ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



そして何事も無かったかの様に遠ざかって行った。これは不味いサインだ。
興味ないや。その一言で片付けることもできた。
でも、自分の行動を意識してしまった段階で、これはもう諦めるしかない。
だから、これは不味いサインなんだ。興味ないやなんて、クールに気取れない。
これが僕の性分なんだから。

軽く息を吐き出して気持ちを切り替えると、来た道を戻り始めた。
程なくして、アイツを見付ける。まだその場に居たことに、複雑な気持ちが蘇る。
「ニーニー」
真っ白い子猫が、植え込みから顔を出して鳴いている。親猫と逸れたのだろうか。
心細そうなこの鳴き声が、僕の後ろ髪を引いたのだ。

「判ったよ。助けてやるから、一緒に来い」
そう言って手を差し出すと、僕の指先に濡れた鼻を押し付けてくる。
腹を空かしているのか、何も乗っていない掌をざらつく舌で舐め始めた。
「ごめん、食べ物は何も持ってないんだ」
言葉が判ったのか、残念そうに鳴いた後、植え込みの奥へと戻っていく。

見えない向こう側で、子猫が鳴き続けている。さっきよりも力強い。
僕を呼んでいると思うのは、自信過剰だろうか?
それを確かめる為に、植え込みの向こう側へと潜り込んでみた。
そこにいたのは、子猫と母猫。
ニーニーと鳴き声を上げていた子猫は、一匹だけではなかった。全部で五匹。
衰弱して横たわる母猫の傍で鳴いていた。
「そっか。母さんと兄弟を助ける為に、オマエは頑張ってたんだな」

戻ってきて良かった。お人好しなのは判っている。でも、これが僕の性分なんだ。


2014.11.16