放送を語る会    

第17回 放送を語る集い

理想のNHK”へ改革案

過去最高、100名近い参加で成功

             

       斎藤貴男氏         新井史子氏        醍醐聰氏                             
         
     野中章弘氏        松田浩氏

「みんなで語ろう”理想のNHK“」をテーマに、第17回「放送を語る集い」が8月26日、東京都内で開かれ、これまでで最高、100名近くの参加者が熱心に議論を交わした。
 基調講演はジャーナリストの斎藤貴男氏。米軍再編は日本がアメリカ軍の世界戦略に組み込まれる極めて大きな問題でありながら、ほとんどのメディアがその本質を指摘していないと批判した。また、6月10日にNHKが放送した番組「日本のこれから 米軍基地」に自らが出演した経験を基に、「番組は決して悪くはなかったが、直前の二夜連続の番組は政府広報のようであり、そのガス抜きと感じられた」と語った。さらに、制作現場の自己規制について、「やりたいことやったからといって、首になるわけじゃないと思う。
 もし本当に首になったとしてもジャーナリストとして活躍する道はある」とエールを送った。

 東京都の教育現場で「日の丸・君が代」の強制と闘っている新井史子氏は、「国民の思想に働きかける手段として、国は教育と放送に的を絞って圧力を強めている」と指摘し、「教員にとっての教育の自由と、放送現場における編集権の保障は共に譲ることのできないものだ」と訴えた。
 続いて東京大学教授の醍醐聰氏が、竹中総務相の私的懇談会などの「NHK改革」論議が、公共性の理念や視聴者参加について言及していないなどの問題点を鋭く指摘したほか、アジアプレスの野中章弘氏は、市民の声をNHKへ届ける手段の一つとして、NHK会長の候補者を市民が推薦する運動を提起した。元立命館大学教授の松田浩氏は、市民が成熟した主権者として成長するよう手助けするのが公共放送の役割。視聴者をお客様として扱う最近のNHKの傾向は誤りだと強調した。
 会場からも「ETV問題での不当配転について地元局へ申し入れ書を持って行ったが、集団では会えないとすげなく断られた。最近NHKの番組は、「純情きらり」とか、ごっつうええやないか。受信料払わなあかんで、と話していただけに残念だ」「ある番組で、安倍氏の靖国参拝を取り上げようとしたが、政治部に気兼ねして結局取りやめになったと聞いた」など切実な声が出された。

 放送を語る会からは、NHKの現場での聞き取り調査などを基に作成した「提案“可能性としてのNHK”へ向かって」について報告がおこなわれた。タブーを設けない多様な放送の実現や制作者の権利保障を盛り込んだ内容に、参加者からは「市民のためのNHK改革の羅針盤だ」と好感をもって受け止められた。

<会場でのアンケートより>
* 大変有意義でした。公共放送の理念と制度は区別して考えた方がいい、という野中さんの指摘、すっきりしました。松田さんも仰るとおり、語る会の提案にもある「編集権」の問題が大変重要と思います。特に思うことは、編集権を現場に持たせることです。そのために私たちは何をすればよいか考えていきたいです。

* 「“可能性としてのNHK”へ向かって」の内容はきわめて重要な提案と思います。これを「NHKの現場」「メディアの現場」及び視聴者がどう共有し、議論と運動の出発点にできるかがカギだと考えます。

* NHKの番組が良いものが出てきた、というか良い番組しか見ていない。(NHKスペシャル、ようこそ先輩、教育TVにも良い番組あり。)面白くないのはニュース番組。水害があればくり返し水害のみ。地震があればそれのみ、くり返し同じ事しか放映しないのは何故でしょうね。

* 受信料を支払う市民の権利の受け皿として、視聴者からの番組提案窓口を作り、良い提案を積極的に番組として制作するシステムが必要と思います。現在、アイデア・意見は視聴者センターへ提案できますが、「番組提案」については保証されていません。

* 世の中は今のテレビやNHK放送に不満をもっているように思います。この会がもう少し広い人たちに声をかけて、NHKや他の報道機関が国民の声を取り上げるようになってほしい。