ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



俺が信じられるもの。お前が信じられないもの。
それはすぐに形を変えてしまう、不確かなもの。
だから俺は、その不確かさを形にすることに決めた。
それでお前が、信じられるなら。

「……浸ってる処、悪いんだけど。で、何なの、これ?」

冷房の効きすぎた喫茶店。
その冷たい空気をも凌駕する程の、冷ややかな声と視線。
なんだよ、おい。この世界には温度というものはないのか!!

「何だ、知らないのか? これはな、婚姻……って、おいっ、何をする」

目の前に差し出した紙を、無造作に掴み取ると、容赦なく引き裂いた。
真っ二つ処から、ビリビリの粉々に……。あんまりだろ、それは。

「巫山戯ないで!! その薄っぺらい愛情を押し付けられるのは、もうウンザリなのよ。
そう言って、喧嘩したばかりでしょう。それも昨日よ、昨日。その翌日に、なんでこういう
展開になれるのよ。貴方、頭、大丈夫?」
「俺は至って正気だ。お前が俺の愛情を信じられないって言うから、俺の持てる最上級の
愛を、お前に捧げることにした。それの何処が巫山戯てるって言うんだ」

俺の煮え滾る程の熱い想いを受け止めたお前は、怒りの為か、それとも照れているのか
(後者の方だと、俺は信じているぞ)、顔を真っ赤にしながら、唇を震わせている。
そして、何かを言いたそうに、大きく息を吸って……そのまま大仰に吐き出した。
そのままガックリと項垂れる。

「もう良い。降参よ。でもね、一つだけ条件がある。
私達の関係を変えたいって言うなら、もう一つ手順を踏んで。
どうせなら、……ロマンチックな方が良いわ」

独り言のように呟くお前の言葉に、俺は思いっ切り頷いてやる。

「判った、任せろ。この婚姻届。今日中に復元する。俺、ジグソーパズルは得意なんだ。
出来上がったら可愛い額縁に入れれば良いんだな。でも、役所に提出するのに、
額縁はおかしくないか?」

不思議そうにお前を見返した時には、真っ白い拳が俺の目の前にまで迫っていた。


2014.08.15