ザ・インタビューズ 「書き出し文を質問し、それに続く文を書く。」



ある晴れた日曜日。日差しに誘われるまま、予定も決めずにただ家を出る。
この街に引っ越してきてから、かれこれ半年にはなろうかというのに。
僕が知っているのは、家から駅までの道程と、買い物に立ち寄る店が幾つかあるだけ。
それでも何度か通えば、顔馴染みの店員も増えてくるものでさ。
多少の我が儘くらいは、聞いてもらえるようになった。
行き付けの喫茶店に立ち寄って、昼食用にとサンドイッチをテイクアウトさせてもらう。
飲み物はコンビニでペットボトルのお茶を購入。これで、準備は万全だ。

小学生の頃。僕は近所のことは何でも知っていた。行ったことがない処なんてない。
そう思って得意がっていた。……あの道を知るまでは。
大きな工場の高い壁。そこを抜けると大きな十字路。真っ直ぐ行っても、左に曲がっても、
駅に続いているのは知っている。バスに乗って行ったことがあるからだ。
でも、右の道には一度も行ったことがない。大人に聞いても、あの先には何もない、と
教えられるだけ。気になって、その道の曲がり角まで行ったことがある。
何故かその先へ、足を進めることができなかった。
見えるのは、綺麗に舗装された一本道。ただ真っ直ぐ続いているだけで、何も見えない。
工場の高い壁が、此方側にもあるだけだった。僕は怖くなって引き返した。

あの道のことは、中学に入る頃には忘れていた。近所よりも広い範囲を知り、隣の席程の
狭い範囲を知りたいと思い始めたからだ。だから僕は、右に曲がったあの道の先に何が
あったのか、大人になった今も知らないでいる。

きっとこの街にも、色んな道があるだろう。僕はその道の先を見てみたい。今度こそは。
そして少しずつでも良い。この街を好きになりたい。
さぁ、冒険に出かけよう。


2014.10.12