これは、虫歯などに対する最終処置として冠をかぶせるという方法のことで、基本的にその歯に充填(つめる処置)を施すのかクラウンをかぶせるのかは、その歯の失ってしまった部分と残った健全な部分とを考え合わせた上での強度計算により決定します。

 歯は決して飾り物ではなく、実際には何十キロという力がそこにはかかってきます。その力は、自分の体重とほぼ同じとも言われますが、まずはそれに耐えることができなければ、機能を回復したことにはならないのです。
そしてそのようなクラウンは、根っこの中のきちんとした処置 の完了や 健康な歯周組織 の状態の上に、初めて成り立つものであることを忘れないで下さい。

 決して腐っていたりシロアリが食っていたりするような土台の上には家を新築しないのと、同じことです。言い換えれば、前述の処置をきちんとせずに補綴診療をするような歯医者は、お話にならないと言うことです。


保険適用外診療(自由診療・自費診療)で製作する場合

 まず、充填の場合と同じく「適合性」や「強度」、「耐磨耗性」などが違うということは、言うまでもありません。

そして・・・

前歯の場合

 保険診療では、前歯と糸切り歯までのクラウンは、通常、プラスティックによる 「硬質レジン・ジャケット冠」 や金属にレジンを貼り付けることで色を合わせながら機能回復をする 「レジン前装冠」 が許されていますが、これは経年的に艶がなくなったり変色がでたりといった欠点と共に、強度や適合性にもそれなりの限界があると思います。

 また、前装冠の場合は基本的に歯との継ぎ目の部分は金属で作らざるをえませんので、歯ぐきに沿って細く金属のラインが見えるのと、歯の先端の部分は噛み合わせの問題から金属で作らざるをえないことがあり、やはり金属が見えることがあります。

 そこで、自由診療では陶材を金属に焼き付けた陶材焼付冠 (一般に、メタルボンド・クラウンなどと呼ばれており、みなさんが「陶器の歯」などとおっしゃるものです) などを使うことになります。

 これは、高い精度と共に色調や光沢の変化がなく、金属の露出も避けることが可能です。

 この他にも、ケースに合わせて 「ジルコニア・クラウン」 など、いくつかの選択肢があります。

 ご参考までに、当院における自由診療によるクラウン・ブリッジにかかる費用は、前歯、臼歯にかかわらず下記の通りです。(消費税別)

 メタルボンド・クラウン : ¥100.000- (1歯)

 ジルコニア・クラウン : ¥120.000- (1歯)

臼歯(奥歯)の場合

 保険診療では、大臼歯はクラウン全体を保険の金属 (金・銀・パラジウム合金というステンレスのような銀色の金属) で作ることとなり、金属アレルギーをお持ちの方などを除いて、基本的に色を合わせることに関してはできないことになっています。

 小臼歯に関しては、単独のクラウンの場合はハイブリッド・レジンブロックから削り出されるCAD/CAM冠 (歯の色をしています) やメタル・クラウンといった選択肢が保険診療の範囲内でもあります。

 ちなみに、エステティック・ラインと呼ばれる笑ったときに見える範囲は、日本人の場合一般的に5番目の歯 (第2小臼)  から6番目の第一大臼歯の前半分くらいまでといわれ、このような審美性を考えると、小臼歯はCAD/CAM冠で・・・ということになりそうなのですが、CAD/CAM冠にも歯質の削除量や精度、強度といった面で問題は残っています。

 また、特に大臼歯については審美的回復をさほど重視しなくていい場合もあり、そのようなケースにおいてはゴールド (歯科用白金加金) によるクラウンが、強度、精度、歯質削除量など、どの面から見ても非常に優れていると私は思います。

 当院における白金加金によるクラウンの費用は、下記の通りです。(消費税別)

 3/4 Crown ・ 7/8 Crown ・ Full Crown など : ¥80.000-

 

 @ 左上の2番にできた虫歯のケースで、
    これは、虫食いを完全に除去した後
    根の中の処置を終えた時点の写真です。

 A 写真からはわかりにくいですが、
    根の中に補強のための芯棒を入れ、
    そして、土台用の材料にて
    元々の歯の形を復元したところです。

 B 土台を削って型採りをした後、
    出来上がった「金属に陶材を焼き付けた冠」
    (Porcelain Fused Metal Crown)を
    装着したところです。

 C Bを拡大したところです。

 これは、右上の第一大臼歯のクラウンです。
 噛む面などは全て覆っていますが、
 笑ったときに見える可能性のある部分
 頬側の手前半分)は歯を残すように(7/8 Crown)削られています。
 (下は、上の歯が鏡に映った状態で、噛む面が見えています)

 右下の第一大臼歯にかぶったゴールドのクラウンです。
 その前後は、ゴールド・インレーです。

 左下の第二大臼歯(一番奥の歯)にかぶせた陶材焼付け冠です。

 (右側は、頬側に置いた鏡に映った側面観です。

 自由診療では、天然歯のエナメル質とほぼ同じ硬度の金属の使用という意味から、歯のためには白金加金のクラウンがベストでしょう。

 しかし、前述の通りエステティック・ライン (微笑んだときなどに外から見える範囲のこと) の問題から、陶材焼付冠などを使うことが必要なケースも出てきます。