美ネコを増やそう

  9 公衆便所

 ざわついた教室のなかで、列の一番後ろにある啓子の席にあたしは座った。
 他のクラスメイトたちはランチタイムだけど、あたしらは三時間目に抜け出して
屋上で食べて来た後なのだ。
 啓子のノートパソコンが机の上に広げられている。IBM製のB5ノートだった。
 『PHOTO』とタイトルのついたフォルダーを開いて、JPEGファイルをダ
ブルクリックすると、昨日のノリがフルカラー液晶の画面にあられもない姿を現し
た。
 四つん這いになって剥き出しのお尻を高く持ち上げられている。
 その赤い肛門は大きく広げられて、ピンクのゴム製ペニスが奥深く蹂躙している。
 上気したノリの頬は涙で濡れていて半開きの口元が、その半狂乱の状態をリアル
に表現していた。
「いいわね。今見てもぞくぞく来るわ」
「あたしの写真の腕も大したもんでしょ。顔の表情を逃がさないように、エッチな
ポーズを撮るのって案外難しいんだから」
「そうかもしれないね。結構動き回ってたもんね」
「あ、なにそれ。すっごーい」
 あたしたちの横から、秀島あけみが間延びした顔を近づけてきた。
 普段あまり話をしない彼女の方から寄ってこられて、鼻じらんだ啓子が画面を変
えようとした時、あけみの素っ頓狂な声がさらに一オクターブ上がって周囲を振る
わせた。
「あ、この子知ってる。ハセノリでしょ」
 長谷川憲弘だから確かにハセノリだ。本当に知ってるのか?
「どうして知ってるのよ。この子まだ中学生だよ」
 なんかいやな予感がしながらあたしが聞いたら、あけみは嫌らしい笑みを浮かべ
て、あたしらホモ同好会の中じゃ有名人だもんね、と言った。
「ホモ同好会?なにそれ変態なんじゃないの」
 啓子が自分の事は棚に上げてとげとげしい言い方をした。
 啓子もいやな予感がしてるのだろう。
「美少年もいいけど。現実的じゃないからね。あたしらが追求するのはひたすらリ
アリティのある同性愛なのよ。ひげ面の親父達が公衆便所の個室で汗だくになって
舐めあったりしてるようなね」
 想像したら気分が悪くなった。でもこの変態を殴って追い返すには、まだ早い。
 聞きたいことがあったのだった。
「いいから、ノリを知ってる理由を言いなさいよ。どういうこと?」
 あたしたちの剣幕に恐れをなしたのか、ちょっとマジな顔になって、あけみは話
し始めた。

 ノリこと長谷川憲弘君は、あの界隈のホモの店ではアイドル的存在なのらしい。
 あれだけの美少年顔なのに、ハードなリアルホモの世界で ・・・・・・。
 まだ中学生だと言うのに、年齢を偽ってか、その手のサウナに週に2回は現れる。
 そして全裸の足首に赤いロッカーのキーを巻きつけて、湯気のあふれる浴場に現
れるのだ。欲情渦巻く浴場だ ・・・・・・、我ながら馬鹿だ。
 あたしと啓子はその話に完璧に打ちひしがれてしまった。
 昨日の態度から見ても、いくらかは知ってるかと思ったけど、そこまでマニアだ
とはげんなりだ。
「そういう訳なのよ。それであたしの友達のホモの人から写真を見せてもらって、
話も聞いてたの。でもアイドルって言うより公衆便所って言ったほうが似合ってる
けどね。あんたたちもホモの人からもらったんじゃないの? この写真 ・・・・・・」
 パソコン上の別の写真を覗こうとするあけみには脳天唐竹割りをお見舞いしてご
退場願った。
 今日は早退だ。今後の事を話し合わなければいけない。啓子に目配せをして、あ
たしは休み時間終了のチャイムの鳴る教室を後にした。


「美木ちゃんは知ってたんじゃないの。ノリがハードマゾだってこと」
 友香が詰め寄るようにカウンターに身を乗り出した。
 急遽招集をかけられたメンバーたちは、この店でノリの話を聞かされて、皆一
様にショックを受けていた。
 中でも友香が一番ダメージが大きそうだった。
 昨夜は一番乗り乗りで張り切っていたからね。
「いやまあ、でもいいじゃないですか。まったくの素人相手にあんな事したら犯罪
者になっちゃいますよ」
 泣かせることを言うけどやっぱり知ってたんだ。
「どう落とし前付けさせるかだね」
 美雪が柔道で鍛えた太い上腕筋を組んで、大きく鼻から息を吐いた。
「あんまり手荒なことは無しにしてくださいよ。頼みますから」
 グラスを拭きながら美木ちゃんが言う。
 いつに無くでしゃばるわねと友香がたしなめたが、あたしはなんとなくその理由
に見当がついた。
 客はあたしたち以外にいなかった。今日は普通に開店しているんだけど、入りか
けた客も、店の真中でたむろしてる不良女子高生の集団を見るや回れ右していくの
だった。
「とにかく見つけてつれてこようよ。待ってても自分からはこないだろ。ネットの
写真なんて、ハードなマニアには大して効果ないだろうから」
 美雪の意見に賛成だけど、見つけるにしてもどこを探す?
 あたしのため息に同情したのか、美木ちゃんが口を開いた。
「宇和殿町の中央サウナがその手の店ですよ。ノリ君もよく行ってるみたいです」
「そうは言っても、男しか入れないんでしょ」
 啓子の声に美木ちゃんがかぶせるように言う。
「入り口を突破しさえすれば、後は何とかなりますよ。可南子さんと友香さんなら
胸も小さいからジーンズに着替えてサングラスでもすれば、きっとごまかせますよ」
 美木ちゃん性格変わったんじゃないかな。あたしたちに向かって胸が小さいなん
て、よくも言えるもんだ。
 思わずはたきたくなったけど、まだ聞きたいことはいろいろ残ってる。
 ここはぐっとこらえてやった。友香も同感らしいと言うのが赤黒くなったほっぺ
たでよくわかった。

 
 
 10 逆ナンパ?

 早速美木ちゃんの店を出ると、通りかかったワンボックスカーを手を上げて止め
た。
「なんだよ。逆ナンパかい」
 大学生くらいの男の二人連れが乗っていた。一人は無精ひげはやした男で、もう
一人は下唇のところにピアスをしていた。
「いい事してやるから、宇和殿町の中央サウナまで連れてきな」
 にやけた彼らの口元が美雪のすごんだ一言で凍りつく。
 宇和殿まで普通に走れば30分くらいだ。混雑していれば1時間くらいかかるか
もしれない。その間に何発搾り取られることになるんだろう。
 じゃんけんで負けたほうが運転をさせられることになったけど、これは絶対逆だ
よね。最初はよくてもすぐにそう思うようになるはずだ。
 じゃんけんに勝ったのは無精ひげを生やして、明るい茶色に染めた長髪を後ろに
結んだ日に焼けた男だった。
「ほら、ズボンとパンツ脱いで、足を広げな」
 対面式になる座席で、美雪の前に彼は座らされた。
 美雪もなんだか欲求不満気味だったみたいで、いつに無く鼻息が荒い。
 口で息をしながら男が言うとおりにすると、獲物に飛び掛る巨大なメスライオン
みたいに男の股間に顔をうずめていった。
 すでに硬くなって天を向いている棒を、美雪の口ががぶりとくわえ込む。
 ずびっずびっと吸気音が車内に響く。美雪のよだれが早くも彼のペニスをべとべ
とにしていった。車が動き出すと、カーブを曲がるたびに突き出された美雪のでっ
かいお知りが、右に左に揺れ動いた。
 

 う、うう、男も気持ちよくなってきたのか腰が自然と動き始めて、ずり下がって
きた。
「ああ、だめだ、出るよ。もう少し手加減してくれよ」
 美雪の頭を男の手がのけようとするけど、その両手は万歳する格好で友香にガム
テープで縛られた。
「おお、すげーな。くそー俺もやってほしいぜ」
 ルームミラーで見たのか、運転係の男が唾を呑んでいっている。
 車は高速道路に入る事無く、下道をのろのろ進んでいる。これなら目的地まで1
時間以上かかりそうだ。時間をかければ自分まで回ってくるに違いないという、運
転係の男の考えは見え見えだった。
「ほら早く出しなさいよ。味見してやるから」
 ペニスを口にいれたまま、美雪が男を見上げて言う。
 美雪の吸引フェラで男のものは赤黒く充血してる。それが気持ちいいのか、男は
今にもいきそうだった。
「う、うう。ああー」
 情けない脱力系の声を放ってそいつは一回目の射精を終えた。美雪に玉を揉まれ
て、びくんびくんと腰を突き上げる男。至福の表情で大きくため息をついた。
「お、行ったみたいだな。忠雄、早くしろよ、交代だ」
 忠雄と呼ばれた男は、薄手のビキニパンツをずり上げて、さらにジーンズを引っ
張りあげた。
 え?いいの?このまま?という表情で美雪があたしを見た。
 いいんじゃない。二人を交代で搾り取ってやるのも面白いかもしれないし。
 あたしはそういって美雪にうなずいて見せた。
「忠雄、遠回りしていいからな。俺はおまえみたいに早くないんだから」
 忠雄が座っていたように、今度は彼が座った。
「英明だって5分でいっちまうよ。その子のバキュームフェラは最高なんだから」
 二番目の男は英明か。名前なんてどうでもいいけど、忠雄より長持ちするって本
当かな。
「じゃあ忠雄君より早かったら、お仕置きしちゃおうかな」
 赤黒く艶のある亀頭が膨れ上がっているそれを、美雪は片手でしごきながら言う。
「いいぜ。でも忠雄は何分くらいだったっけ?」
「8分くらいだったよ。だからあんたは10分以上もたせないとお仕置きね」
「いいかげんな事言ってるなあ、でも10分くらい軽いもんさ。馬鹿にすんなって」
「大きく出たわね。じゃあ10分もたなかったら、何されても文句言わないわね」
「いいとも」
 そんな具合に英明のフェラは始まった。
 七人乗りのワゴン車の中は、助手席に友香、真中の列に男と美雪とあたし、最後
列に啓子と百合子。
 皆が注目する中、英明の下半身が剥き出しにされる。夕暮れ時のオレンジの光の
中で、黒々とした陰毛が流れる水のように見える。
 美雪がくわえ込もうとした時に、後の百合子が待ったをかけた。
「ちょっと、美雪が飢えてるのはわかるけど、少しはこっちにもまわしなさいよ」
 不思議そうに美雪が百合子を見る。
 確かに、美形の百合子はいつも飄々としていて、そんな台詞を言うようには見え
ない。ひょっとしたらあの日かもしれない。少し苛ついてるようにも見える。
 美雪も察したのか、「ちょっと止めてよ。席代わるから」美雪は運転してる髭面
に言って路肩に止めさせ、すんなり百合子と交代した。
「うひょー、こりゃさらにラッキーだね。忠雄、悪いな・・・・・・」
 英明の言葉に忠雄は軽くため息をついた。
 路肩に止められていた車のエンジンに火が入る。
 一つぶるんとゆれたのは忠雄の不満の現れか。
 自分からズボンとパンツを脱いで、英明は陰毛の豊かに育った下腹部をさらしだ
した。
 その中心に普段隠されていて、欲求の一番こもっている棒がにょっきりと起き上
がって怒りに震えていた。
 赤くなって血管が浮き上がってるという意味で。
 その太い棒を、百合子は無言のまま右手で握り、顔を近づける。
 先走りのカウパー腺液でねっとりぬれた、えらの張った亀の頭を一回舌で舐め上
げたとき、英明の声が思わず漏れた。
 大きく口を開けて百合子がそれをほおばると、くくっとさらに声が漏れる。
「うまいもんだな。いつもこうして男を味わってるって感じ」
 じゅるじゅるという唾液をすする音で、その強がりも小さく消え入ってしまう。
「ねえ、10分我慢するんだったよね。まだ2分しかたってないけど、大丈夫なの」
 啓子がデジタル時計のストップウォッチを眺めながら言う。
 とても無理だろう。
「さて、お仕置きを考えなくっちゃね」美雪が言った時点でほぼ決まりだった。
「久しぶりに美雪のあの技をおがまさせてもらおうよ」
 あたしが説明するまでもなく、皆にはわかってるのだ。
「おいちょっと待てよ、まだいってないんだから。失礼だぞ」
 英明の抗議は百合子のダッシュですぐにあきらめに変わる。

 あ、だめだ、そんなに強くしたら ・・・・・・ お、おう。あ、あ、あ・・・・・・
 百合子の顔が激しく上下すると、それに合わせて英明の声の調子が小高く変わっ
ていった。
 英明が腰を浮かせて、う、うんと女みたいに喘いだのは、それから2分後のこと
だった。
「はい、終了時間7分、お仕置きだね完璧に」
 啓子が腕時計の数字を英明に見せて言った。


 
 見本 次回更新日未定

 原稿用紙121枚。




 本編完全版は『でじたる書房』でお求めください。