放送を語る会

NHK会長 福地茂雄 様
〃 副会長 今井義典 様
〃 放送総局長 日向英実 様

自民党礒崎議員のNHKスペシャル攻撃に毅然とした対応を要請します

2008年6月9日
放送を語る会

 前略。日頃、困難な状況でNHKの運営に当たっておられること、まことにごくろうさまです。
 さて、ご承知のように、さる5月20日、参議院総務委員会において、自民党礒崎陽輔議員は、NHKスペシャル「セーフティネット・クライシス」について、これが「政治的に公平ではない」と、まことに理不尽ともいうべき攻撃を行いました。
 NHKの自立した放送を求め、期待する多くの市民から、この攻撃にNHKが屈することはないか、という懸念の声が数多く上がっています。長く放送問題に取り組んできた視聴者団体としての当会は、この状況を見過ごすことができず、このほど礒崎議員に抗議の見解を送りました。別紙に付しましたので、ご多忙の中まことに恐縮ですが、ぜひご高覧くださいますようお願いします。

 国会答弁において、今井副会長は、この番組が政治的に公平性に欠けているとはいえない、と正当にも主張されました。しかし、礒崎議員の質問はあまりに不見識で、報道機関としては本来もっと厳しく反発し、毅然としてはねつける、という態度が望ましいのではないでしょうか。 
 私たちは、今後の番組制作にあたって、この種の攻撃にいささかも影響を受けることがあってはならないと考えます。 たとえば、今後、医療の取材で、自民党議員の圧力を恐れて、「民医連系の病院の取材を控えよう」などという動きが局内でもし生じるならば、番組が政治の圧力、干渉に屈服するもので、論外というべきことです。
 ジャーナリズムの使命の核心にあるものは、国家の政治が果たして国民に幸福をもたらしているか、監視し、検証し、批判することです。その際、声を上げられず苦しんでいる弱い立場の人びとの側に立つことは極めて重要です。もしNHKがこの機能を失ったら、その存在意義を根本から問われるでしょう。

 「ワーキングプア」や今回の「セーフティネット・クライシス」などの番組に、政府与党筋から繰り返し「貧困や格差の内容に偏っている」との批判がありましたし、今後も不当な圧力が予想されます。しかし、膨大な放送時間のなかで、こうしたテーマの番組はまだ極めてわずかな時間量しかありません。今、日本の政治と国民生活の根本問題である貧困と社会福祉の実態を取り上げた番組の量は圧倒的に不足しています。
 NHKは政治家のためのものではなく、受信料を納入する視聴者市民に基礎をおく放送機関です。この気概をもって、毅然として重要なテーマを取り上げ、自立した放送を貫かれるよう心から願うものです。