ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



終わりのない旅にでることにした。気まぐれなんかじゃなく、
とても強い意志を持って。どうか僕の我侭を許して欲しい。
僕は今、とても楽しみにしているんだ。この旅の行く末を。
そこが暗闇の中だとしても、僕は光を目指して歩き出す。
まるで昆虫みたいだと、小さな君は笑うかもしれないね。
もし君に、淋しい思いや辛い出来事があったとしたら、
光の中に出ておいで。僕はそこで君を見守っているから。

小さな君の成長を見届けられないことが、少しだけ残念だ。
心からの愛を贈ろう。

―― 最後の文字を読む前に、視界が涙で歪む。
手紙の末尾には『いってきます』の文字が書かれいる。
もう何度も読んでいるから、見えなくても忘れることはない。

この手紙を残して父が亡くなったのは、二十年も前のこと。
病室でこれを書いていた父が、何を思っていたのか。
まだ小さかった私には判らない。

扉を叩く音に気付いて、手袋をした指先で目頭を抑える。
「そろそろ時間だけど、準備は……っ」
部屋に入ってきたタキシード姿の男性が、驚いたような顔で立ち止まった。
「どうしたの?」
「俺の花嫁さんが、あんまり綺麗だったからさ。もう一度惚れ直してた。
さぁ、行こう。みんなが待ってるよ」
優しく微笑む彼の手を取って立ち上がると、白いウェディングドレスがふわりと踊る。

お父さん、見えていますか。
私は今、光の中を歩いています。この人と二人で、これからもずっと。


2014.08.17