シミは、なぜ殺されずに生かされていたのか? タスケン・レイダーは、残虐で知られていた。実際、クリーグ・ラーズたち農夫は、誘拐したシミを救出に向かったが、30人中4人しか生きて戻れなかった。その残酷なタスケンが、シミを殺さないで生かしておいたというのは、大きな謎である。 |
セリフによって説明されるわけではないが、『クローンの攻撃』を見た人の多くが、「なぜ、シミはタスケンに殺されなかったのか?」あるいは、「シミの誘拐が、タイミング良く起こったのか?」という疑問を抱いただろう。つまり、ルーカスは観客に、「なぜ、シミはタスケンに殺されなかったのか?」という疑問を呈示していると言えるだろう。 シミを拷問したのは、アナキンをタトゥイーンにおびき寄せるため。そして、シミの死に直面させるということだ。シミの拷問による苦痛の声が、アナキンに届いて、アナキンは母の悪夢を見た。そして母を救うために、タトゥイーンに向かう決意をする。 これと同じ描写が、『帝国の逆襲』にある。レイアとハン・ソロを捕らえたヴェイダーは、ハン・ソロに拷問を加える。レイアに拷問を加えるのなら、反乱軍の秘密を聞き出そうという目的があったかもしれないが、ヴェイダーがハン・ソロから聞きたいことなど、何もないだろう。実際、尋問もなくただハンを痛めつけるだけ。これは、ルークをクラウドシティーにおびき寄せるための、餌だったのだ。 ルークは、フォースの未来予知の能力を使い、仲間の危険、仲間の苦悶の声をダゴバの修業中に聞き、修業ほ途中で止めて、ヨーダの制止も聞かずにクラウドシティーへと向かう。タトゥイーン行きを間接的に邪魔したオビ=ワンと、ヨーダ、二人の師の姿もオーバーラップする。 拷問によるおびき寄せ。ヴェイダーは自らが経験した苦い体験を、応用して自らの息子をおびき寄せたということだ。 |
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『帝国の逆襲』のこのシーンを見直していただければ、この二つのシーンは意図的に重ねて描かれていることがわかる。 シミの誘拐が、シディアスの仕組んだ陰謀であるかは、『クローンの攻撃』の段階では仮説にすぎない。ただ、『エピソード3』で、シディアスがアナキンをダーク・サイドに誘惑する時の材料として効果的に使われるということによって、間接的に証明されるだろう。 |
シディアス(パルパティーン)は、アナキンに食指を伸ばしている。パルパティーンとアナキンの面会シーンを見れば、それは明白である。将来のダーク・サイドへの誘惑の伏線として、分離主義者の不隠行動に一致させて、アナキン獲得へのシディアスは行動を開始した。アミダラの護衛にオビ=ワンを推薦したのは、パルパティーンである。アミダラと一緒にタトゥイーンへとシミ救出に向かう。パルパティーンは、ここまで想定したいのか、いなかったか? 『クローンの攻撃』にオーラ・シングが出るという噂があった。そして、そのオーラ・シングは、シディアスの命を受けてタスケンのシミ拉致作戦を影で操る役であったという噂もある。結果として、『クローンの攻撃』にオーラ・シングは出ていなかったが、タスケンによるシミ誘拐事件がシディアスの陰謀であるというコンセプトは、映画に反映されているのではないだろうか。 |
すなわち、シディアスはドゥークー経由で、ジャンゴ・フェット、そしてジャンゴ経由でザム・ウェセルという二人の賞金稼ぎを利用していた。 シディアスは全銀河を自らの手中に入れようという、大きな陰謀を企んでいる。当然、映画で描かれている以外でも、いろいろな陰謀や巻き込み工作をしているということである。その大きな野望を抱いているシディアスが、たった二人の賞金稼ぎしか雇っていないということは、考えられないだろう。何人もの賞金稼ぎを雇い全銀河を舞台にして、種々の陰謀を進めているのが、当然というものだ。ただ、シディアスという存在自体は、トップ・シークレットとである。シディアス自身が、賞金稼ぎにまみえる機会は、極力減らさなくてはいけない。したがって、賞金稼ぎに指示を出すのは、ドゥークーであり、ジャンゴなのである。 シディアスがオーラ・シングを手先として使ったという設定はカットされたものの、誰か別の賞金稼ぎを動かしたという可能性も十分あるし、シングの名前は出ていないがタトゥイーンにいた賞金稼ぎであるシングが関与していないという証拠もない。 砂漠の盗賊タスケン。シミを誘拐して拷問するだけで大金が手に入るとすれば、こんな楽な仕事はない。喜んで、シディアスの手先である賞金稼ぎに協力するであろう。 なぜ、バウンティ・ハンターが自らシミ誘拐を企てなかったのか? それは、偽装工作。今、この段階ではタスケンの仕業にしておきたかった。真相は、EP3で明かされる。シディアスの仕業と見抜かれては、アナキンのダーク・サイドへの勧誘材料にはならない。 この偽装工作は、『新たなる希望』でストーム・トルーパーがジャワの虐殺を、タスケンの仕業にしたという描写に、重なってくる。 |
(2002年7月23日更新) |