あたし変態なのかなU
 一章 山頂でお散歩
 
  



 狭い山道を降りていく私の足取りは登っていくときよりも不安定になってました。
 コジローとのセックスで感じちゃった所為もあるけど、それよりあの男に犬のように這わされて連
れまわされたりした所為で、膝ががくがくしてるんです。
 降りるときは上るときより体力は消耗しないけど、膝に力が入らないと特に滑りやすい岩場なんか
の時にかなり危険な目にあってしまいました。
 尻餅つきながら何とか急な崖の所まではきましたが、一人で降りれるか不安でした。
 それでもコジローを先に行かせて、私は鎖につかまります。
 さびた鎖から鉄の匂いが鼻腔に届きました。
 なんとなく頼もしい匂いでした。
 それをしっかりつかんで、私は後ろ向きでゆっくり降ります。
 後ろ向きの方がまだ楽なような気もしました。
 でも、もう少しというところで、足が滑って、つかんでいた鎖を放してしまったんです。
 瞬間の無重力感。
 次に襲ってくる地面の衝撃に身構えた私は、予想に反して冷たい水に身体を巻き込まれてしまいま
した。
 崖の横に沢があるのはわかっていましたが、生い茂った草に隠されて目立たなくなっていたんです。
 その沢にはまった私は、水の勢いと重力によって押し流されていきました。
 崖のごつごつした岩とは違って流水によって滑らかになった岩の上をすべる様に、急になったり緩
やかになったりしながら流されました。
 一瞬暗くなって、トンネルのような穴を抜けた後、滝から落ちて滝つぼで水しぶきを上げていまし
た。
 暗くなったのは、林道を横切るために掘られた流水用の穴だったことは、滝つぼから這い上がって
見上げたときにわかりました。
 ふと見ると、私のデイパックが岩に引っかかっています。
 下流を見ると、五メートル位の幅の岩場の両側は森の樹が密生していて、獣道さえ見当たりません。
 かなり流されたような気もするし、一瞬だったような気もします。
 でも、滝を這い上がってもとの場所に戻るのは不可能のようでした。
 ただ、怪我がなかったのが不幸中の幸いです。
「コジロー」
 大声で叫んでみましたが、反応はありませんでした。
 普通ならすぐに吼えながら走ってくるコジローなのに。
 デイパックの中に入れていた携帯電話を引っ張り出してみました。
 駄目だろうと思ってましたが、雨をはじくようにできたデイパックの中にはそれほど水がしみてい
なくて、携帯電話の電源は切れてはいませんでした。
 しかし、相変わらず圏外です。
 このまま沢沿いに下るか、コジローを待つかちょっと迷うところです。
 でも、樹木に囲まれた沢沿いの空間が徐々に暗くなってくるのには耐えられず、私は下流に下るこ
とにしました。
 コジローは犬だから匂いを追ってこれるでしょう。
 
 今の場所が車を置いてある所よりも山頂よりなのは、確かです。
 車の場所ではまだ携帯が使えたから。
 所々私の背丈ほどもある岩の横を、私はずぶぬれのまま進みました。
 足場が悪くて歩きにくいけど、山側は木の枝が張り出したりして、入り込む余地はありません。
 
 その息遣いが聞こえたとき、私はてっきりコジローが追ってきてくれたんだと思って笑顔で振り向
きました。
 でも、そこにいたのはコジローではなく、茶色い汚れた犬でした。
 私の方を胡散臭げににらんでいます。
 野良犬のようでした。首輪もしていません。
 私は地面にあった手ごろな石を拾って投げつけました。
 しっしっと追い払うと、犬は首をゆらゆらさせて引き返しました。
 さらに十分くらい進んだところにはコンクリートでできた砂防ダムが私の行く手をさえぎっていま
した。
 砂防ダムに上がる階段もなくて困ってしまいました。
 立ち止まると身体が冷えてきてくしゃみが連発して出てしまいます。
 私は濡れたジャージを脱いで、ティーシャツとパンティだけになってタオルで身体を拭き始めまし
た。
 ついでに上も下も脱いで全裸になってバスタオルを身体に巻きつけました。
 このあたりは砂防ダムの前には小さな池があるだけで、沢の水はかれています。
 上流の豊かな水は地面に吸い込まれてしまったみたいでした。
 カラスやとんびの鳴く声が夜が近いのを知らせるようです。
 相変わらず携帯は圏外だし。
 今日はここでビバークするしかないかもしれません。
 芝生広場で待ってる彼には気の毒だけど、彼のことを心配するより自分のことが先決です。
 私は焚き火の元になる枯れ木を集めることにしました。
 森に分け入って枯れ木を拾っていると、またさっきと同じ息遣いを感じました。
 あの野良犬が何かえさを求めてやってきたのかもと思って目を凝らすと、暗い森の奥には数匹の犬
がこっちにじわじわ近づいてくるところでした。
 三匹、いえ、五匹位いるようです。
 急に怖くなってきました。
 一匹だけなら野犬も怖くはないけど、集団になると人を襲うことさえあるからです。
 私はすぐに沢にもどり、枯れ木に火をつけることにしました。
 犬は火を怖がると思ったんです。
 木切れに火をつけようとしゃがんだとき、お尻にちくちくした犬の鼻先を感じました。
 コジローとする時で慣れてるから、すぐに犬が匂いを嗅いでるとわかりました。
 追っ払うよりも先に火をつけようとしますが、濡れた百円ライターではなかなか火がついてくれま
せん。
 仕方なく身体を起こそうとしたときに、その犬がのしかかってきたんです。
 コジローの精液の匂いを嗅ぎつけて、私をメス犬だと思ったのかもしれません。
 あっという間に周囲を数匹の犬に囲まれました。
 低い唸り声が恐怖心をあおります。
 暴れたら噛み付かれる。
 こうなったら雌犬になりきるしか生き残るすべは無いと思いました。
 私は頭を抱えるようにしてうずくまり、お尻を差し出しました。
 最初にのしかかってきた犬の怒張した先端が、私の陰部を侵略してきました。
 こんなときなのに私のそこがぬるぬるだったのは、コジローの精液が垂れてきていたからだと思い
ます。
 こんな局面で興奮してしまうほど私は犬好きというわけではないんです。
 コジローとで慣れているとはいえ、人間にもいろんな人がいるように犬にも性質の違いなんかがあ
るんでしょうか。
 コジローよりも激しく私を貫き、腰の入れ具合がずんと奥まで響きました。
 ずんずんと犯されていくうちに、次第に私の恐怖心も麻痺していって、快感が強く起こってきまし
た。
 私は犬が入れやすいようにお尻を高く持ち上げて、さらに奥まで迎え入れました。
 襞をめくるように引いては入れを繰り返す犬のペニス。
 ごつごつした先端が子宮口を突くたびに私の口からは堪えきれないいやらしい声が漏れてしまいま
す。
 最初の一匹が激しく射精して、次の犬に交代しました。
「許して」
 無駄とはわかっていてもそんな言葉が出てしまいます。
 周囲の犬の興奮が高まってるのを感じます。
 私はコジローとすることで、犬を興奮させるフェロモンを発するようになっていたのかもしれませ
ん。
 二匹目、三匹目と犯されるうちに、犬に輪姦されることが好きになっていく自分を見つけてしまい
ました。
 犬とのセックスで狂犬病はうつるかしら。それだけが、野犬とのセックスでの気がかりでした。
 でも噛まれるよりはずっとましなはずです。
 四匹目が発射したところで、周囲がざわめきました。
 すでに辺りは月明かりに照らされたところがやっと見えるくらいに暗くなっています。
 その中で勢いよく走ってくる足音が聞こえたんです。
 グルルルと唸る声も聞こえます。
 あっという間に大騒ぎになりました。犬がけんかを始めたんです。
 始めは仲間争いかと思いましたが、ようやく自由になった私がデイパックからライトを取り出して
点けてみると、光の輪の中ではコジローと、最初の茶色い犬が激しくかみ合っていました。
 やっとコジローが私を見つけ出してくれたんです。
 あまりの激しさにほかの犬は一歩引いたところで見つめています。
 コジローが茶色の犬の首筋に噛み付いて振り回すと、堪らずその犬が悲鳴を上げました。
 勝負あったみたいです。
 茶色い犬が逃げていくと、それに従うようにほかの犬も去っていきました。
 あの犬がボス犬だったんでしょう。
 コジローが私の傍に来て顔を舐めてくれました。
 知らないうちに私の目から涙が流れていたんです。


 
 

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 次回見本差し替え未定。