HOTH PRESS 
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  ワンパ研究 

  ワンパ顔アップの衝撃
 氷の惑星ホスのパトロール中に、ルークは巨大な熊様の生物に襲われる。その生物の名はワンパ。ルークがワンパに襲われる時、一瞬だけワンパの顔が見える。ほんのワンカット、数コマしかワンパの顔が映らない。アダルト・ビデオのモザイクがそうであるように、人間というのは、見えないと余計見たくなるという欲求を持っている。よほどの動体視力でも持たない限りほとんど確認不能なワンパの顔を絵に書き留めようと、何回も劇場に通い、ワンパ出撃の一瞬に全神経を集中したが、三十回見ても、その詳しい顔ははっきりとはしなかった。ESB公開当時の話である。ビデオが誰の家にもある現代の状況を考えると、今の若者にはこの努力は想像もつかないかもしれない。しかし、一秒に満たない数コマにおもしろさが集約されているのがSWの魅力である。
 しかし、ワンパの顔が一瞬しか映らないのには、大きな理由が隠されていた。ESB特別編を見た私は大きな至福に包まれていた。それはなんと、特別編ではワンパの顔がしっかりと映し出されていた。ワンパの顔を書き留めようとして私の努力をルーカスが理解してくれた、私の思いがルーカスに届いていたというわけではないだろうが、ESBにおいてワンパの顔がほとんど映されないのには、理由があった。つまり、完成したワンパの着ぐるみを見たルーカスは、その出来に満足しなかった。それは全身像だけでなく、ワンパの顔もそうであった。ワンパは超アップに耐えられるだけの精密な仕上がりになっていなかった。また、ロング・ショットで見てもそのプロポーションは優れたものではなかった。そのため公開時のバージョンでは、ルークを引きずるワンパの姿は、氷柱に見え隠れするような形で、ほんの少ししか映っていない。そして、ワンパの顔アップは、ごく一瞬が使われたに過ぎなかった。また、ワンパが反乱軍の基地を襲撃するシーンが撮影されたにもかかわらず、そのシーンはカットされた。それもワンパの造形の出来が良くなかったことに起因する。ルーカスは、この不十分なワンパな出来を、ずっと不満に思っていた。この十五年間、ルーカスはワンパを優れたディティールで再現したいと願っていたし、我々研究家もワンパの詳しい顔と全体の姿を見たいと願い続けてきた。作り手思いと見る側の思い、その執念が十五年の歳月を得て、見事に再構築された。ワンパは、全身と顔のそれぞれが、新たに作り直された。そして、ワンパの顔アップのシーンと、洞窟内での全身ショットが追加されている。今、詳しいディティールをもって、初めて明らかになったワンパの顔を、堪能していただきたい(図
)。私のワンパへの熱い思いを込めて、ワンパのアップ画像を、「HOTH PRESS」の表紙として採用した。

  ワンパ洞窟ツララの謎
前振りはこのくらいにして、本題に入ろう。このワンパの洞くつのシーンを見ると、いくつかの大きな疑問がわく。まず、気絶させられたルークは、足を天井に氷付けされた状態で、逆さ吊りにされている。ワンパは獲物を巣に持ち帰り、天井から吊るすという習性を持っている。そして、死んだ獲物よりも生きた獲物を好むため、生きたまま吊るしておくのである。その習性は非常に興味深い。しかし、ここで一つの疑問が生ずる。ルークの足は天井に凍った状態ではりついていた(図1)。しかし、この状態像は、極めて不自然である。水のようなものにルークの足を浸して、数秒の間天井に押し付けていれば、この様な状態になるでろあう。しかし、ホスは気温が零度を上回ることはない氷の惑星なのである。ホスは厳寒の惑星であり、自然環境において零度以上で液体となったH
2Oは、存在していないはずである。では、ルークの足を天井に固定するのに必要な水はどこから調達されたか。これが大きな疑問である。氷の惑星ホスには、水は存在しない。たちまち、氷になってしまうからである。では、どのようにルークの足は天井に固定されたのか? このシーンを見る限り、零度以上の物質は、ルークの身体と、ワンパの身体以外には存在しない。最も考えられるのは、ワンパの唾液である。。ワンパがねっぱりとした唾液を持っていることは、ワンパが肉を食べるカットを見れば明らかである(図2)。ワンパはルークの足をペロリとなめる。そうすると、かなりの粘度を持ったワンパの唾は、ルークの足しにからみつく。そして、ルークの足を天井に押し付ける。水と異なり、唾液はその粘性のために滴り落ちることはないだろう。唾液はホスの寒気によって、数秒間で氷になり、ルークの逆さ吊が完成される。その証拠として、ルークの靴には、粘液性のものが固形化した跡がしっかりと残されている(図1、矢印)。ルークの足をペロリと舐めるワンパ。あまり映像として見たくはない。しかし、実際問題として、そうでもしない限り、氷点下状態のこの洞窟の中で、ルークを逆さに吊るすことは困難であろう。

         
  図1 ルークの凍りついた足   図2 ワンパのつば

 そして、ホスが一年中氷に閉ざされた氷点下状態の惑星であるということを考えると、もう一つ矛盾を抱えた物体が、このワンパの洞窟には存在する。それはツララである。このワンパの洞窟には、天井から多数のツララがぶら下がっている(図3、矢印)。この氷の惑星にツララが存在するというのは、極めて不思議である。ツララなど見たことのない人には、この疑問に気付くこともないし、なぜツララができるかも知らないだろう。ツララは通常は、屋根の軒さしにみられる、先の尖った氷である。屋内からの熱が屋根に伝わり、溶かされた雪や氷が、滴り落ちて、寒さのために再び凍り付くのがツララである。つまり、熱がないとツララはできない。完全に氷点下の環境ではツララはできないのである。さりげなく存在しているワンパの洞窟内のツララは、氷の惑星ホスにおいては、非常に大きな謎なのである。

      
     図3 ワンパ洞窟のツララと氷筍

 ワンパの洞窟のツララはどのようにできたのか。まず、最初の可能性は、先に延べたようにワンパの体温が考えられるだろう。しかし、ワンパは非常に厚い毛におおわれてている。それは、体内の体温を外気に奪われないためである。このような厳寒状態に生存するためには、体内の体温を外に逃がさないことが重要である。ホスの厳しい環境では、たくさんの巨大生物が生息しているとは考えにくい。つまり、ワンパのエサはそうたくさんいるわけではない。だからこそ、天井からぶら下げるという保存法が重要になる。生物は食物を摂取して、それを体内で燃焼させて、生きていくのに必要なカロリーを生み出す。食べ物が十分あれば、体外に熱が奪われても、食物からその熱を補給することができるが、食物が十分ではないホスではそれは不可能である。つまり、少ないエサで生きていくたるには、体内から外に放出される熱ロスは最低限におさえなくてはいけない。また、体内で消費されるカロリー、すなわち基礎代謝も低く抑えることが必要となる。熊が厳寒状態で冬眠できるのは、基礎代謝を覚醒状態よりも低くすることで、カロリーのロスを減らすからで゜ある。これらの生物学的知見から、氷の惑星ホスで生息するワンパの体内の熱が、氷を溶かすほど大量に漏出することは考えにくい。
 ここで、もう少し、洞窟内を詳しく観察してみよう。ワンパがルークに襲い掛かるシーンで、ワンパの全身が写るが、ワンパの身長は洞窟の高さぎりぎりであることがわかる。いや、少しかがんでいる(図
3)。しかし、この映像では、先の折れたツララは一本も見えない。ワンパの身長を考慮すると、よっぽど注意しない限り、ワンパのでかい図体は、ツララにぶつかってツララは折れてしまうはずすなのに、折れたツララは一本もないのである。このことは、非常に不思議である。つまり、ここで見られるツララは何日も前にできたツララではなさそうだ。そうでなければ、何度も出入りする巨大なワンパの図体によって、ツララの何本かは、折れていなくてはいけない。つまり、これらのツララはごく最近できたということになる。
 氷の惑星ホスにおいて、しばしば零度を超える温かさになっている。この洞窟の映像から、そう考えざるをえない。さらに、それを支持する映像がある。天井からぶらさがったツララ以外に、地面から竹の子状に伸びた氷筍が観察される(図3、矢印)。氷筍はどのようにできるのか。それは、天井からしたたる水の雫が、少しずつ固まって氷筍に成長するのである。つまり、氷筍の存在は、天井から水の雫が落ちていることを示唆する。しかし、氷の惑星ホスにおいて、そのようなことが考えられるだろうか。
 もっとも考えやすいのは、地熱であろう。地熱といっても、湯気が噴出すほどの、高温は必要ない。地熱によって地面がある程度の温度であっても、ホスの地表近くの低温によって、かなり温度は冷やされるであろう。結果として、洞窟内の温度は、比較的気温の高い日中には、零度以上になるのである。そう考えると、ワンパの洞窟内での生活にも、納得がいく。ホスでの夜間の気温の低下は、著しい。十分な保温設備を有している反乱軍ホス基地においてすら、日没後は速やかに隔壁を下ろさなければ危険であるのだ。そうした厳寒の惑星であるから、いくら洞窟の奥深くといっても、ドアがついているわけであるから、保温効果は十分は得られないだろう。厚い毛などに覆われて保温効果に高い生物ワンパと言えども、生きていくのは難しいだろう。ホスに地熱があるとすれパば、洞窟内の温度はマイナス数十度にまで下がることはないだろう。そうした環境でもない限り、やはりホスにおいて生物(特にワンパのような大型生物)が棲息していくのは困難だろう。
 反乱軍エコー基地にはパワー・ジェネレーター(発電施設)が存在していたが、そうするとその発電は地熱ということになろうか。帝国軍のプロボットは、広大な惑星ホスの中から、いとも簡単に反乱軍の発電施設を発見する。それは、視覚情報処理による探査ではなく、熱による探査を行ったからではないか。熱探査であれば、長距離、広範囲の探査が短時間で可能であるだろう。地熱による発電を行っていたとすれば、高熱を発していたとしてもおかしくない。また、本来であれば、反乱軍の秘密基地の発電施設であるから、地下に作るべきであるのに、わざわざ地上に作った理由もあるはずだ。地熱発電による、放熱と蒸気排出の排出の必要性から、やむをえず地上に発電所が作られたとも考えられる。
 以上の理由により、ホスに地熱が存在している可能性は高いであろう。

  二匹のワンパ
 ESBには、二匹のワンパが登場しているといったら、信じられるだろうか。ルークを襲撃し、同じワンパが洞窟までルークを連れ帰った。そして、ルークがライトサーベルで腕を切り落としたワンパは、同じワンパだと思われていた。しかし、今回特別編の追加カットによって、ワンパの顔の詳細が観察可能になった。図4と図5を詳しく観察して欲しい。図4はルークを襲撃して洞窟まで連れ帰ったワンパ。図5はルークが意識を回復したときに、洞窟にいたワンパである。4のワンパは、図5に比べて毛の長さが長い。そのため、毛に隠れて角が見えない。角の長さと伸びている方向も微妙に異なる。4のワンパの角は前方に伸びているが、図4のワンパの角は内側に向いている。また、顔の形も少しは異なる。図4の顔は逆三角形だが、図5の顔は横長の楕円形である。4のワンパと図5のワンパは、明らかに異なる。少なくとも、同一個体とは考えられない。つまりESBには、二匹のワンパが登場していたのだ。
 その証拠は、他にもある。ルークが逆さ吊になり、ライトセーバーが手元にないことに気付いた時、遠くでワンパの鳴き声がする。その声を注意深く聞くと、それは一匹の鳴き声ではないように聞こえる。二匹の声がハウリングしているように。
 他にもある。ルークがワンパの手を切り落とした後、ルークは慌てふためいたような表情で、走って洞窟の外に出る。このルークの慌て方は異常であり、一つの謎でもある。なぜなら、これから日没をむかえようとする、ホスの雪原に自ら出て行くのは、正に自殺行為である。手負いとなったワンパが凶暴性を増して、再び襲い掛かってくる可能性はあるが、それはそれとしてまた戦えば良いだけのはなしだろう。しかし、もしこの洞窟に二匹以上のワンパがいたとしたらどうたろうか。二匹のワンパの鳴き声をす既に聞いていたルークは、自分が腕を切り落としたワンパ以外のワンパが、異常を察知して自分に向かってくることを危惧したため、慌てて外に出たとは考えられないか。さすがのルークでも、二匹のワンパに挟まれたら、無事に切り抜けられるかどうかわからないだろう。
 常識的に考えるなら、二匹のワンパはつがいということになろうか。ワンパはつがいで同じ洞窟にすむが、獲物を捕らえれ時には、行動をともしないようだ。極端に獲物が少ない氷の惑星ホスである。別々に行動して、索敵範囲を広げたほうが、より獲物を見つける可能性が増えるであろう。また、獲物を洞窟まで持ち帰るという習性も、つがいで生活しているため、相手にも獲物を与える必要性があるからであろう。生物学的に全く通りにかなっている。
 今までのワンパに対する知見としては、SW Official SiteのWAMPA の項目(http://www.starwars.com/creatures/wampa/)には「ワンパは一生のうちほとんどを単独で生活する」と書かれている。私の新説は、既知の知見と矛盾するが、いくつかの証拠からこの洞窟に二匹のワンパいた可能性が高い。ワンパが「一生のうちほとんとどを単独として生活」することが事実なのであれば、このルークが遭遇したワンパたちは、交尾のため一生のうちわずかしか共同生活をしない、極めて珍しい時期に、たまたま出会ってしまったということになるだろう。

     
図4 雪原でルークを襲ったワンパ   図5 洞窟内のワンパ

  カットされたワンパのエコー基地襲撃
 ワンパに関連して重要なエピソードがある。映画ではカットされたが、反乱軍エコー基地を一匹のワンパが襲撃するシーンが撮影されていた。その名残として、ホス基地の滑走路近くで、医療用ロボット2-1Bが、死んだトーントーンを診察しているカットがある(図6)。ハンが、基地に戻らない.ルークを捜索にでかけようとするところで、ハンが倒れているトーントーンをちらっと見る。
 トーン・トーンの犠牲は出したものの、反乱軍はワンパを生け捕りすることに成功する。そして、基地内の一室にワンパを閉じ込めておくことにした。そして、その部屋の扉を間違って開けないように、扉に危険を意味する黄色地に赤のマーク(放射線施設でみかけるマークとほとんど同じ)を貼り付けていおいた(図7)。その後も帝国軍の強襲にあい、反乱軍は壊滅的な打撃を受ける。エコー基地から撤退する反乱軍。ハンとレーア、そしてC3POも、脱出しようミレニアム・ファルコンへと向かうが、その途中3POは危険を意味するマークを剥がしてしまう。エコー基地ほ制圧した帝国軍。ワンパが閉じ込められていることを知らないストーム・トルーパーは、その扉をあけてしまい、大変なめにあうのだ。いかにも3POらしいウィットの効いた行動である。ワンパ・ファンの私としてもカットされて、非常に残念であるが、図5のように明らかにワンパが襲撃したという証拠が、映画内に残っている以上、SWユニバースの中で実際に起こった事件と考えるべきであろう。


図6 トーントーンを診察する2-1B
劇中では、画面のはじの方に一瞬しか
映らない


 図7 危険マークをはがす
C-3PO

    付記 ワンパの身体的特徴
 ワンパの毛は白い。当然、これは雪と氷に覆われたホスにおいて、保護色として機能するためである。そして、それは外敵から身を守るためではない。獲物に見つからずに、そっと近づくために、白い保護色の毛を有している。案の定、ルークもその保護色にひっかかり、全く気付かずに、ワンパの一撃を受けることになる。
 ルークを獲物として捕らえたこと。そして、ワンパ洞窟内に白骨化した骨が転がっている。その骨はトーン・トーンの骨であるようだ(「SW The Visual Dictionary」P60参照)。ワンパが肉食であることは明らかだが、ワンパの鋭く尖った歯は、ワンパが肉食であることを裏付けている。
 ワンパの長く伸びた尖った爪は、獲物を捕獲するさい強力な武器となるだろう。では、角はどうか。ワンパの角は、大きな弧をを描き、顔の内側方向に伸びている。これは、鹿などの角の生えかたと明らかに異なる。つまり、外側に向いていないということは、攻撃するための、武器としての役割を担っていないということである。実際、約3メートルもあるワンパの身長を考慮すると、ほとんどの獲物は、ワンパより身長が低いと予想される。そうなると頭部を相手の高さまで下げて攻撃するという、戦闘パターンは能率的でないことがわかる。では、この角の役割は何か。それは頭部の保護であろう。狭い洞窟に生活する身長の高いワンパにとって、洞窟の上面や氷柱に頭をぶつける危険性は常に存在している。いわゆるヘルメットの様な役割を、ワンパの角は担っている。
 ワンパの知的レベルについて考察する際、最も重要なのはワンパは二足歩行が出来るという点である。二足歩行は、惑星地球においては、ホモ・サピエンスのみが獲得しえた能力である。二足歩行によって手を使うことが可能になった人類は、急速に進化することが可能となった。ワンパは、完全な二足歩行をしているわけではないのだろうが、劇中の短い映像の中では、比較的安定した二足歩行をしている。ルークほ引きずる時の歩きも、しっかりとしたものであった。そして、何よりも驚くべきことは、ワンパは物を握ることが出来るということである。ルークに襲いかかろうと近づいてくるワンパは、手に肉のついた骨を握っている(図8)。まるで棍棒でも握るかのように。「握る」という動作は、手の骨、筋肉、関節が高度に進化していなくては不可能である。惑星地球において、物を握るという行為ができるのは、猿と人間だけである。肉をむさぼるシーンでは、肉を手に持って、器用に手を使っているのがわかる(図9)。少なくともワンパは、猿と同程度の把握機能を有していることになる。捕った獲物を、本能のまま食することなく、逆さ吊にして保存しておくという、複雑な方法をとることも、ワンパの知能が低くないことを示す。ワンパの顔を詳しく見ると(図4)、熊のような野獣というより、雪男のような顔つきであることがわかる。また、ラルフ・マッカリーの設定画(図10)を見ると、それは明らかに雪男のイメージである。ワンパは、単なる下等な肉食生物ではない。物をつかむことも出来るし、複雑な獲物の保存もする。人間にかなり近い、高等生物と考えられる。


図8 手を使い直立歩行するワンパ 

図9 手を上手に使うワンパ

図10 ラルフ・マッカリーの設定アート
雪男のイメージで書かれている