ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



「あの月に行ったら何か変われる気がするんだ」

その言葉に誘われて、俺は視線を窓の外へと向ける。
澄み切った青空に、半分だけの白い月が、ぼんやりと浮かんでいた。
剥がしきれずに残ってしまったシールのような月。

オマエらしいな、と笑う俺に、アイツは照れくさそうに微笑んだ。

夜空に浮かぶ月と違い、昼間の月は主張しない。
ただそこにあるだけ。何も変わらず、そこにあり続ける。
何があっても変わらない。儚げでいて、とても強い。
アイツは、そんな昼間の月に似ている。

暫くして、アイツは旅立っていった。
辿り着いた場所は、月と同じ重力のない場所。
そこでアイツは、望み通り変われたのだろうか。
俺には確かめる術はない。今はまだ。

今日も晴れた空に白い月が浮かんでいる。
アイツの儚げな笑顔が、見えた気がした。


2014.08.09