一部では何年も前から行われてきているこの方法がある時テレビ番組で紹介されたことにより、私のところにも多くの問い合わせがありました。

 そこで、本項を書くことにしたのですが・・・ここで最初に知っておいて頂きたいことは、「LSTR 3Mix-MP法は、決してオールマイティーの魔法ではない。」ということです。つまり、「麻酔よ、さらば!」とか「どんな虫歯でも、歯を削ることなく治る!」・・・というようなものではないということです。

 まず、この“LSTR 3Mix-MP法”というのは、「3種混合の抗菌薬剤(3Mix)+操作性を高めるための医薬品添加物(M)+溶剤(P)」を使用することで感染歯質の無菌化を図り、それによって歯質自体の削除量を必要最低限に抑えようという目的で行われる処置だというふうにご理解頂ければいいと思います。

 また、“LSTR 3Mix-MP法”で使用する抗菌薬(抗生物質)などは単独使用の内服薬としてのみ厚生労働省の認可を得ているものであり、このような歯科における使用については認可されていないため、使用による全責任は歯科医師が負うことになる・・・というのが大前提の治療法でもあります。したがって、当然のことながら健康保険における“LSTR 3Mix-MP法”についての点数設定はなく、これを自費(自由)診療として行うか、保険治療の一環として行うかは・・・基本的に、そのドクターの判断によることになります。

 以上のような前提のもとに「感染歯質は完全に除去しきる」というのが基本であった従来の虫歯治療が、この“LSTR 3Mix-MP法”を用いることにより、ケースによっては以下のようなことが可能になってきているわけです。

@従来なら抜髄(神経を抜くこと)ケースだったものも、その歯髄を保存できる可能性が高くなった。

A従来なら麻酔下でなければ処置のできなかった歯も、麻酔をせずに処置できる可能性が高くなった。

B難治性の根尖病巣の治療にも、効果を発揮する。

Cその他

 だからといって、全ての歯を抜髄から救えるというものではなく、また全ての処置が無麻酔できるというものでもありません。当然のことながら、他の術式同様、“LSTR 3Mix-MP法”もケース(適応症)を選びます。そして、本法に限ったことではありませんが、予後についても100%の好結果を保証するものではありません。

 私としては、本項を通してみなさんに「現在の“LSTR 3Mix-MP法”というのは決してオールマイティーではないということを知って頂いた上で、処置をお受け頂きたい。」ということをお伝えしたかったわけです。

 結局のところ、医療行為というのはその知識と技術とに基づいたドクターの裁量・・・ということになるわけですが、とにかく、この“LSTR 3Mix-MP法”というものが、一時期のホワイトニングのような一時的な流行に終わらず、確実にきちんと消化された手法として広く定着してゆくことを祈るばかりです。


以下、2008年5月13日の「院長の今日のひとこと」 より

 一昨日の日曜日・・・番組の名前がわからないのですが、3Mix-MP法を行っているという仙台の歯科医を取り上げた番組を偶然に見ました。

 しかし、3Mix法の開発者である岩久正明先生(前新潟大学文部科学教官・大学院教授)もご自身のサイト内に「最近の新聞・テレビ報道は間違いです!!」という書き出しで書いておられるとおり、この方法は決して万能ではありません。

 それを、あたかも魔法のくすりであるかの如く報道するというのは・・・事が医療に関することであるだけに、如何なものかと思います。

 ちなみに、私は、3Mix-MP法を決して否定しているのではなく、この3Mix-MP法というのは 「決して、どんな症例に対してもオールマイティーな魔法の薬ではない!それどころか、むしろ応用範囲は非常に限られている。」と言ったほうが正しいということを申し上げているわけです。

 ついては、番組をご覧になった方々があの偏った内容に翻弄されてしまわれないことを祈ると同時に、もし3Mix-MP法による治療をお受けになる場合には、その内容についての説明を十分にお聞きになった上で、これを正しく扱う歯科医の処置をお受け頂きたいと思う次第です。