泡盛について

泡盛とは?

 沖縄に行ったら、オリオンビールと並んでまず飲まない人はいないであろう泡盛。
今まで何となく飲んできて、どんな酒なのか考えたことがない、という人いませんか?


 泡盛は15世紀の初めの琉球王朝時代に、シャムからラオロンとして伝わったものが元で、300年くらい前から名前が定着したと言われています。現在でもタイの田舎に行くと、ラオ・カーオという名の親戚にあたる酒が手に入ります。
 元来沖繩では酒のことを「サキ」と呼んでおり、一説によると粟で「サキ」を造っていたから「粟盛」となって、これがあとに「泡盛」に転じたと言われますが、アルコール度数を泡を盛って(アームイ)計ったからという説も有力。度数の高い酒ほど粘り気があり、泡が立つからです。
 泡盛は現在、原料米にタイ米(長粒米)を使用しています。その理由は、麹やモロミの温度管理が容易にできるため、他の米にくらべて麹として扱いやすく、アルコールの収量が多いなど、泡盛好適米としての条件をそなえた特徴をもっているからです。
 酒税法上は「焼酎乙類」(本格焼酎)で、一般の米焼酎は白こうじ菌を使用しているのに対し、泡盛が、学名をアスペルギルス・アワモリ(又はサイトウイ菌)という黒麹菌を使う点が最大の違いです。黒麹菌の重要な働きとして、蒸し米に生えてクエン酸をつくることがあり、この酸は雑菌の増殖を押え、独特の風味を生みます。気温の高い沖縄県で、季節に関係なく泡盛が作れるのはこのためです。
 泡盛の生産は近年伸びているのですが、泡盛製造業者47のうち約4割は従業員が4人以下、つまりほとんど家族だけでやっている零細企業なので、貯蔵スペースや手間の問題から古酒を作れない酒造(カタログもなく、ラベルも手張りだったりする。)もあります。他県と違って輸送コストがかさむ為、首都圏や関西で入手できる銘柄も、沖縄本島で買うよりは割高なのが普通です。経営があまり順調でない所もあるようですが、これからも個性ある銘柄を作り続けてもらいたいものです。
 味とコストパフォーマンスなどから考えた、あくまでも個人的なおすすめは、常磐、久米島、萬座、玉友甕仕込み、宮の鶴、八重泉樽酒、菊乃露VIP8年、請福10年など。最初は3〜5年物あたりから色々と試してみて、自分好みの銘柄を見つけてはいかがでしょうか。

 もちろん、古酒だけが最高な訳ではなくて、新酒でも十分美味しい酒はたくさんあります。世の中には、何と100年ものを飲んだことがあるという幸せな人もいるようで、羨ましい限りです。しかし、かつての戦争で泡盛業界も壊滅的な打撃を受け、古酒の甕だけでなく昔ながらの麹菌も多くは失われてしまいました。

 そのため、現在では泡盛酵母、黒麹菌とも沖縄県酒造組合連合会製造のもの(実際は多くを九州から取り寄せている)を使っている酒造が多いようです。とはいえ、水の違い、使用米の違い(砕米かまる米か)、貯蔵方法の違い、仕注ぎの有無と方法、そして温度管理も含めた酒造の技術的な差などにより、泡盛の味は実に多彩です。麹と酵母の組み合わせが少ないため、酒造ごとの味の違いが分かりにくいと言われますが、自分好みの味の基準となる銘柄を決め、いくつかを飲み較べると、個性の違いがはっきりしてきます。
 選び方として、タンク貯蔵よりは甕貯蔵の方が、年数は同じでも熟成の度合いが深い傾向があります。これは、荒焼の甕は呼吸をするからで、アルコール度数は揮発によってやや低くなるものの、ガス臭が消えてエキス分は濃縮され、味はこなれてまろやかになります。瓶貯蔵でも例えば新酒を数年寝かせれば、アルコールと水が混和することによって飲みやすくはなりますが、蒸溜している=既に酵母が存在しない、ということなので、まして密閉された瓶の中で甕と同じように熟成が進むはずはありません。
 にもかかわらず、泡盛については『瓶貯蔵でも熟成する』といった説があることも確かです。これはあくまで個人的な意見ですが、その理由として考えられるのは、瓶の中にわずかに残された空気の層によって(あるいはキャップがしっかりと締められておらず(特に3合瓶)、密閉されていなかったために)熟成感が出たか、あるいは上記のアルコールと水の混和が熟成と誤解されたことが言えると思います。
 したがって、10年古酒の瓶を買って5年置いたから15年古酒になるというものではありません。また、甕の土に含まれる鉄分などの成分は刺激臭を中和するとも言われているのですが、残念ながら現在のところタンク・瓶貯蔵の方が主流なのです。どれがそうなのかは、自分の舌で見分けましょう。

 実は泡盛の銘柄の中には、各酒造のパンフレットには載っていないものも数多くあります。それらは大きく分けると、
 1)飲食店などのオリジナルボトル
 2)空港やみやげ屋でしか売っていないもの
 3)酒造から「桶買い」した酒を業者が独自に販売しているもの

の3つがあります。
 この中で2)は明らかに泡盛をよく知らない観光客向けのもので、割高な値段設定・受けを狙った名前・変わった瓶や容器に頼りがちなことなどが特徴です。当然のことながら当たりに出会う確率は極めて低いため、自分で飲むために買うなら避けた方が無難です。
 1)は、ほとんどは既製の銘柄のラベルを張り替えただけですが、中にはオリジナリティ溢れるものもあるので難しいところです。3)も同様に、一概によい悪いとは言いにくい面もありますが、同じ名前の銘柄でも年数によって、中身は違う酒造の酒だったりもします。

 最近では古酒の人気が増してきたことから、多くの酒造が古酒の販売に力を入れつつあります。けれども中には、単に売れなかった瓶を保管しておいた年数分、熟成期間に上乗せしている銘柄や販売店があることには注意が必要です。十分な熟成期間を置かずに瓶詰めされた泡盛を、その後例えば20年保管したからといって20年古酒として高値で売るのは言ってみれば詐欺のようなもので、消費者だけでなく、きちんとした熟成の管理をして古酒を販売している酒造に対しても失礼な行為です。

もっとも、一口飲んだだけで新酒を混ぜているのが明らかな「熟成古酒」や、酒税の納付額と出荷量がつり合わないことから考えて、まっとうな年数表示をしていないと思われる酒造もいくつか知っていますが、ここでその名前を記すことは残念ながらできません。結局のところ対抗策としては、消費者が自分の舌で判断して、不誠実な酒造の銘柄を買わないようにすることぐらいしかないのです。

 なおついでに言うと、私は泡盛業界において、瓶(特に3合瓶と一升瓶)の再使用が徹底しているのはすばらしいことだと思っています。リサイクルよりもリユースの方がコストもかからず、環境負荷が少ないからです。特に処分場のない離島では、余計なゴミを出さないことがより重要になってきています。その意味では、いたずらに処理できないゴミを増やし、匂いも酒に移っていいことなしの、ペットボトルでの出荷をしている酒造は信用していません。
 飲み方の基本かつ究極はストレートにチェイサー(追い水)であるというのが、酒飲みの一致した意見です。ロックにするのも、あくまで酒を冷やすため。なるべく氷が溶けて味が薄まらないうちに飲んでしまいましょう。
 特に、出来の良い古酒を水割りにするのはもったいない気がします。でも独特の香りが苦手という人は水を少し足し、まだきつければシ−クワシャー(ヒラミレモン)で割ってみてください。生を絞るのが一番だけど、果汁100%の缶詰めでもOK。ここから泡盛にはまった人も多いです。ちなみに水で割る場合は、ほとんどの泡盛が硬水で作られているため、割り水もそれに合わせた方が相性がいいようです。
 現在では、かつてのような焦げ臭い、あるいは油臭いといった泡盛はほとんどありません。昔懲りたという人も、もう一度試してみては?
 もし、それでもあなたの買ってきた泡盛が気に入らない場合、泡盛にだけ許される必殺技があります。それは「ブレンド」です。個性の強すぎる銘柄も、いくつか合わせることでトゲがとれ、飲みやすくなる場合があるのです。ちゃんと飲めるものを作るには多少の経験と勘が必要ですが、捨てるくらいならやってみましょう。また、果実酒にするという手もあります(ただし、少なくとも30度以上のものでないと充分にエキスを抽出できない)。梅酒は結構いけると思いますが、黒糖は残念ながらミネラル分が多過ぎ、しかもすぐ溶けて酒が濁ってしまうため、氷砂糖の代わりにはなりません。
コーレー(辛い)グース
 その他、カクテルに使うという方法もあり、これには20〜30度の新酒が向いています。有名なところではうりずん、なんた浜、ヤッチーなど。メジャーなカクテルのベースを泡盛に変えてみたり、あるいはパッションフルーツやゴーヤジュース、さんぴん茶やうっちん茶などで割ってみるのも一向でしょう。牛乳割りも一部に熱狂的な愛好家がいます。そこまでやっても駄目だったなら、もうラフテーなどの煮込み料理に使うか、コーレーグースにしてしまいましょう(島唐辛子を漬け込んだもので、そばにかけたりする)。
 沖縄以外でも、泡盛をたのむと、甕からカラカラに注いで出す店が結構あります。それを見て自分も家に欲しいと思った人もいることでしょう。泡盛の醍醐味はウイスキ−等と違い、自分で古酒を作れること。あなたも挑戦してみませんか?と言いたいところですが、一から作るのは正直なところ素人には(私自身も含めて)難しいでしょう。
 一番問題なのは甕をどうするかという点です。最高だと言われるシャム南蛮甕・その他の粗焼の甕共、匂い移りがなく漏れのない良い物を探すのは一苦労です。買ったらまず水を張ったうえで数ヶ月〜半年ほど雨ざらしにし、漏れのテストをしますが、そこで仮に漏れがなくても、実際によいクースが生まれるかどうかは熟成させてみなければ分からないからです。
 したがって最も現実的なのは、既に泡盛の入った状態で売られている甕を入手することでしょう。1斗以上の大物の場合も、航空便が無理なら船便という手もあります。甕には3〜5年物の古酒が入っている場合もありますが、下述の理由から、100%の古酒を作りたいのであれば中身を入れ替えることをお勧めします。その際には、前に入っていた泡盛の香りが移ることがあるので、あまり性格の違うものは入れない方がいいでしょう。貯蔵する際の温度に特に決まりはないようですが、なるべく冷暗所に置いて、たまにかき混ぜた方がいいと思います。そして甕が呼吸をするということは、匂いも吸うということ。あまり黴臭い所はやめたほうがいいかもしれません。
 泡盛には古来、、最も古い「親酒」の活力の衰えや汲み出しによる量の減少を補うため、それに準ずる年数の古酒をごく少量つぎ足す「仕注ぎ」ということが行われていました。古くは8年以上貯蔵したものについて、古酒と呼ぶことができたといいます。
 しかし以前の県の基準では、三年以上熟成の泡盛が全体の半分以上を占めるものについて古酒と明記できる(逆に言うと、五割近くも表示年数と違う酒を混ぜてもよい)ため、単純に量を増やすために基準を利用している酒造も少なからずありました。つまり10年古酒と書いてあっても、実際に10年熟成させたク−スが何割使われているのかが消費者には分からず(極端に言えば、10年1割・3年4割・5割が新酒でも「10年古酒」と表示できたということ)、酒造の良識に任せるしかなかったのです。それにそもそも、何年に蒸留したのか、そしていつ瓶詰めしたのか明記されたものもほとんどありませんでした。
 このような、品質保証を曖昧にして消費者を混乱させる基準は廃止して、もっと商品の情報を公開するべきではないか?ということを、このサイトの開設以来書いてきましたが、2003年にようやく泡盛の古酒表示の基準が厳格化され、〜年古酒と瓶に表示できるのは、100%その年数貯蔵した古酒のみとなりました。ただし、単に「古酒」と表記するだけなら、従来どおり「三年以上熟成の泡盛が全体の半分以上」という基準を満たしていれば可能です。また、例えば「10年30%、5年30%、3年50%」というように、ブレンドに使用した年数をラベル裏に表記することは認められています。ただし仕注ぎについては、1回のブレンドのように明確な基準を設定することが難しかった為か、考慮されていません。

   この改定が行われた当初は、各酒造の準備期間が短かったこともあって、それまで古酒として売られていた商品の多くが一時的に店頭から消えることになりました。それまで8年、あるいは10年古酒として売られていた銘柄が「古酒」シールすらなくなって新酒扱いで売られたり、また別の銘柄では、20年古酒と書いていながら、実はその年数の古酒は数%しか含まれていなかったことが分かったりもしました。これは、それまで消費者に対して誠意ある説明表記をしていなかった酒造が、少なからずあったことが一気に明るみに出た形となったわけです。

   しかし現在、基準改定から数年を経て、古酒表記が復活して再び販売が開始された銘柄も増えてきています。その分製造コストの問題や、古酒人気の高まりもあって、全体的に随分と相場が上がってしまいましたが…。ともあれ、瓶詰め年月日の記載も義務づけられた今、ようやく各酒造の泡盛を同じ土俵で評価できるようになった訳ですから、今後も魅力的な泡盛が生まれてくることを期待したいと思います。

   
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