放送を語る会

NHK会長 福地茂雄 様

〃 副会長 今井義典 様

〃 放送総局長 日向英実 様

「ETV2001事件」最高裁判決について、公正、公平な報道を要請します。

                                                 20086月10日 

                                  放送を語る会

拝啓。多くの困難な課題を抱えるNHKの運営に当たっておられること、まことにごくろうさまです。
 さて、2008年6月12日、「ETV2001事件」裁判の判決が下されます。NHKでは当然この判決について報道されると思いますが、NHKの公共的役割に期待する視聴者団体としての当会は、判決当日の報道が、放送法に則った公正で公平なものであるよう、特に要請するものです。
 昨年1月の東京高裁判決についてのNHKのニュース、とくに21時の「ニュースウオッチ9」は、NHKの一方的な見解を伝え、視聴者市民の批判を浴びました。このニュースでは、NHK幹部が政治家の意図を忖度(そんたく)して番組を改編したという、NHKの存立にかかわる判決内容に力点をおかず、「判決は政治的介入はなかったとした」と一方的に強調しました。あまつさえ、インタビューで政治家安倍晋三氏と中川昭一氏を登場させ「政治家の介入がなかったことがこれではっきりした」などと主張させました。
 しかし、判決は、むしろ政治家の干渉がさまざまにあったことを示唆しており、提出された証拠だけでは直接の介入を認めるに足りなかったと述べているだけで、「介入がなかった」と断定しているわけではありません。また、判決は、NHKの幹部の改編が、編集権を濫用し、編集の自由を自ら放棄したと厳しく批判しています。しかし、ニュースはこうした判決内容についてほとんど紹介せず、原告側の主張も伝えませんでした。
 このような報道は、視聴者に裁判について間違ったイメージを抱かせ、それを固定することになり、責任は重大です。

 放送法は、第三条で、放送番組の編集に当たって、「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定めています。これは、裁判の報道で、たとえNHKが当事者であっても貫かれなければならない原則です。
 判決の結果がどうあれ、この裁判の報道に当たっては、NHKの利害の主張に偏るのではなく、もう一方の当事者の取材も行うことはもちろん、識者の多面的なコメントを織り込むなど、公平で客観的な報道を行なうことを強く求めます。そのことが同時にNHKにたいする信頼回復の一助になるものと私たちは考えます。


 なお、この「ETV2001事件」については、いまだに視聴者市民の間でNHKに対する不信感が解消していません。インサイダー取引の調査も重要ですが、この事件についても、第三者機関で調査を行なうなど、真相の究明に本格的に取り組まれることを、この際、併せて要望します。                         敬具