ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



「変わらないものがあるとしたら、それはキミを思い続ける、この気持ちだけだ。
……っていうのはどう?」
キーボードを叩くリズミカルな音を響かせながら、薄ら寒いことを言い出したアイツ。
私は不快感を露わにした表情を浮かべて、思いっ切り頭を振った。
「ない、ないない、絶対にない!! そんなクッサイ台詞、今どき誰も言わないわよ」
「そっか、ないんだ」
一文字ずつキーを叩いて、入力した文字を消していく。その背中が、何だか不満気に見える。
何で怒るのよ。だって、あり得ないでしょ、そんな台詞。
「そもそも、そんな台詞を言うキャラクター、出てこないでしょ。いつからジャンル、変えたの?」
毎日毎日、『密室』がどうの『トリック』がどうのって喚いてるくせに。いつの間に、そんな甘い
台詞を考えるようになったのよ。現実世界では言えないのに、作品の中でだったら言えるの?
「好きだったじゃん、ロマンチックなの。少女漫画に出てきそうな台詞とかさ。
いつか言われてみたい、って騒いでたくせに」
「いつの話よ、それ。そんなの、とっくに忘れたわ。どうせ言ってくれるような人、いないもん」
幼馴染の腐れ縁。傍に居るのが当然で、居なければ少し淋しいだけの、空気みたいな存在。
それがアイツにとっての私。甘い言葉なんて、期待するだけ無駄なんだから。
「言ったんだけどな。さっきのあれ、ロマンチックじゃなかった?」
それって、どういう意味? ずっと忘れた振りをしてたのに、今更それはズルいわよ。
二人の関係が進展するって、少しは期待したくなるじゃない。


2015.07.20