最近、「いい医者を紹介している」 といった名目の本や雑誌、或いはウェブ・サイト(ポータル・サイト)などをよく見かけますが、それらの信憑性は・・・はたして、どれほどのものなのでしょうか!? このようなものも含め、本項では歯科医院の広告宣伝(の現状)に対する私の考えを述べてみたいと思うのですが、その前に・・・医療機関の広告宣伝については法律による規制があるのだということを、先ずはみなさんに知っておいて頂きたいと思います。 たとえば、歯科における標榜科目としては、基本的に 「歯科」 「矯正歯科」 「小児歯科」 「歯科口腔外科」 の4つのみが許されています。 言いかえれば、これら以外の科を標榜している場合 (例えば、審美歯科やインプラント科といった表記を医院外にしている場合) は、それ自体が既に法律に抵触しているわけです。 ちなみに、私自身はこのような法規制云々以前の問題として、医療機関というものは本来営利目的の派手な広告宣伝などは慎むべき業種だと考えており、またそのような業種だからこそ、国は患者という立場にある人々をまもるために法律による規制をかけているのだと理解しています。 こういったことを前提に、以下はあくまでも私個人の私見だということを前提にお読み頂きたいと思います。 尚、平成30年6月に施行された法的規制の詳細については、厚労省ホームページ内 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について ) のページをご参照頂ければと思います。 また、こちらもご参考までに・・・ 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて(平成30年8月10日) も、掲載されています。 さて、最近の一部医療機関からは倫理観や良識といったものが消え失せてきており、違法、或いは違法ギリギリの広告や宣伝をしているところが増えてきているように思います。 そして、その最たるものがインターネット上のウェブ・サイト (歯科医院のホーム・ページや歯科医院紹介のポータル・サイトなど) ではないかと私は思うのですが、否応なしに誰の目にもとまる駅構内の看板などとは異なり個人が自身の意志で閲覧するという性格を持つインターネット上のウェブ・サイトについて、厚生労働省はこれまで広告に当たらないとの判断をしてきたようですが、それも先述の通り平成30年6月より考え方を大きく変えて来たようです。 確かに、患者さんの立場からすれば容易に必要な情報を得られるインターネットは、歯科医院選びの貴重な情報源であることには間違いないでしょうし、歯科医師側から見てもインターネットを通じて患者のみなさんにいろいろな情報を提供できるというのは素晴らしいことだと私も思っています。 しかし、そういったメリットがあるだけに、いい加減なサイトには大きな問題があると私は思うのです。 法律による規制以前に、医療人(医療機関)側の良識による自主規制ができるのならそれが一番いいとは思うのですが、一部の医療機関はどうも違う方向にいってしまっているようで、そういった医療機関には自主規制などとても望めそうにありません。 また、最近では歯科医院紹介サイト(ポータル・サイト)といった類のものも増えてきていますね。 私自身も、当サイトを登録しているところはあるのですが、これにもいろいろと問題があると思っています。 まずは、そのようなサイトの大半が、歯科医院側からの自薦登録であるということです。つまり、ほとんどのサイトの場合、「医院名」や「診療の特徴」などを記入する登録欄があり、それぞれの記入欄に必要事項を書き込むだけで簡単に自院を登録できるわけです。 言い換えると、その歯科医院を紹介しているサイト(サイト運営者)の大半は、しっかりとしたリサーチをした上で責任を持って紹介しているものではないということであり、そのようなサイトに紹介掲載されているからといって、必ずしも優良な歯科医院であるとは限らないとくことです。 そのサイト内で他院より大きく取り上げてもらうには別途料金を支払う・・・というシステムのサイトもあり、中には完全有料掲載サイトもあります。こうなると、もう完全にコマーシャル・メッセージのサイトであるとしか言いようがないと私は思うのですが、みなさんはどのようにお思いになるでしょう!? これについては検索エンジンにおけるバナー広告などについても同様のことが言えるわけですが、実は、その検索エンジンで上位にランキングされているというのにも、SEOなどというちょっとした裏技が使われていることがあるのです。 このSEO対策については、私のところにも日々いろんなところから 「月々○円で、貴サイトを検索エンジンの上位にランキングさせます!」 といった内容のダイレクト・メールやダイレクト・コール、ダイレクト・eメールなどが頻繁に届きます。 本当にそんなことが可能なのか・・・IT関連の仕事にしている私の友人に訊いてみたところ、ある程度までは可能だとのこと・・・こうなってくると、何が本当なのか、何を信じればいいのか、わからなくなってきますね。 ちなみに、ネット上には 「口コミ サイト」 なるものもあるようですね。 もちろん、まともな書き込みが大半だろうとは思いますが、これも穿った見方をすれば、私自身が自院に通院している患者さんのひとりになりすまして自院に都合のいい内容を書き込むことはいくらでもできるわけです。 一部の本や雑誌、新聞などに掲載されている情報にも問題があるように思います。 まずは、「名歯科医100選」 的な本について・・・そこに掲載されているものについては、私の目から見て確かにいい歯医者だと思える歯科医院もあるのですが、逆にプロである私の目から見た評価と大きくギャップのある内容のところもあります。 したがって、こういった書籍やポータル・サイトについても掲載されている情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、何を基準とした評価なのか、誰の目から見た評価なのか、それは本当に信頼するに値する評価であり情報であるのか・・・ということを十分に見極めた上で、掲載されている情報をご利用頂きたいと思います。 また、週刊誌などの歯科に関する特集記事に付随する広告にも、けっこう微妙なものがあります。 (この週刊誌と広告代理店の名称は、あえて本項では伏せておきます。) 大手週刊誌によるこのような特集記事の中で「専門の医療機関として紹介」された歯科医院に対して、一般読者はこの出版社がきちんとしたリサーチをした上で掲載した医療機関だと受け止めても何の不思議もない・・・というより、むしろそれが自然のように私は思うのですが、いかがでしょう。 勿論、私はこの週刊誌に広告を出された医療機関の実態を存じませんし、中には立派な先生もいらっしゃることと思います。しかしながら、少なくともそこに10万〜80万円の広告料が支払われていることは厳然たる事実であり、こういった類のものは・・・広告然とはしていないものの、とどのつまりが 「広告」 なわけで、広告然としていないだけにかえって危険な要素を含んでいるように私には思えてなりません。 歯科医院紹介サイトから新聞や本に至るまで、当院に掲載依頼をしてきたその担当者は全員が異口同音に 「患者のみなさんに、いい歯科医院をご紹介したい。」 と説明してくれるのですが・・・であればよけいに、自社できちんと調査し、その基準と根拠を明確にした上で、責任をもって 「患者のみなさんに、いい歯科医院をご紹介」 するのが本筋なのではないかと私は思うのですが、みなさんはどのようにお考えでしょう。 そういえば、ミシュランの 「レストラン・ホテル ガイド」 では、その調査方法や評価と格付けの基準が明確にされているだけでなく、その後の追跡調査も行われていると聞き及んでいますが、前述のようにその対象が医療機関(歯科医院)である場合、少なくともこれ以上に明確で厳正な基準と評価方法がとられているべきだと考えるのは、私だけではないと思います。 さて、ここまで長々と書いてまいりましたが、結局のところ本項で私がみなさんにお伝えしたかったことは下記の4点に集約されてきます。
ところで・・・最後になりましたが、2008年7月21日に本項について以下のようなメールを1通頂戴しましたので、ご紹介しておきたいと思います。
発信元のメールアドレス以外は、文中の○○○○の部分に苗字(たぶん)のみがローマ字で書かれていただけで、このメールをどのような方が送ってくださったのかはまったくわからないのですが、内容から推察するに歯科医師の方からのように思えます。 もちろん、これについては定かではありませんが、この方が歯科医なのであれば・・・私とは歯科医院の広告宣伝についての考えが一部分異なりはしますが、この先生はこの先生なりに真剣に歯科医療と向き合い、そして懸命に取り組んでおられるのだということが文面から伝わってきます。 ついては、私とは異なる貴重なご意見をお送りくださったことへの御礼のメールも送信させて頂いたのですが、そもそも私が本項を通してみなさんにお伝えしたいと思っているのは医療機関側の考え方云々ではなく、あくまでも上記の4点なわけで、大半の歯科医師は患者のみなさんに対してしっかりとした情報提供をしようとしているのですが、中には残念ながら節操のない歯科医もいるために、歯科医院の広告宣伝にはいい加減なものがけっこうあり・・・ここのところを、みなさんにはしっかりと見極めて頂き、何といってもあなたご自身のお口をおあずけになる歯医者なのですから、広告や宣伝に惑わされることなく本当の意味での 「いい歯医者』」を選んで頂きたい・・・ということに尽きるのです。 ちなみに、頂戴したメール本文内の紺字に変換させて頂いた部分などについては私もまったくの同意見なのですが、本項では「誇大広告をしている」、或いは「患者さんを騙そうとしている」ような医療機関が存続できずに淘汰されてゆくか否かといった医療機関側の視点で見た広告宣伝を問題にしているのではないのです。これは、法規制以前の問題として、ひとりの医療人として、医療機関側が広告宣伝に関する軸足をどこに定めてきたか・・・の結果にすぎないのですから。 医療機関側にではなく患者さん側に立って歯科という科の特殊性を考えた場合、「誇大広告だった」 「だまされた」 とみなさんが気づかれたときには「時、既に遅し!」といった事態になっていることが多く・・・みなさんがそのような状況に陥られることを懸念するが故に、そのような目に遭っていただきたくないと思うが故に、あえて私は本項を書いたわけです。 参照: 「歯医者による歯医者選び」 |