この段階では、側方歯の交換が行われます。ここで言う側方歯というのは、糸切り歯と二本の小臼歯のことです。
ここで、永久歯の生えてくる一般的な順番を書いておきます。ついでに、乳歯は前からABCDEと呼び、永久歯は1243567というふうに呼ぶのだということも覚えておいて頂ければと思います。
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幼稚園 年長
〜小学校低学年
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中学年〜高学年
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高学年〜中学校
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上顎
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抜けてゆく乳歯
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A
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B
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D
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E
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C
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生えてくる永久歯
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1
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6
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2
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4
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5
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3
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7
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下顎
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抜けてゆく乳歯
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A
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B
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C
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D
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E
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生えてくる永久歯
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1
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6
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2
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3
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4
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5
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7
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4
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3
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5
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さて、ここで注目していただきたいのは、Cと3番とが交換する時期の上下顎でのちがいです。一般的に、下顎は3・4・5(あるいは、4・3・5)の順に生え変わるのに対して、上顎は4・5・3の順で生え変わります。八重歯になる要因は、ここにあるのです。顎にスペースが足らない場合、最後にしわ寄せを受けるのが上顎の場合は最後に生えてくる糸切り歯だということになり、生えるスペースが無く、外に放り出されてしまったケースが八重歯なのです。下顎の場合は、通常5番にしわ寄せがきますから、この第二小臼歯は内側へと押し出され、舌側に倒れることになります。しかし、この第二小臼歯の状態は八重歯のように昔の人々の目には直接触れなかったためでしょうか、「八重歯」とか「鬼歯」というような俗称がありません。
つまり、生え変わった前歯と新たに生えてきた第一大臼歯とで前後を決められたそのスペースの中において、3・4・5の三歯は生え変わるのです。また歯は、乳歯、永久歯を問わず、後ろから前へ押してくる性質を持っています。だからこそ、歯と歯の間が開いてきたりしないわけです。永久歯でも同じなのですが、特に乳歯の段階で、例えばDとEの間に虫食いをつくった場合、虫歯で崩壊した部分はEが後方から詰め寄ってきます。すると、そのEに沿って生えてくる6歳臼歯も、当然「前寄り」に生えてきてしまうことになります。このことによって、3・4・5の三歯の生えてくるスペースが狭くなってしまい、虫歯さえつくらなければ正常な位置で交換していたはずの永久歯が、歪んで生えてくるということになったりするのです。
この時期に私たちがよくする処置に、“DISKING” という処置があります。
下の写真は、ちょうどこの時期の子供の下顎の模型写真で、1〜7は永久歯、CDEは乳歯で、Cは3と交換し、Dは4と、Eは5と交換するわけですが、ここでまず見て頂きたいのはそれぞれの歯の大きさ(幅)で、C<3、D≦4、E>5となっているところです。
単純に考えて、C+D+E=3+4+5であればこの部分の交換はスムーズに行われることになるのですが、3本同時に交換するのではなく前述の順番で交換してゆきます。そこで、常に正しい位置に永久歯を生えさせるよう誘導をしてやる・・・という方法のひとつが、この“DISKING”という処置なのです。例えば、写真の順に交換するとして・・・最初に交換するのはDと4ですね。Dと4の大きさがほぼ同じだとすると、Eは5よりも大きいわけですから4は少し前方に生えてくることになります。次に5が交換してくれればいいのですが、3から交換する場合もあります。すると、3の生えるスペースがないことになるのです。そうならないために、Eの4に接する部分を5の幅だけ残してカットしておくのです。そうすれば、3の交換がスムーズに行われるというわけです。
3が最初に交換する場合も同様で、先ずDの幅を小さくしておいてやり、Dの交換時にはEの幅を減じておいてやるわけです。 少々話がややこしかったかもしれませんが、要は「あの時にこうしておいてやりさえすれば、今このようなことにはなっていなかったのに・・・」というような後悔をしなくていいようにしていなければいけないということであり、そのための手法を私達歯科医はいくつか持っているということです。
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