HOTH PRESS


ユー・ガット・メール
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オフィシャル・ページ(日本語)
 一ページしかないので読むところがないぞ。

オフィシャル・ページ(英語)
 結構、凝っています。
 オープニングも再体験できるます。
本屋さん大好き
 ニューヨーク(NY)のコンピュター・グラフィックスから、本物のNYの町並みに変わるオープニング。そして、街角の小さな書店。
 NYといえば書店。私のNYでの楽しみは、書店めぐりである。実際、大小無数の書店があるし、キャスリーン(メグ・ライアン)がやっているような小さな専門書の店もある。私は、SF図書の専門店「フォービドゥン・プラネット(禁断の惑星)」を必ず訪れる。「ストランド・ブックストア」という数十万冊の蔵書を誇る図書館並みの古書店も、絶対はずせない。ブロード・ウェイのCD専門店であるヴァージン・メガストアの書籍売り場は、実は映画関係の本が充実している。
 NYといえば書店めぐりである。そんな楽しみを知っているから、『ユー・ガット・メール』におけるキャスリーンの絵本専門店「ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」が、実にリアルに伝わってくる。彼女の本に対する愛情、店に対する愛情も、すごく良く分かる。
 『ユー・ガット・メール』は、本好き、書店好きにとっては、たまらない映画である。
 

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キャスリーンが経営する絵本専門店
「ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」

 『ユー・ガット・メール』はエルンスト・ルビッチ監督の『街角』のリメイクである。そして、『街角』の原題が「リトル・ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」である。

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 『ユー・ガット・メール』は、ニューヨークのアッパー・ウェストサイドを舞台にしている。
 実際のロケ現場に行きたい人は、ここをクリック

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 「ショップガール」ことキャスリーン
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「NY152」ことジョー
 

 メールだから言える言葉
 この映画の恋愛描写に関して、少しふれようと思ったが、筆者(樺沢紫苑)が恋愛を語るというのも、これほど似合わないものはない。それでも、敢えて少しだけ述べさせてもらおう。
 ジョーがキャスリーンに思いを寄せながら、最終的にキャスリーンの店をつぶしてしまうのはおかしいという批判もあるが、それは非現実的なセンチメンタリズムでしかないように思える。ジョー「NY152」というメール友達として精神的にキャスリーンを支えてきた。一方、彼には大書店の社長という肩書もあって、仕事は仕事として徹底的にやらなくてはいけないという立場がある。ジョーが「ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」をつぶさないように温情をかけるというのは、できそうでできないのではない。例えば仮説であるが、「フォックス書店」が進出しなければ、「ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」は安泰だったのか。おそらく、そうではないのではないか。小規模書店がつぶれて、大規模書店にのまれていくというのは、時代の趨勢であって、ジョーの胸先三寸にはかかっていなかったのではないかと思える。
 それともう一つ。『ユー・ガット・メール』で、描かれるのは人間の二面性である。世間的な顔と、本当の自分である。現代社会において、仕事に追われる生活をしながら、本当の自分を表に出していくというのは、すごく難しいだろう。
 インターネットの電脳世界、ハンドル・ネームしかない匿名の世界で、初めて表現できる自分というものがある。多分ネットをやっている人、メールを使っている人、このホームページを見ている人には、この気持ちは理解していただけるであろう。
 メールだから初めて言える言葉というのがある。普段は言いにくいことも、メールだと素直に言える。そんなことを普段から感じていれば、メールのやり取りで、本当の自分を表出していく「ショップガール」と「NY152」。すなわちジョーとキャスリーンの気持ちが、手にとるようにわかる。メールの世界だからこそ、二人はお互いに素直になれたのである。

 スターバックスで待ち合わせた二人。しかし、ジョーは自分が「NY152」であることを明かせなかった。それを明かすことで、本当の自分を表現できなくにるという怖れ、そして「ショップガール」との夢のような仮想現実を失うのではないかと思ったからであろう。
 人間の二面性というというテーマを強調するために、「ショップ・アラウンド・ザ・コーナー」がつぶれるという描写は不可欠であっただろう。センチメンタリズムではなく、人間描写というリアリズムが、『ユー・ガッタ・メール』には首尾一貫して描かれている。



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  メグ・ライアン最高
 『ユー・ガット・メール』はメグ・ライアンの代表作品になるであろう。彼女が最も輝いている作品が、『ユー・ガット・メール』である。

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 ジョーは大書店の経営者という責任を背負っていた

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 メールだから言える言葉がある
 しかし、最後にジョーはは自分の気持ちをことを直接伝える。

フォックスという名前
 ジョーがキャスリーンに初めて会った時、彼は「ジョーと呼んでくれ」と言い、巧妙にセカンド・ネームを名乗ることを避ける。もちろん自分がフォックス書店の者であるということを隠すためである。
 しかし、なぜこの映画の主人公は「フォックス(Fox)」という名前なのだろうか。すなわち、「フォックス」というユダヤ人によくある名前の人物をどうして主人公にしているのか。そして、そのユダヤ名を持つ主人公を、アメリカの代表的なWASP俳優であるトム・ハンクスが演じているのかということである。
 トム・ハンクスというキャスティングを無視して、『ユー・ガット・メール』を見るなら、主人公ジョー・フォックスはユダヤ人としか考えられない。まず、NYという舞台。ニューヨークは別名「ジューヨーク(Jew York)」と呼ばれるように、ユダヤ人人口が多い。NY市の人口の約30%がユダヤ人なのである。「フォックス」という名前は、「20世紀フォックス」を設立したウィリアム・フォックスがユダヤ人であったように、ユダヤ人としてポピュラーな名前である。
 したがって、NYを舞台に「フォックス」という名前の人物が出ているのだから、彼はユダヤ人であるとしか考えられない。そして、ジョー・フォックスは功利主義を追及するやり手経営者である。「ベニスの商人」のシャイロック以来の、ステレオタイプのユダヤ人像を、ジョー・フォックスは踏襲している。
 では、なぜこの典型的なユダヤ人役を、WASPであるトム・ハンクスが演じているのか。私の推測では、シナリオ段階では、ジョー・フォックスをユダヤ人のイメージで描写していたにもかかわらず、キャスティングり段階で、その微妙な設定を無視して、トム・ハンクスとメグ・ライアンという一流役者の華やかな組み合わせを採用してしまったのではないだろうか。その結果として、ユダヤ人役をWASPが演じるというアンバランスが生み出されることになったのだろう。
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メグ・ライアンの笑顔
  最高 ! !
 これだけの表情が出せる彼女であるから、のほほん茶の宣伝は、明らかに手抜きだ。

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 トム・ハンクス(WASP)演じる
ジョー・フォックス