ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



叶えたくない願い事を短冊に書いて、わざと目に付く処に飾る。
笹の葉に吊るされた短冊達が、風に揺らいで盛大な音を奏でる。

「何だ、こんな処にいたのか」

背中越しに掛けられた声。振り向かなくても判る。
大好きなお兄ちゃんの声だもの。

「七夕祭りだからって、あんまり遅くなるんじゃないぞ」

お兄ちゃんの優しい笑顔。その眼差しは、ずっと私だけのものだったのに。

「なによ、お兄ちゃん。彼女の前だからって格好つけちゃってさ」

お兄ちゃんの横に並ぶ、儚げな笑顔の女。浴衣の似合う清楚な美人。
そういうのが好みだって知っていたら、私だってそれくらい……。

「短冊か。オマエ、何て書いたんだ?」
「そんなの決まってるよ。お兄ちゃんたちが、ずっと仲良くいられますように、って。
手の掛かる兄からやっと開放されたんだもん。長続きしてもらわなくちゃ」

心にもないことが、スラスラと口から漏れる。
短冊には書けない願い。それならいっそ、真逆なことを願おう。

七夕の天気予報は、夜から本降りの雨。
短冊に記した願いも、天の川の氾濫と一緒に流れてしまえば良い。


2014.07.05