放送を語る会

2006413

参議院議員
山本 順三 様

                                                                        放送を語る会

公 開 質 問 書

330NHK予算審議における質問について~

 330日参議院総務委員会で行われたNHK事業計画及び予算審議の際、山本議員とNHKとの間で展開された質疑応答に、私たちは驚きと強い怒りを禁じえません。
 山本議員は、番組「ETV2001」への政治介入の事実が争われている「NHK裁判」での永田浩三NHKチーフプロデューサー(当時)の証言が、NHKの公式見解と違う,と指摘され「どのようなケジメをつけるのか」とNHKにせまりました。これに続く質問で朝日新聞社内の処分の例をあげておられることから、貴職の発言が永田氏の処分を求めていることは明白です。
 また昨年12月に証言した長井暁氏についても言及され、「NHKの対応は後手に回っているのではないか。甘いのではないか」「しっかり内部調査をすすめ、NHKの自浄能力を期待したい」と永田氏とあわせて二人の人事処分を要求しておられます。

 当会は、放送の自主・自立が、わが国の民主主義の発展にとって重要であるとの思いから、放送メディアの動向の研究、調査を続けている視聴者団体です。その立場から、山本議員の今回の質問には重大な問題があると考え、強い抗議の意思をこめて公開質問状をお送りすることとしました。
 以下の各項目に対し、ぜひ誠意ある回答をお願いしたいと存じます。

1、法廷での証言は、良心にのみ基づいて真実を述べるという宣誓によって始まります。もし証言者の属する企業が、証言内容を理由に処分または処分の威嚇を行うならば、証言者の内心の自由、良心の自由は侵害され、重大な人権侵害となります。同時に、真実を追求する裁判の進行を妨害する結果を招きます。 
 万一、NHKが貴職の要求に応じて処分を行うならば、その処分は「思想および良心の自由は、これを侵してはならない」という憲法第19条に違反し、ほかならぬ「公共放送」が人権を侵害することになります。山本議員が国会という場でそのような要求をされたことは重大な問題だと思いますが、この点いかがお考えでしょうか。

2、貴職のように、NHKに影響力を行使しうる政権与党の議員が、とくに犯罪を犯したわけでもないNHK職員、しかも番組制作に従事する職員の処分を要求されたことは、自立的であるべきNHKへの重大な干渉であり、放送の不偏不党、自律を保障した放送法の精神に違背する疑いがあります。この点どうお考えでしょうか。

3、また山本議員は、3月22日の東京高裁での永田浩三氏の証言を、NHKの公式見解とはちがうということ以外に根拠を示すことなく否定されました。永田証言が真実であるかどうかは、今まさに裁判で争われており、係争中です。永田氏が反論できる保障のない国会という場で、しかも国民にたいして一方的な見解を述べられたことは、証言者の権利を侵害すると同時に、立法府にたいする司法の独立を侵すおそれがある行為ではないでしょうか。

 以上、自由と民主主義の名を党名にもつ党の国会議員としての、見識あるご回答を期待するものです。