ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



秋の色をまとったまま、彼女は逝ってしまった。まるで眠るように。
敷き詰められた黄色い絨毯の中央に、彼女は静かに横たわっていた。

これが秋の出来事ならば、実現不可能な光景ではない。
だが、今は冬。見上げる木には、枯れ葉一枚残っていない。
周りを見渡せば、銀世界にも等しい程の白い雪。

一面の白に突如現れた赤と黄色の世界。
まるでキャンバスに描かれた絵のようだ。
眠る少女の肖像画。これ程にピッタリな言葉もないだろう。

あれから一週間が経過した。犯人の手掛かりも掴めないまま、警察も頭を抱えている。
業を煮やしたのか、被害者家族が名も知れぬ探偵を呼び寄せた。
警察の捜査に紛れるように、別の角度から事件を観察する。探偵というのも因果な商売だ。
警察からも犯人からも疎んじられるのだから。

……そうでもないか。犯人にとっては、探偵という存在も悪くはないはずだ。
動機も、そこに至るまでの経緯も、警察は興味などない。犯人が判れば、それで良い。
だが、犯人にとっては違う。それこそが重要なのだ。動機を暴き、経緯を白日の下に晒す。
そうする事で、漸く他者から理解されるのだから。それこそが探偵の役割。

背後で足音が聞こえた。ここは彼女が発見された場所。
事件の始まり。そして今日、ここですべてが終わる。終わらせるのだ。
振り向くと、見知った顔がそこにあった。そうか、やっぱり君だったんだね。
どうして辛そうな顔をする? 覚悟を決めて、ここへ来たのだろう?
何もかも判っている。僕の表情を読み取ったのか、きゅっと結んだ唇が開く。
まるで最後の審判のように、彼は僕に告げた。

「犯人は貴方ですね」


2014.11.30