Xメン | オフィシャル・ページ(日本語) テキストが表示されるスペースが小さくて、見づらいぞ。 |
予想外の映画。予想外に特撮がしょぼい映画、というわけではないが、全く予想もしなかった人種的テーマが「Xメン」には含まれていた。単なる娯楽映画を期待して「Xメン」を見に行くが、娯楽映画としての期待は大きく裏切られる。『マトリックス』をしのぐという宣伝文句は大嘘である。しかし、予想外の収穫、すなわち意外なところでユダヤ映画に出会えたということである。
冒頭、「1944年、ポーランド」この字幕で場面がどこかがすぐに分かった人は、歴史に詳しい。ポーランドとは言っても、当時はドイツ領になっているわけだが、アウシュビッツ収容所などのユダヤ人強制収容所の多くは、今のポーランドにあった。したがって、「1944年、ポーランド」は、ユダヤ人収容所を連想する。案の定、そうであった。人々が胸につれる黄色いダビテの星。縦縞の収容所の服が、ここが間違いなくユダヤ人収容所であることを説明している。 |
|
世界二百カ国の代表が集まるサミットの会場が、エリス島という設定も絶妙である。エリス島は、アメリカ移民局があった場所である。ヨーロッパからアメリカへ渡ってきた移民たちは、まずこのエリス島に上陸して、移民の手続きをとったのである。ニューヨークといえば多くの人が自由の女神をイメージするが、フランスから贈呈されただけの自由の女神よりも、実際に移民業務を行っていたエリス島の方が、はるかにアメリカらしいといえる。 言い換えると、外国人がアメリカ人の仲間入りを果たす場所、その象徴がエリス島なのである。それをミュータントに置き換えると興味深い。すなわち、ミュータント登録法案はこのエリス島でのサミットの重要な議題の一つであった。かなわち、ミュータントを人類の仲間とするのか、敵とするのかを決める場所が、エリス島なのである。 つまり『Xメン』における差別問題に、ユダヤ人を重ねあわせると、ユダヤ人はアメリカ人の一員であり、仲間となりえたのか。あるいは、ユダヤ人はユダヤ人であり、やはりアメリカ人としてなじんでいないし、未だに差別の対象になっているのか。そんな、問題が提起されているように思える。 唯一はっきりのとしないのは、プロフェッサーXではなく、敵のボスであるマグニートがユダヤ人であるという点である。つまり、悪役としてユダヤ人が登場している。『Xメン』が親ユダヤ映画か、反ユダヤ映画か、どっちかはっきりとしない。しかし最後に、改心とはいかないまでも、変身能力を有するミスティークが、ケリー議員になりすまし、ミュータントの登録法案を却下させたことから、マグニートが人間との融和の方向に歩みだした可能性が示唆される。アメリカ社会にあけるユダヤ人の協調というかたちで、映画は幕を閉じて、『Xメン』が親ユダヤ映画であることがはっきりとする。 |