みなさんご存知のとおり、8020運動というものを歯科医師会では全国的に展開しています。「80歳になっても、20本の歯を持ち続けていよう!」という意味なわけですが、本来は80歳でも28本全ての歯を持っていて頂くべきですね。
 「もう80歳なんだから、指の2〜3本くらいは抜けてても仕方がない。」なんて、誰も考えませんでしょう!?なのに、歯なら「何本かは、失くしてしまっていても仕方がない。」・・・なのですか!?そんなの・・・どう考えても、おかしいですね。

 当院を開院して40年に近づいてきていますが・・・いまだに、歯科において最も難しいと思うのは「患者さんのブラッシングに対する動機づけ、モティベーションの向上」です。言い換えれば、ブラッシング以外のことは全て・・・私たちデンタル・スタッフの努力でなんとかできるということです。

 励ましたり、褒めたり・・・時には叱咤激励のようなことになりながらも、いろいろな角度から皆さんにブラッシングの大切さとそのテクニックをマスターして頂くべく、単に「やっている」というのではなく、結果として「できている」というブラッシングによって健康なお口を確実に取り戻して頂き、そしてその健康な口腔内環境をいつまでも維持管理し続けて頂くことを目指して、スタッフと共に努力し続けてきてきているのですが、そんな私達の想いが患者さんに十分に伝わらず、空回りに終わってしまうことも決してないわけではありません。そんなときは・・・やはり、ガックリときますね。

 しかし、動機づけに成功し・・・その結果、見違えるほどの健康な口腔内環境を取り戻してくださり、それからは定期健診にもきちんと来院され、いつ拝見しても健康な状態を保ち続けてくださっている方々もたくさんおられます。
 そんな患者さんの笑顔を見れたとき・・・それは、歯医者として最も充実感を味わえる瞬間なのですが、その上「先生のおかげで・・・」なんてお礼の言葉を頂戴したときには、これはもう「歯医者冥利につきる」というものです。

 とにかく、歯医者だけがいくら頑張っても(プロ・ケアだけでは)歯科治療は決して成功せず、そこには患者さんご自身のブラッシングによる協力(セルフ・ケア)が不可欠なのです。当院では、全ての患者さんにブラッシング指導をさせて頂くのですが、残念ながら一部には、ブラッシングを「させられている」という認識でおられる方もあるようです。
 誰もが持っている「自分の歯で食べ続ける」という権利を最後まで行使して頂く・・・そのための方法がブラッシングであり、決して、いやいや義務感からして頂くようなものではないのですが・・・。

 そもそも、ブラッシングは・・・
    誰のためにするの!?
            とりもなおさず、あなたご自身のためです。
    何のためにするの!?
            いつまでも、ご自身の歯で食べ続けていただくためです。
    そして、当面の課題としては・・・
            きちんとした処置を、我々歯医者にさせるため・・・でもあるのです。
 つまり、もしあなたがいいかげんなブラッシングしかしていらっしゃらないのであれば・・・あなたは既に、とても大切な権利を自ら放棄してしまっておられることになる・・・ということになるのですね。

 「今」噛めるように・・・ではなく、「これからもずっと」 噛み続けていただくために!・・・このフレーズは、歯科医師としての私の信念であり、基本姿勢でもあります。また、現代の歯科医療に求められているのは、「その患者さんの、少なくとも10年以上先を見据え、見越した上での治療」だと、私は確信しています。患者さん側における特別な理由などがない限り、その場しのぎの治療内容などというものがあってはならないということです。

 そして、きちんとした処置が完了した時点からは・・・今度はその健康な口腔内環境を維持し続けるの為のメインテナンスが最も重要なこととなってきます。その大切な鍵を握ってくるのが、日々のブラッシングと状態に応じた定期健診ということになってくるわけです。

 そう・・・歯ブラシという最大の武器を手に、みなさんには歯周病と戦い続けて頂きたいと思います。

 尚、健康な口腔内環境を維持管理し続けるための良好なサイクル図を下に示しておきましたので、参考にして頂きたいと思います。


 口腔内に病気をつくらないために、常に健康な口腔内環境を保ち続けるために、きちんとした治療をし、きちんとした管理をする歯医者を選び、そして大いに利用して頂きたいと思います。