banner.jpg (9078 バイト)

 アナザヘブン   オフィシャル・ホームページ
 あまりに凝りすぎていて、かえって見ずらいぞ。
「ラスト30分の悪意の哲学、驚いた人97%、その謎が解けた人5%」
「驚いた人97%」でも、何か驚くような展開が、少しでもあっただろうか?
「謎が解けた人5%」というが、謎が放置されてしまっている。
 冒頭の「脳のスープ」のシーンはショッキングである。しかし、なぜ、脳を取り出して、それをスープにしなければいけなかったのか。ナニカに乗り移られた千鶴が料理が上手だから、というだけでは何の説明にもならない。また、ばか力の謎についても、説明がない。
 未来から来た悪意の塊。「驚き」というよりは、「唐突」である。どうやって未来から来たのか、そんなに簡単に未来から現在に来ることができるのか。前半で、数多くの謎が提示され、「これはおもしろくなるぞ」と期待させておいて、十分納得のいく説明が与えられない。
これでは、欲求不満だけが残ってしまう。
 結局ナニカの謎解きは、かなり唐突で、横溝正史の小説で、最後に今まで登場していなかった人物が、突然犯人として登場するようなものである。UFO、宇宙人的な伏線は張ってあったのに、未来から来るという伏線は全くなかったからである。
 結局、『ヒドゥン』の日本語版の域を出ていない。『ヒドゥン』を見た人にとっては、次々と体を乗り移る怪しげな生命体の存在は、以外でも何でもない。
 マナブが笹本(松雪泰子)が乗り移られているのかと本物なのかという、猜疑心にとらわれるシーンはかなりおもしろい。しかし、これも『遊星からの物体X』の焼き直しなのだ。
 柏原崇が、ビルを飛び越えるところは、『マトリックス』だしね。
 そんな感じで、『アナザへブン』にオリジナリティというものが、全く感じられない。こんなパロディ小説で、金を稼げるとは、ボロい商売である。
 マナブを演じる江口洋介は、それなりに頑張っているのだが、ナニカがマナブにひかれた理由は、マナブの中にあった悪意であろう。彼の盗聴マニアとしてのエピソードがあり、映画的には説明されてはいるが、江口洋介のイメージと少し合わないような気がする。マナブの中にある悪意が、今ひとつ伝わってこないのだ。
 朝子役の市川実和子は、かなり良い味を出している。不思議な魅力と色気を漂わせる不思議な女優である。これからが楽しみである。
 松雪泰子は、個人的に全くタイプではないのだが、『アナザへブン』の松雪は、良い感じに仕上がっている。笹本がマナブを誘惑するシーンは、やっぱりおもしろい。

 まあ、少し辛口に書かせてもらったが、原作と脚本にやや難があると思われるが、俳優陣はかなり頑張っている。、音響や効果音、音楽も良く、雰囲気を出している。絵作りにも気配りがあり、ワンカット、ワンカットが非常に印象深い。
ichikawa.gif (42769 バイト)
 朝子役の市川実和子
 (記者会見の写真から)