毒身帰属の会
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「独身貴族もいいかもしれないが、いつまでもチョンガーだと体に毒だぞ。セックスや出産が婦人病の予防になるように、男も結婚すると成人病に罹りにくくなるんだ。生物として子孫を増やすようにできてるんだから、その機能を使わなけりゃ、バランスは崩れるわな。まだ若いからって成人病のことなんか考えてもないだろうし、いつまでもモテると思ってるんだろうが、その間にも独り身の毒が回ってるんだぞ」

 身を固めないと社内的に不利だと言っても昇進に無関心の私には効き目がないため、無知なうえ脳に鬆(す)の入った上司はこういう事実無根の説を振りかざしてあれこれ見合いを勧めてきたりしたのだが、それで結構、私は一生独身貴族なんですよと、むしろはっきり自覚したのだった。無知で脳に鬆(す)の入った部長にも一分の真理があるとすれば、独身は自分のアイデンティティを自分で支えているから、ときどき自家中毒を起こす。その意味で独身は毒身なのだ。

 毒身者の存在の根拠は自分自身にある。毒身者は、毒身者自身という単位に帰属している。そういう単体のネットワークとして、われわれは毒身寮を立ち上げた。入居資格は、
 安住の地を求めない者
 生活者としてプロである者
 独りで死ぬことのできる者
 群れない、縛らない、甘えない、の三原則がピンと来る者。
これらの言葉に胸騒ぎを感じる人なら誰でも歓迎する。時空を超えて今、共存しよう。

志貴島 信徳

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※このページは、星野智幸の小説『毒身温泉』(講談社刊)の一部を形成しています。従ってフィクションです。

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