ここでは、インプラントの上部構造についてのお話をしようと思うのですが、その前に、我々が通常使うインプラントというものは、ツーピースで出来ているということを知っておいて頂きたいと思います。

 つまり、顎骨内に埋入されるインプラント体自体と、それにネジ止めなどをされる歯茎より上の上部構造とに分かれているのです。このことにより、、同じインプラントでもその上にはいろいろな設計が必要に応じて成り立つわけです。

 ちなみに、その主だった分類を書くと・・・

☆シングル・スタンド・ケース

1本のインプラント上にひとつの歯が乗っかっているという最もシンプルなもので、両隣の歯が健全であり、ブリッジをするためにその歯を削るといリスクを冒したくないというような時に使います。

☆ブリッジ・ケース

これは、インプラントどうしのブリッジである場合と、インプラントと天然歯とのブリッジ・ケースの二つに分かれますが、私はいくつかの理由から、天然歯とのブリッジはあまり行いません。

☆デンチャー・ケース

デンチャーというのは、取り外しの入れ歯のことです。つまり、入れ歯の維持安定を図る装置として、インプラントを使うのです。

というようなことになるのですが、インプラントはこれを使うことによって補綴の設計バリエーションが大きく広がり、どのような上部構造を構築してゆくのかで、その形やサイズ、埋入位置などを決定してゆくのものですので、担当医よりその費用についても含めて、それぞれの設計における説明を充分にお聞きになった上で、施術をお受け頂きたいと思います。

 ちなみに、当院における患者さんからの最も多いご質問は、「インプラントは、どのくらい持つのですか?」ではないかと思いますが、これに関しましては、

・確実な診断と施術が行われ、

・正しい形態と咬合(噛み合わせ)の与えられた上部構造物(歯に相当する部分)ができており、

・十分なる清掃とメインテナンスが行われている限り、

今のインプラントは十分なる耐用年数をもっていると申し上げてよいでしょう。そして、インプラントは絶対に虫歯にはなりませんので、その大敵は歯周病だということになります。当院でも、インプラントを施した患者さんの場合、6ヵ月毎のリコールを実施していますが、基本的には自分の歯もインプラントも、清掃とメインテナンスが命なのです。

 以下、その他に私がお受けするインプラント治療に関してのご質問の中で多いものをいくつか書いておきます。

1.インプラントの治療で、最も大切なことは?

それは、適応、禁忌の診断でしょう。

あなたの症例において・・・

@ 本当にインプラントによる処置が必要であるのかどうか

A 必要な場合、それが可能なのかどうか

・・・を、現在の全身状態や服用しておられる薬、その部分の骨の状態など、あらゆるファクターについて十分に検討した上で判断しなければなりません。

2.費用はどのくらいかかるのですか?

インプラント治療は一切健康保険の適用を受けませんので、すべてが自費診療ということになり、具体的な費用設定はその診療室によってさまざまです。したがって、あなたの担当医から直接よくお聞き頂かなくてはなりません。

3.インプラント自体の材質は、何ですか?

従来は、いろいろな材質のものがありましたが、近年では「純チタン」だけになってきています。生体親和性も良く、金属アレルギーなどの報告も純チタンについては、今のところ私は聞いておりません。

4.治療に要する期間

歯を抜いた直後であるかそうでないかなど、いろいろな条件によって個人差はあります。抜歯直後に出来るケースもありますが、一般的には抜歯した箇所の骨再生を考え、最低3ヶ月は施術(インプラントの埋入手術)まで待つことになります。またインプラントの埋入後は、今度は骨にインプラントがしっかりとつくまで、やはり約3ヶ月程度待つことになります。

インプラントの上部構造(歯に相当する部分)の製作期間は、一般的に1本のインプラントの上に上部構造を作るだけであれば、1〜2週間もあれば通常は十分でしょう。

5.痛いですか?

基本的に、「痛みは無い」と言っていいと思います。少なくとも、私の施術後、「痛かった。」と翌日におっしゃった方は、殆どありませんので。

6.完成までの間、その箇所はずっと歯の無いままですか?

通常、その部位を歯抜けのままで放置することによって生じるリスクを避けるため、また、多少なりとも「噛む」という機能を確保するために、何らかの形で仮歯を作ります。もちろん、笑った時に見えるような部位であれば、仮歯を作るのは当然のことですね。