのチェックが入ったスカートをあげてパンツを下げた。

 今日のパンツは白地にイチゴ柄の、僕のお気に入りだった。

 チラッと見えたあそこは、僕の股間以上に陰毛の茂みが発達していた。

 ベッドに背を向けてしゃがむ僕の前にぷっくが立った。

 しかし僕のお尻にはまだディルドゥが入ったままだ。

 一度いってしまった事だし、これを抜きたいけど、それは許されないとわかっている。

「じゃあお尻を下につけて座って」

 いわれた通りに僕はディルドゥの刺さったお尻を床につける。

 床板の冷たさがじかに感じられる。

 半分抜けかかったものが、再びぐぐっとアナルの中に押し戻される。

 お尻の一番奥まで侵入したそれに、僕は串刺しにされた気分。

「ほら、なめなさい」

 ぷっくはスカートを持ち上げて僕の顔を自分の股間に導く。

 以前も似たようなことをしていたけど、僕らの関係は微妙に違ってる。

 前は二人で楽しんでいたけど、今はすることは変わらないのにぷっくが命令する役になってしまった。

 SMで言えば、ぷっくが女王様で、僕が奴隷と言うことか。

 いつまでこんなやり方をするつもりなのだろうか、ぷっくは。

 このまま女王様路線で行くつもりなのかな。

 つんとくるあそこの匂いが僕の鼻を襲う。

 今日はいつもより匂いがきつそうだ。

 陰毛が鼻をくすぐる。

 鼻で割れ目の上端にある突起をくすぐりながら、舌を出してすでにとろとろになっているそこをなめ始めた。

 独特の味もいつもより濃い。

 そして、感じ方も今日は激しいようだった。

 

 うん、そこ、気持ちいい。

 あ、あん。

 甘い声がだんだん大きくなってくる。

 ほんの二ヶ月会わなかっただけなのに、中学生になった所為かな。

 声の出し方が、嫌に色っぽくなってる。

 そういえば、この太ももの辺り、以前より明らかにムチムチしてきている。

 滑らかで弾力のある太ももは、触るとぴたっと手に張り付くようだ。

 みずみずしい肌だ。

 僕はぷっくの股間に舌を這わせながら、太ももからお尻を触りまくる。

 お尻の方も肉つきがずいぶんよくなってる。お尻に脂肪がついてずっしりした感じ。

 もちろん太ったわけじゃない。

 子供から大人に成りかけという感じだった。

「すごい。久しぶりだからかな。すごく気持ちいいの。あん。膝ががくがくしちゃう」

 ぷっくの腕に力が入って、僕の頭がぐっと押し付けられる。

 鼻が押さえられて息ができなくなる。

 しばらくは我慢して舐め続けていたけど、次第に苦しくなってきた。頭を振りほどこうにも、体勢がきつくてうまく避けられない。

 お尻に入ったままのディルドゥも僕の動きを妨げている。

 このままじゃ窒息死してしまう。

 瞬間的に突き上げる恐怖にパニックになりそうだ。

 でも、こんなときの必殺技がある。

 絶対効くと思って、僕は左手の人差し指に力を込めた。

「きゃん。痛いよ」

 ぷっくの手が離れて僕はやっと呼吸ができるようになった。

「私はぴかじゃないんだから。お尻は感じないのよ」

 ベッドにもたれて大きく息をしてる僕を立ったままのぷっくが腰をかがめて睨んだ。

「息が苦しかったんだよ。死ぬかと思った」

「大げさね。男の子でしょ。10分くらい息止めておけなきゃ。なんてね」

 ぷっくはにこっと笑って起き上がる僕に手を貸してくれた。

「じゃあ、コーヒーでも飲もうか」

「その前に、これ抜かないと」

 僕がぷっくにお尻を向けると、ぷっくは、あはは、串刺しぴかだと声を立てて笑った。

 

 

 2

 

 

 今年最初の災難は、中学一年のクラスでも岡田と一緒だったことだ。一学年で四クラスもあるのに、どうして一緒になるかな。

 ぷっくはというと、残念ながら同じクラスじゃなかった。隣のクラスだ。

 僕は1年2組。ぷっくは1組だった。

 岡田は、小学5年生のとき戦ったサバイバルゲームのときから、クラスを牛耳るボス的な存在になっていた。

 そして、6年生の一年間。

 弱みを握られた男子は岡田の指揮する女子軍の前にひれ伏し、差別的な待遇に甘んじなければならなかったのだ。

 廃屋の事件では驚いたことに味方してくれたけど、だからといって、その後の支配が甘くなると言うことはなかった。

 相変わらずサディスティックな快感を、クラスの男子をいじめることで感じているのだ。

 

「佐藤、クラブ何にしたの?」

 隣の席の岡田が聞いてきた。

 僕の横はいつもぷっくだったのに、中学に入ったとたんに、最高から最悪になってしまうんだな。ため息がひとつ出た。

「まだ決めてないよ。でも運動は苦手だからな。書道部にでもしようかって思ってる」

「なんなのそれ。別に書道部って言うのも悪くないけどさ。消去法でいくのはどうなんだろうね」

 そう言われると、確かにまじめに書道をしてる人に悪いかもしれない。

「あたしね、柔道部にしたよ。技いろいろ覚えるんだ。覚えたら試しに使ってやるからね」

 岡田が何部に入るかなんてどうでもいい。僕には興味ないことだったけど、またひとつ憂鬱の種が出来てしまった。

「そうだ。あんたの大好きな福山も柔道部にするって言ってたよ。まだ知らないだろ」

 一瞬、耳を疑った。

 あの清楚なぷっくが、うりゃーなんて叫ぶのは想像したくない。

「……冗談だろ」

「本当。さっき廊下で会って話したから。まあ、気持ちはわかるよね。彼氏が非力だったら、自分の身は自分で守らないといけないわけで……」

 不必要に語尾を濁す言い方にムカッと来た。

「余計なお世話だよ」

 僕は岡田を無視するようにして、カバンから国語の教科書を出した。

 

「池谷ってさ、ちょっとオカマみたいだよね」

 先生が黒板に書いてる隙に、岡田が僕に小声で言った。

 池谷文也というのは、僕たちとは別の小学校から入ってきた男子で、つい二週間前が初対面だった。

 色白で顎が細くて髪が長め。

 眼はパッチリしてるけど、少しつり眼気味。

 背格好も男子の中では小さい方で、僕よりも少しだけ背が低かった。ジャニーズ系って奴だけど、性格はいたって控えめで目立つことはほとんどしなかった。

 それでも、岡田なんかに目を付けられるくらいに目立ってしまうのは、外見が可愛いからだろう。

 岡田の標的が増えることは、どっちかっていえば、僕の安全のためにはいい事だ。

「その辺の女の子なんか眼じゃないくらい可愛いよね」

 僕は岡田の嫉妬心に火をつけてやるつもりでわざと言ってみた。

「ふーん。やっぱり男子でも同姓を可愛いって思うことあるんだね」

 意外そうに岡田が言う。

「別に、男に興味なんかないけどさ。客観的に言ったらそうなるかなって思う」

 いい訳じみた僕の言葉を鼻で笑うと、岡田は教科書に眼を落とした。

 

 

 昼休み、僕は池谷の傍に行って話しかけた。

「池谷ってさ、クラブ何にしたの?」

 牛乳を一口飲んだ彼が僕を見上げた。

 僕はすでに食べ終えた後だ。

 池谷は、女の子並みに食事時間も長めなのか、まだメロンパンを半分食べたところだ。

「演劇部に誘われてるんだ。たぶんそこに入ると思う」

「誘われてるって、誰に?」

「近所の幼馴染の先輩。今度三年なんだけど」

 池谷が演劇部というのは似合う気がする。

 ふと、彼が女装して女役をやるのを想像してみた。

 ……あまりに似合いすぎる。

 

「佐藤君は決めた?」

 池谷の前の席が空いてたから、僕はその椅子に後ろ向きで座った。

 池谷の顔を下から見上げてみる。

「まだ決めてないんだ。でも、運動系は苦手だしな。書道部や美術部は服が汚れそうだしなって思ってたところ」

「じゃあ、佐藤君も一緒に演劇部にしようよ、文化祭なんかで劇やるの、面白そうだよ」

 本気で僕を誘ってるのかな。

 すごく眼が活き活きしてるけど。

 社交辞令抜きで誘われるのは、悪い気分じゃない。特に可愛い子に誘われるのは。

「そうだな。演劇部なら、服も汚れないからいいかもしれないな」

 そういうわけで、放課後は二人で演劇部の部室に行くことになった。ぷっくは、岡田の話では柔道部にしたって事だし、今日はどうせ一緒に帰れそうにない。

 

「佐藤、ドッジボールしようぜ」

 昼休みの校庭でするドッジボールを、活発系男子グループの小松が誘ってきた。

「ああ、やるよ」

 答えると僕は席を立った。

 見ると池谷が寂しそうな顔をしていた。

 彼は昼休みに校庭で遊んでるのは見たこと無かった。

「池谷もやる?」

 僕が聞くと、彼は目を輝かせて頷いた。

 

 授業が終わって掃除の時間になったけど、去年までと比べて平和すぎて気が抜けるくらいだった。

 ごく普通に男子と女子で協力してみんなの教室をきれいにした。

 しかし、油断はできない。

 今のところ別の学校から来た女子もいるし、岡田たちは息を潜めているが、その女子たちを取り込んで、いつ女権帝国の息吹を吹き返すかわかったものではないからだ。

 女尊男卑の教室は、明日始まるかもしれないのだ。

 

 教室の後ろに下げていた机を元に戻す。

 先生用の大きい机を動かすとき、池谷が手伝ってくれた。

「佐藤君さ。聞いたんだけど、去年の君のクラス、男子は女子にいじめられてたの?」

 ふらつきながら、池谷が聞いてきた。

「まあね。ちょっと、女子に弱みを握られてたんだ」

 簡潔に答えると、池谷はため息をついた。

「本当だったんだ。うわーすごいね。ちょっとうらやましいって言うか」

 何考えてるんだ、こいつは。

 あっけにとられた僕の顔がおかしかったのか、池谷はふふふっと笑ってえくぼを見せた。

 思えば、それが、池谷ってちょっと変だと思った最初の瞬間だった。

 彼が僕とぷっくの間に割ってはいることになるなんて、もちろんその時は全然想像もできなかったわけだけど。

 

 

 3

 

 

 放課後、僕は池谷と演劇部に向かうために教室を出た。

 その前に、一組のぷっくに会って行くつもりだった。

 教室の後ろの扉から覗くと、お下げ髪のぷっくは五人グループで話し込んでいた。

 手を振ると、僕を見つけたぷっくが小走りで近づいてきた。

「ぴか、もう帰るの?」

 一瞬、横にいる池谷に視線をやった後、そう聞いてきた。

 僕はそれには答えずに、

「柔道部に入ったの?」

 と聞いて見た。

「あ、岡田さんから聞いたんだね。そうだよ。最近太り気味だしさ。シェイプアップしようと思って」

 別に太ってないし、そう言いたかったけど止めておいた。

 少女が大人になるときに、胸やお尻が大きくなるのは太るとは言わないんだっていってやりたかったけど、横の池谷には聞かれたくなかった。

「でも、よくあの岡田と一緒にやる気になったもんだ。ずいぶんいじめられたのにさ」

「去年は助けてくれたじゃない。あの人も案外悪い人じゃないよ。いや、あのくらい強くなりたいなって思ったんだ」

 勘弁してくれよ。岡田みたいなぷっくは正直嫌だ。

「それより、ぴかは?」

 そう言って、ぷっくは僕と池谷を交互に見た。

「実は、こいつに誘われてさ。演劇部にいくところ」

「うわー、ぴかが演劇部ってのは想像してなかったな。でも、うん、割といいかもしれないよ」

 どういう想像をしたのか知らないが、くすくす笑ってぷっくは僕の肩をたたいた。

 

 

 渡り廊下を歩く僕らの間を、春先の冷たい風が吹き抜ける。

 斜めになった太陽の橙色の光が、前を歩く学生服の池谷の髪を金色にきらめかせた。

 その池谷が急に振り向いた。

「さっきの一組の子。可愛かったよね。もしかして佐藤君の彼女?」

 見上げる目つきがいたずらっ子のようだった。

 池谷はまだ知らないのか。

 同じ小学校から来た奴は、僕とぷっくの関係を知らないものはいない。

 婚約者さと言いたかったけど、照れくさいのと、もうひとつ、最近少しぷっくとの関係が以前と違ってきたことが引っかかっていて、すんなり言えなかった。

「別に。どうって事ないよ」

 池谷がぷっくに恋をするとは、このとき思ってもいなかったのだ。

 追いついた池谷に、今度は僕が聞いてみた。

「池谷こそ、もててたんじゃない?」

 この手の可愛い系は、リーダー的な委員長タイプからもてたはずだ。

「僕なんて、全然もてないよ。パシリだよパシリ」

 まあ、それもあり得るか。

 可愛い系は女子のマスコットにされることが多いから。

 そんなことをしてる間に、演劇部の部室が見えてきた。

 たくさん並んだ部室のドアのひとつをノックしようとした時、そのドアが内側から開いた。

 背の高い学生服の胸にもう少しでぶつかりそうになった。

 長い顔をした上級生が、僕に一言謝ると、後ろの池谷を見て目じりを下げた。

「おお、姫。そろそろいらっしゃる頃だとお待ちしてましたぞ、さあ中へ」

 池谷を姫と呼んだ上級生は、自分の身体をどけて僕らを導きいれようとした。

 思わず足が止まった僕を押すように、池谷が体を押し付けてきた。

 そのまま僕は演劇部の部室に足を踏み入れた。

 部室は八畳くらいの部屋で、衝立で間仕切りがしてあり、奥はロッカーなどが置いてあった。手前には座布団がいくつか積み上げてあった。

「靴脱いで上がれよ。座布団とっていいからな、ちょっと待っててくれ」

 上級生はそう言った後、部屋を出て行った。

 部室には他に誰も居なかった。

「ひょっとして、さっきのが、池谷を誘った幼馴染の?」

「まあ、そういう事。淡路島さん」

「淡路島? 変わった名前だな、でもどこ行ったんだろな。こっちはさっさと手続きしたいのに」

 今日のところは入部届けにサインして帰るつもりだった。

 見学とかさせられるのかな。

「缶ジュースでも買いに行ったんじゃないの?」

 池谷は座布団の上に体操座りした。僕は胡坐をかく。

「今日は他の人は居ないのかな。どっかで練習中なのかな」

「多分ね」

 その言葉の後、池谷は横の僕の顔をのぞき見るようにした。

 近くでじっと見つめられるのは変な気持ちだ。

「なんだよ」

 僕は体を引きながら聞いた。

「ちょっと、変なこと聞いてもいいかな」

「こんな所で? なんのこと?」

 見つめる彼の眼は教室でのと違って見えた。

 ぐっと思いつめるような、何かを決心したような感じだった。

「佐藤君さ……チンコに毛は生えた?」

 思わず噴き出しそうになった。

 愛の告白でもされるかと思ったのに、チンコに毛とは。

「馬鹿かよ。生えてるよ」

 もしかして、いやきっと池谷はまだ生えていないのだろう。

 それを聞くと、彼はうつむいてうんと答えた。

「中学生になったのに、まだ生えてないなんておかしいよね。ホルモン異常かな」

 マジかなこいつ。

 でも、池谷ならホルモン異常と言うのもありえると思った。

 いかにも男性ホルモン欠乏症という感じだから。

「ねえ、ちょっと見せてくれないかな。どのくらい生えてるのか」

 池谷が心配する気持ちはわかるけど、中学生でまだ生えてないのなんてそれ程珍しいことじゃないだろう。

「気にすることないって。僕でも最近産毛よりも太いのが少し伸びてきた程度だよ」

「だから、どのくらいか見てみたいんだ。自分だけ脱ぐのが恥ずかしいなら、僕も脱ぐよ」

 池谷は立ち上がると、学生服の上着を脱いでズボンのベルトを緩めた。

「ばか、さっきの先輩が帰ってくるよ。ここじゃまずいって」

 僕も立ち上がり、池谷の手を押さえる。

「大丈夫だよ。自販機から買って来るなら10分はかかるから」

 彼はそのままズボンと下着を一緒におろした。

 ワイシャツの奥に、白い包茎の股間が見え隠れした。

 確かに陰毛はまったく見えなかった。

 仕方ない。

 ぐずぐずしていて見つかるのはまずい。

 僕も上着を脱ぐと、ベルトを緩める。

 下半身裸のまましゃがんで見守る観客の前で、僕はズボンと下着を下ろした。

 

「はい、カーット」

 大きな声が衝立の後ろから聞こえた。

 二人きりだと思ってたのは間違いだったのだ。

 ついたての奥のロッカーの方から二人の上級生が出てきた。

 二人とも女生徒だった。

 部室の扉も開いて、さっきの先輩もにやけた顔を出した。

 あっけにとられていると、目の前の池谷が膝をつついてきた。

「おちんちん仕舞ったら?」

 池谷は知ってたんだ。

 これはひょっとして僕がはめられたってことか。

 すぐにズボンを上げてベルトを締める。

 顔が熱くなってたけど、小学生の頃からいろいろあったことだし、慣れてしまったのかそれ程恥ずかしい気持ちはなかった。

「池谷は知ってたんだな」

 池谷を睨んで聞いてみる。

 てっきり笑いながらそうだよって言うかと思った池谷が、涙目になってるのは意外だった。

「ごめん。君を誘った事言ったら、この台本どおりにやれっていわれたんだ。入部テストだって」

 学生服のポケットから池谷はメモを取り出した。

 ざっと眼を通すと、さっきの池谷の台詞がいくつか書いてあった。

「まあまあ、怒らないでね。カメラテストよ」

 そういう彼女の手にはハンディタイプのビデオカメラがあった。

 さっきのシーンを録られたのだ。

 彼女の場所からは、僕の股間は丸見えだったはずだ。

 茶番劇にかっとなった僕だけど、なぜかその怒りは燃え上がらなかった。

 おかしくなって笑ってしまった。

 芝居っけがあるのは面白い。演劇部に芝居っけがなかったらまずいくらいだ。

「まあいいか。それで、僕の入部テストは合格ですか?」

 僕が聞くと、先輩たちの、合格でーすという声が薄暗くなった部室に大きく響いた。

 

 

 

 

 校門を出た僕と池谷はバス停まで約50メートル歩いた。

 僕らの家の方向は逆だから乗るバスは違うけど、バス停は同じ場所だ。僕の方が対向車線側にあると言うだけ。

 もしかしたらぷっくがそっちの停留所にいるかもと思ったけど、そうそう都合よくはいかない。バスの時刻表を見ると、池谷の方のバスは、まだ三十分ほど待たないといけないようだった。

「さっきはごめんね、騙すようなことして」

 池谷はまだ気にしてるようだ。

「別に気にしてないよ。もういいよ」

「でも、本当言うとすこし嬉しかったんだ」

 ちょっと引いた。何が嬉しいんだろう。

 僕のちんこを見れたことか?

「佐藤くんも、そんなに生えてないんだなってわかったし」

「なんだよそれ、やっぱり気にしてたのか」

「うん。近所でよく会うから、あの先輩、僕の悩みをよく分かってるんだよね」

 ふと思いついた。

 やはり、このままここでさよならするのは面白くない。

 なにか、さっきの仕返しというかお返しをしてやりたくなった。

「そうだ。まだバスが来るまで時間あるし、お風呂でも入っていかない? 近くにスーパー銭湯できたの知ってるだろ。あそこならちんこもたっぷり見れるぞ」

 池谷はあまり乗り気じゃなかったけど、僕が腕を引くと、苦笑いしながら賛成した。

 

 二十分歩く間に周囲は暗くなってきた。

 街灯が点いて、車のヘッドライトも光り始める。

 大通りに面した大きな建物が見えてきた。橙色をした真新しいビルは店名の看板も輝いている。

「お風呂屋さん、よく来るの?」

 入り口を通りながら池谷が聞いてきた。

「たまにね。ここには三回目かな」

「僕は家族旅行で温泉に行ったことはあるけど、こういう所は初めて」

 さっきまではあまり乗り気じゃなかったようなのに、脱いだ靴を靴箱にしまう彼はワクワクしているように見えた。

 入場券を四百円出して買うと、受付でスタンプをもらった。

 よく磨かれた木の階段を上がり、男性用の脱衣所に入る。

 ロッカーボックスの並ぶ広い脱衣所では数人の男が服を脱いだり着たりしていた。

 右手の洗面台では、ドライヤーで残り少ない髪を乾かしているおじさんが一人。

「ロッカーは百円入れるけど、これは鍵を開けるときに戻って来るから実質無料なんだよね。帰るときに忘れないようにな」

 注意書きを差して池谷に言うと、彼は感心したようにうなずいた。

 

 学生服を脱いでいく。

 池谷の肌は色白で華奢だった。

 裸の背筋を指ですうーっとなぞってやる。

 キャッと言う声が、まるで女の子みたいで、周囲の男たちがみんな振り向いた。

「もう、佐藤くんったら」

 こんな物言いもまるで女の子みたいだ。

 百円で買ったタオル一つ持ってお風呂場に移った。

 大浴場は湯気がすごくて気温が高い。

「おい、先に体洗わないとダメだよ。エチケットって奴」

 掛け湯をした後、そのまま湯船の方にいきそうな池谷を僕は洗い場へ誘導した。

 洗い場の椅子に並んで座る。

「こういう所って、前隠さないのかな」

 周囲を見回しながら池谷が小声で言った。

 見回すと、大人でも隠している人は居るけど、どちらかといえば隠さない人の方が多そうだった。

「普通は隠さないよ。隠すのはよほど持ち物に自信のない人じゃないの」

 しっかり股間をタオルでくるんでる池谷に当てつけるように言ってやった。

 男らしくしようと気にしてたのか、彼は僕の言葉で腰まわりのタオルを外して洗面器につけた。

 さっき少し見えた子供ちんちんが現れた。先細りのドリルちんちんだ。先端までしっか

り皮がかぶって、さらに余ってさえいる。

 

「背中流してやるよ」

 僕は自分を簡単に洗った後、立ち上がって池谷の後ろに回った。

 ありがとうと言う池谷から石けんの泡の立つタオルを受け取る。

 細い腰まわりを洗ってやり、座っている池谷のお尻の谷間にタオルを滑り込ませた。

 人差し指でアヌスをつんとつつくと、あんっと、また女の子みたいなかわいい声をあげた。

「ばか、変な声出すなよ、みんなが見てるぞ」

「そんな、佐藤くんが変なことするからだよ」

「変なことじゃないよ。ちゃんと全部洗わないとダメだろ」

 一旦避けて浮いたお尻が椅子に座ると、僕は再び感じる部分を刺激してやった。

 今度は避けずに我慢している。

 指先に力を込めてやると、人差し指の第二関節までずるりと入ってしまった。

 

 う、うん。

 小さく切ない声を池谷があげる。

 周囲に人がいないのを横目で見てから、さらに奥まで入れてみた。

「便秘じゃなさそうだな」

 僕が言うと、涙目になった池谷が下から睨んできた。

 シャワーで流してさっぱりした後は、広い浴槽に向かう。

 でもその時なかなか池谷が立ち上がらない。

 きっと勃起してしまったのだろう。

 上から覗くと、包茎のドリルちんちんが目一杯自己主張をしていた。

「ほら、早く。体冷えちゃうよ」

 急かすと股間をタオルで隠しながら彼は立ち上がった。

「さっき言っただろう。こんな所で前は隠さないの」

 彼のタオルを奪い取ると、上向きになったドリルちんちんが周囲の笑いを誘った。

 あん、と声を上げて僕を追ってくる。

 無人だった泡風呂に勢いよく入り込む。

 暖かい湯が全身を包み込むのが快感だった。

 

「もう。こんなに恥ずかしかったの生まれて初めてだよ」

 首まで浸かりながら僕の横の池谷がささやいた。

「俺だって、部室では恥ずかしかったからな。上級生の女子にちんこ見られたんだぞ」

「やっぱり気にしてるんだ」

「当たり前だろ。だから仕返し」

「じゃあ、これでお相こだね」

「まださ。だって俺は女に見られたんだからな」

 池谷の股に右手を伸ばした。

 お湯に浸かったからか柔らかくなったちんこをつまんでやった。

「ダメだよ、何するの」

 逃げようとする彼のたまたまをグッと握ると、抵抗は静まった。

 下唇を噛む池谷の顔を観察しながら、僕は先端部の皮をめくる。

 うっと短く池谷が呻いた。

 そのとき、洗い場からおじさんが一人やってきた。

 泡風呂だからお湯の中までは見えない。

 近くに座るおじさんを無視して、僕は次第に固くなるつぼみを人差し指と親指でくねくねしてやった。

 眉をしかめて唇を噛んだ池谷を、おじさんが不思議そうに見た。

 しかしおじさんは、僕の手の仕業とは分からないようだ。

 ふっとそっぽを向いた。

 指の刺激を続けていると、池谷が息を荒くし始める。

「おい、あんまり長く入ってるとノボせるぞ」

 おじさんが池谷に言った。

 

 僕はそんなことにおかまいなく池谷のものを強くしごいてやる。

 くんっと背筋を伸ばして池谷がいったようだった。

 池谷はもう精通は来たのだろうか。

 泡風呂だから確認できなかった。

 

「まったく、信じられないよ。あんな所でするなんて」

 泡風呂を出て露天風呂に僕等は入っていた。

「泡風呂でよかったよな。ミルク見られなくてさ」

「ミルクって?」

 やはり池谷はまだなのかな。

「精通だよ。保健体育で習っただろ」

「そういえば聞いたような聞かないような」

 性的発育に関心の高い池谷が知らないわけがない。しらばっくれているのだ。

「ひょっとしてもう来てるんだ。じゃああの風呂もう入るの止めとこう」

「ばか、知らないから」

 また女みたいな言い方。

「ひょっとして、池谷の家、女姉妹ばっかりなんじゃない?」

 池谷はうなずいた。

「やっぱりね。話し方が変にオカマっぽいから分ったよ。でもさ、そんな調子じゃオカマっていうあだ名がつくのは時間の問題だぞ」

「それは嫌だな。何かいい方法ってあると思う?」

「そんなの知らないよ。でも、普段から男っぽい人と一緒に居るようにすれば、影響受けて自分もそうなるんじゃない?」

 僕が言うと、池谷の視線が、ふと一点で止まった。

「例えばあんな感じかな」

 そっちを見ると、全身毛むくじゃらの熊みたいな日に焼けたおじさんが奥にある檜風呂の縁に腰かけてこっちを見ていた。

 うっかり目があって慌てて逸らす。

「そうだな。あんな感じ」

 言ってると、そのおじさんがこっちに歩いてきた。

 

「お前たち、中学生か?」

 そのおじさんは、露天風呂に足をつけ縁に座った。

 目の前に、だらんとした大きなものがぶら下がって見えた。

 池谷の目も、それに釘付けのようだ。

「まだ毛も生えとらんのやろう」

 そう言うおじさんの太鼓腹の真ん中も胸から腹、そして下腹部まで太い剛毛が濡れて体に張り付いている。

 僕等が黙っていると、おじさんは右手を股間に持っていった。

「ほら、でっかいだろ、しゃぶってもいいぞ」

 そう言って右手で軽くそれをしごいて見せた。

 しゃぶるなんて冗談じゃない。何考えてるんだこのおっさん。

 一瞬想像してしまった僕は気分が悪くなる。

 

 でも、目をそらしたかったけど、つい見つめてしまう。

 ゆるかった棒が徐々に起き上がる。

 そして見る見るうちにガチガチになっていった。

 グッと反り返った赤黒い色をしたそれは、腹につくくらいに起立した。

「触ってもいいぞ」

 さすがに僕は室内に戻ろうと思って立ち上がったけど、見ると池谷の手がそれに伸びていくところだった。

 口をポカンと開いて、頬も紅潮している。

 池谷の手がそれをグッと握りしめた。

 おじさんは僕の方を見てニヤリと笑った。

 

 

「だって、男らしいおじさんだったし、触れば僕も男らしさがうつるかと思ったんだよ」

 あの後すぐに池谷を立たせて、僕等は室内に移った。

 そして素早く服を着ると、変態おじさんのいた銭湯を出た。

「ばか、男らしいんじゃなくて、あれは変態だよ。変態がうつってもいいのか?」

「変態が移るのは困るけどさ」

 オカマって言われていじけてるようだ。

「じゃあな。俺のバス停は向こうだからいくよ、明日な」

「うん、明日からクラブで一緒だね。よろしくね」

「いいけどさ。今日みたいにハメたら今度はただじゃおかないからな」

 少し低い位置にある池谷の白いおでこを指でつついてやった。

 ちょうど池谷の乗るバスが、軽くクラクションを鳴らしながら寄ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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