放送を語る会

NHK次期経営計画の考え方への意見

放送を語る会

(1)NHKが5か年で重点的に取り組む放送サービスについて

 「ETV2001」事件裁判判決が明らかにした政治家への屈服、証言した職員の人事処分など、政治権力から自立したジャーナリズムの精神に反するNHKの行為が批判されました。また「NHKの報道は政府より」という根強い批判があるのも事実です。日本が海外での戦争に加わる危険がある時代に、政府の行為を監視する報道や、過去の侵略戦争の責任の問題など、NHKでは事実上タブーとなっているテーマにジャーナリズムの精神から挑戦すべきです。
 さまざまな放送サービスが列記されていますが、どのようなサービスも、自主・自立の姿勢を欠いては意味がありません。自主、自立を貫き、テーマにタブーを設けない放送を目指す姿勢を改めて明記すべきです。
 また新任の経営委員長は、インタビューの中で、番組制作でコスト意識を持つよう強調しました。公共放送として、安易にコスト意識を持ち込まず、たとえ視聴者が少ない番組でも、ジャーナリズムと放送文化の発展のため必要な番組(たとえば教育テレビの番組群、「ETV特集」など)を維持し続ける意思を失わないようにして下さい。

(2)衛星放送のあり方について

 NHKは、放送の多様性を確保するため、また視聴者主権の観点から、政府のチャンネル削減の要求に安易に応ずるべきではありません。
 NHKのBSハイビジョンは、ハイビジョン特集をはじめ、優れた実験的な企画を実現しています。これはBSハイビジョンチャンネルの放送内容が全体に貧弱な中で貴重な存在といわねばなりません。もし削減に応ずれば、空いたチャンネルが市場原理に委ねられ、商業主義的利用に充てられるのは火をみるより明らかです。
 NHKは、保有するチャンネルを、自社のものとのみ考えず、視聴者市民との共有のチャンネルと考えるべきです。今後衛星3波の中に、たとえば市民メディアの作品発表の場を設けるなど、チャンネルを市民に開放する方策を視聴者市民の声を聞きながら研究し、実現すべきと考えます。

(3)経費の節減と5か年の重点投資について

 経費節減と人員削減については、業務量が増えている中で、現場に余裕がなくなり、放送の質の低下が懸念されますし、職場ではサービス残業の増大など苛酷な労働強化で「うつ」の職員が増え、若い職員の退職も目立つときいています。NHKは節減、削減ばかりをいうのではなく、放送のために必要な人員と予算についてむしろ毅然と主張すべきです。  地上デジタル化に伴う投資については、国策で推進されている事業に巨額の受信料を投入することに疑問が拭えません。NHKは、地上デジタル化に必要な経費のうち、国に要求すべきものは要求するといった態度をとるべきです。
 一方で、視聴者の状況を最もよく知る放送機関として、政府に対し、地デジ移行への対応が困難な視聴者への援助の提案を含め、移行スケジュールを強行しないよう提言を行なうべきです。

(4)受信料公平負担の徹底に向けた取り組みや“還元”の考え方について

 受信料収納に一定の経費を必要とすることは、視聴者市民の理解によって、NHKを維持するという受信料制度の性格上やむをえないものと考えます。
 「訪問集金」の廃止は、視聴者市民が直接に批判や要求を行なう機会を奪い、視聴者の肉声からNHKを遠ざけるもので、再検討すべきです。
 民事手続きの拡大も問題です。そうする前に、NHKに対する視聴者市民の権利が何一つない、という状況を改革すべきです。視聴者は、NHKの経営委員を選ぶことも、会長を選ぶことも、番組審議委員に立候補し、または推薦することもできません。
 この無権利状態のままで、強制徴収を進めることには強く反対します。
 黒字の還元も、視聴者の負担軽減は意味がありますが、これが支払い義務化とセットの値下げであれば賛成できません。
 私たちは、自立した放送機関を維持するための一定の経費負担は必要と考えます。むしろ値下げは安易にすべきではなく、放送内容の充実、制作プロダクションの制作条件、地位の向上、生活困窮者への減免の拡大、市民メディアへの援助、NHKで働く人びとの待遇改善、などに充てるべきです。