ブラシの動かし方には縦、横、回転・・・などといろいろありますが、私は今日までの臨床経験から少し縦長の楕円運動が最も良いと考えます。

 また、ブラシは1本ずつの歯に当てようとするのではなく、ひとつずつの 鼓形空隙 に毛先を入れようと考えながら当て、移動させる時には必ず一旦歯から離してから再度位置を決めて当てるようにし、移動距離は1歯単位で動かすようにします。

 さて、前述の 歯間乳頭部 と鼓形空隙から考えて、その部分が最もブラッシングをするにあたって重要な部分だということがおわかりいただけたと思います。

 では、その部位へのブラシの挿入方向ですが、ブラシの毛の腹を歯ぐきに沿わせ、歯の長軸に対して直角よりやや歯の頭の方向(歯冠方向)へ向けてブラシの毛先を歯間へと入れてゆくようにします。 

 上の二つの図は、歯に対しての歯ブラシの挿入方向を示していますが、ブラシの毛を歯ぐきに沿わせ、矢印の方向へと歯と歯の間に挿入するように圧をかけてゆき、挿入後、少し縦長の楕円運動をさせるようにします。

 また、下の二つの図は歯列に対しての歯ブラシの水平的挿入方向を示しており、その下の二つの写真は、垂直的方向を示しています。

    

         

唇、頬側からは、歯列に平行に当てます。
毛先が分かれて、歯と歯の間に入っていっているのがわかります。

内側からの場合は、写真のような角度が必要になってきます。そして、このブラシの角の部分の毛が歯間乳頭部に入ってゆくようにします。

 一旦しっかりと当てた歯ブラシは、その位置や角度を変えることなく小さく、少し縦長の楕円を描くように動かします。このとき、決して横磨きになってはいけません。

 この歯間乳頭部に挿入する時の圧ですが、これは最もくびれた部分(歯どうしの接触点)を越えて外側からも内側からも、ブラシの毛先が届いていなければなりませんので、それなりのしっかりとした圧が必要になってきます。また、その圧は奥にゆくに従って、(歯の厚みが増し、くびれた部分までの距離は長くなるため)高く(強く)してゆかねばならないことも、おわかり頂けたと思います。

 そして、前述のとおり歯どうしの接触点の位置は、下顎では頬舌径のほぼ中央に位置していますが、上顎ではより頬寄りに位置しています。したがって、最もくびれた部分は頬寄りの位置にあるということになり、舌側からは遠い位置にあるため、上顎においては舌側から(内側から)の圧のほうが、頬側(外側)からの圧より高くなくてはならないということになるわけです。

 ブラッシング時のブラシにかける圧は、その患者さんのお口の状態によって違ってきますが、基本的に私の見る限り、ほとんどの患者さんにおいてその圧は低すぎるようです。適正な圧をブラシにかけると、ブラシの柄の部分は多少たわんでいるはずですし、またご自身の歯ぐきでも、しっかりと歯と歯の間に歯ブラシが届いているという感触を味わっていただけると思います。要は、どんな人の場合でも届かなければいけないところまでしっかりと届くだけの圧が必要だということであり、細部にまで毛先の行き届いているその感覚(感触)を忘れず、常にしっかりとした圧をかけ、決して上っ面のブラッシングにならないよう、ブラシを当て続けて頂くことが大事なのです。