ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



今日は、僕の誕生日。漸くこの日がやってきた。

「緊張なさっているのですか?」

その声で気付く。膝の上に置かれた手が、微かに震えている。

「これは武者震いだよ。やっと取り戻せるんだ。この手に。城も、民も」

長かった。この日が来るのを、ずっと待ち侘びていた。
自国の王である父が殺された、あの日からずっと。
我が国では、二十歳になるまで国王になることは禁じられている。
年端もいかない子供に、民の信頼を得ることは適わず、政治を任せるに値しない。
そういう教えが、古くから伝わっているためだ。
十歳になったばかりの僕には、この国を治めるだけの資格がなかった。

「大公殿のことは、どうなされるおつもりですか?」

父王の弟である大公。二十歳の誕生日を迎えるまで、僕の後見人を引き受けてくれた。
いつか父を超える王になれと、僕を励まし続けた、優しい叔父上。
でも、彼は知らない。僕があの日、父の部屋にいたことを。僕は見ていたんだ。
誰が王を殺したのかを。優しい仮面の下にある真実の顔を。僕だけは知っている。

「叔父上には感謝している。この十年、城を護り、民の為に力を尽くしてくれた。
本当に、よく働いてくれたよ」

私利私欲のために。王を亡き者にし、城も国も、すべて僕から奪い取った。
この国の民は、叔父上が新たに設けた制度の所為で、疲弊している。
田畑は荒れ、活気もなく、献上金を納めるため、ただ生きながらえているにすぎない。
僕に、力がなかった所為だ。

「叔父上にも休養を与えよう。北の私有地に、小さな城がある。そこへ行ってもらう」
「あの城は、雪に閉ざされていて、とても人が行き来できるような場所では」
「ここは穏やかだから、雪は珍しくて良い。きっと叔父上も気に入ってくれる」

誰も行く者がいないなら、彼がどう過ごしているのか、気に留める者はいない。
生きているのか、死んでいるのか。それすらも雪に閉じ込めてしまえば良い。

「戴冠式のお時間です」

扉を叩く音が僕を呼ぶ。この国が、新しく生まれる。


2015.08.01