放送を語る会

NHK大阪放送局 局長 崎本利樹

NHK問題大阪連絡会 代表 河野安士

政治報道番組についての申し入れ

 貴局におかれましては、公共放送機関としてその役割を担い日夜努力されていることに敬意を表します。放送は国民にとって最も身近なメディアとして社会的に大きな影響力をもっています。このことをふまえ、貴放送局が関わって放送される橋下徹市長率いる「日本維新の会」(以下、「維新の会」という)等の報道のあり方について意見を述べます。「社会保障と税の一体改革」法案をめぐる民主、自民、公明の3党による強引な国会運営、原発再稼動問題、領土問題など内政、外交とも惨たんたる政治ともいえる状況下で、多くの国民が民意を反映した政治を求めてさまざまな分野で運動を強めています。こうした政治状況のなか、橋下氏は大阪府・市政の枠を超え、国政全般にわたって極端な政策をいい続けることでメディアへの露出を続け、国民の関心を集めようとする動きがみえます。NHKを含めたメディアの多くが「維新の会」の言動を追い、その主張、政策をまともな検証もなく報道を続けています(別紙参照)。
 橋下氏と「維新の会」の主張には教育界を始め法曹、労働、行政、市民団体など各界各分野からさまざまな意見表明や行動が起こされています。国内にとどまらず海外の一部メディアからは橋下氏の「日本帝国の残虐行為を否定する傾向」を「地域でナショナリズムが高まっている時に近視眼的で実に物騒な挑発だ」と警告しています。(英誌『エコノミスト』15日号)こうした国内外の批判的な動きを貴局で報道されることは極めて少なく、さながら橋下氏と「維新の会」に広報の場を提供しているのが実態です。NHKのこうした報道に多くの視聴者が不信をつのらせています。
 9/19/2に実施された大手メディアの世論調査によりますと衆議院比例区の投票先に、「維新の会」23.8%、自民党21.7%、民主党17.4%との結果が報道されました。組織力では民主党、自民党とは圧倒的な差がある「維新の会」が高い支持率を得るのはメディアがいかに特別扱いで報道しているかを物語っています。918日午後845分の大阪放送局ニュースでは尖閣諸島問題をめぐる中国での反日デモが取り上げられました。被害を受けた日系企業、中国外務省報道官、関空に帰国した日本人、大阪商工会議所などの次に橋下市長が政府の対応を批判するインタビュー場面が報道されました。このように政治や社会の動きのニュースのなかで、さほど必要性のない橋下市長へのインタビュー場面が頻繁に登場します。こうした報道は視聴者にはまるで「救世主」の如き印象を与えるのではないでしょうか。「政治は独裁」と公言する橋下氏の言動は「大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査」の中で、職員の思想信条の自由を侵害する項目を含んでおり人権と民主主義への挑戦です。NHK[国内番組基準]の前文では、基本的人権を尊重し民主主義精神の徹底を図る・・と規定しています。こうした規定を基に本質を捉えた報道が求められます。
 加えて、放送法に定められている「不偏、不党、真実及び自律」の立場を堅持した番組づくりに努められることを強く申し入れるものです。

以上