色の選択 |
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上下共に前歯が一本も無い方の場合、年齢や肌の色などから選択してきますが、一部に歯が残っているような方の場合は、その歯の色を目安に選択することになります。左は私の持っている色見本のごく一部ですが、この他にもいくつもの色見本があります。 |
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入れ歯用 |
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クラウンやブリッジ用 |
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色あわせ |
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前歯の(前歯を含む)クラウンやブリッジの場合、現代の歯科では既製の歯を使うことはまずありません。ひとつひとつ、その状況に合わせて作ってゆくのです。そして、上顎の真ん中(中切歯)二本を同時に作るのならまだしも、一本だけを作るというようなときなどはその歯と対比する歯が隣にあるわけですから、これはもう完全に色が一致しているというところまで合わせておかなければなりません。ですから、総入れ歯に規制の歯を使うときとはちがい、はるかに微妙な「色合わせ」という作業が要求されてくるのです。 余談になりますが、よく「先生、白い歯にしてください。」とおっしゃる患者さんがいらっしゃいます。そこで、色見本をお見せし、「どのくらいの色がいいですか?」とお聞きすると、「このくらい!」と言ってとんでもなく白い色を指差されます。人の歯は、年齢と共に色は濃くなってきます。70歳の人に20代の色の歯を入れると・・・それはもう、「私は、入れ歯ですよ!」と宣伝して歩いているようなことになってしまうのです。 「色を合わせる」ということは、「自然な感じを取り戻す」ということなのです。 さて、それでは歯の色はどのように見るのか・・・といいますと、 |
私の場合、通常一本の歯を「先端部分」「中央部分」「歯ぐきに近い部分」というように3分割して見るのですが、必要に応じて9〜12分割して色を見ることもあります。その上で、それぞれのブロック内での色の特長、例えば「ここに白濁がある」とか、「着色がある」というようなものを見てゆくわけです。このとき、歯自体の凹凸による光の反射の状態も見ておきます。 |
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写真や絵画に趣味をお持ちの方はご存知だと思いますが、色には「色温度」というものがあり、光源によって色は違って見えるのです。ですから、出来るだけ日中の太陽光線の下で色合わせをするのがいいのですが、なかなか患者さんのご都合もあり、そういうわけにもいきません。そこで、私の診療室では「太陽光」と同じ波長の光を出すという蛍光灯を使っています。診療室内では色が合っているように見えたのに、外に出てみると全然違う・・・などということにならないようにです。 しかし、このようにして色を合わせて作った歯も、材質自体の光の透過性やその他いくつかの原因から、患者さんのいらっしゃる環境の光源によっては、天然歯との色の差が微妙に出てくる可能性は否めません。 |
排列の仕方(並べ方) |
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歯をどのように並べるのかということなのですが、ここでは噛み合せなどは無視した、あくまでも見た目だけの、それも総入れ歯における上顎6前歯の排列の仕方のみについてお話ししておくことに致します。つまり、噛み合せなどの要素から、いつでも以下のような考え方で歯を並べられるというわけではないということです。但し、これらの考え方には、総入れ歯以外の場合にも応用できることが多くあります。また、特殊な顔面の計測器具を使用するようなケースのお話も、ここでは省略させて頂きます。 |
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@ |
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これらの線の意味するところの主だったものを書き出しますと、下記のようになります。
このようにして大きさ、色、形などから選んだ6前歯を、どのように排列する(並べる)かで顔の相が決まります。そして、その排列時に考慮すべき要素には、下記のようなものがあります。 |
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A |
・前後的要素 |
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したがって、単にイメージだけの問題ではなく、唇の張りなどにも関係してきて、随分といろいろなところに変化がでることになります。ヘタをすると「出っ歯」になってしまったり、発音障害が出たり、上唇の内側に違和感が残ったり、縦皺が入ったり・・・と、まぁ「両刃の剣」と言うことも出来るでしょう。 |
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B |
・正面観的要素
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C |
以上の事柄以外にも、我々歯科医はいろいろなファクターを考慮に入れながら、みなさんの前歯をつくっており、ここに書かせて頂いた事柄は、ほんのさわりの部分にすぎません。 しかし、これだけでも知っておいて頂ければ、前歯を作るときに「より良い治療結果」を生むため・・・つまり、いわゆる「きれいな口元」をつくってゆくための担当医との会話を、多少はスムーズにして頂けるのではないかと思います。 |