放送を語る会

放送を語る会レポート

2006年110日(水)

 061213日(水)、午後7時から渋谷勤労福祉会館で第23回放送フォーラム「“政治介入”はどこまで解明されたか~番組改変めぐるNHK裁判高裁判決を前に~」が開催されました。
 講師は
VAWWNETジャパン共同代表の西野瑠美子さん。『政治介入はどこまで解明されたか?』と題された西野氏作成のレジュメにそって、これまでの裁判で審議されてきた中身、経緯について実際に裁判で用いた資料を使いながら、詳しく説明してくださいました。会場に配布された資料やレジュメに添付されている資料は、初めて見るものばかりでした。特に、被害者・加害者の証言や米山リサ教授の発言などをカットした結果、空いてしまった穴を埋める形で01年1月27日に秦教授のインタビューを入れた経緯を示す資料には驚きました。また、改めて当初44分の番組が40分に変わることは前代未聞の出来事だと思いました。
 VAWWNETジャパンとしては「法廷の過程をつぶさに追い、半世紀前の戦時性暴力が世界の専門家によってどのように裁かれるのか見届ける」という番組の趣旨に沿った番組が制作・放映されると信頼して、取材に協力したにも関わらず、法廷隠しとも言うべき番組内容に「改編」されてしまったことに対して、西野氏の「こんな番組なら作らないほうがまだまし」との発言が胸に刺さりました。もし私が今回の番組に制作者の一員として関わっていたら、協力していただいた取材者の好意を無視し踏みにじる行為をしてしまったと思い悩むと思います。西野氏の怒りはもっともだと思いました。
 また講演中の西野氏の発言の中で「沈黙や黙認はしたくなかった」という言葉に共感します。01年に提訴を決意する前、西野氏は体力も時間も使い長期化が予想される裁判であること、裁判で真実をあきらかにすることが難しいこと、
NHKの現場を追い詰めることにもなるという周囲の声などを聞き、提訴することを悩んだそうです。しかし、ここで沈黙してしまえば、暴力による言論弾圧や権力に迎合する報道機関の自主規制を許すことになってしまうと思い直し提訴に踏み切ったそうです。私は07129日のNHK裁判控訴審判決を傍聴し、自分なりにこの裁判の意味を考えたいと思います。

 最後に質疑応答がありました。会場から多くの意見・質問が寄せられましたが、私は九州・大分からいらっしゃったNHKOBの男性の方の発言が印象深いです。その方は「今回の事件のことを話題にすると問題には一切触れないムード、避けて通るムードが少なからず職場内に存在する」とおっしゃっていました。番組制作の現場が無責任でいいはずはなく、このような調子だとまた同じ事件が起こりかねないと危機感を強くしました。外から運動することも大事ですが、やはり内部からの運動を活発にしていくべきだと思います。また、西野氏の「戦わなければなにもできない」という言葉の通り、
NHK問題の深刻さに気づいたら、何か少しでも行動する(シンポジウムに行く、ゼミで議論し合う、NHK裁判を傍聴する)ことがまずは大事だと思いました。