ユールクラップ

 

 スウェーデンでは、クリスマスのプレゼントのことをこのように呼ぶそうです。「ユール」はクリスマスのこと、「クラップ」とは、「とんとん」と戸を叩くことだそうで、クリスマスは、神さまが皆さんの心の戸をとんとん叩いてプレゼントをくださるという気持ちを表した言葉でしょうか。

 クリスマスが近くなってきましたが、多くの方は、クリスマスが、イエス・キリストのお生まれになったことをお祝いする日であることをご存知だと思います。けれども、意地の悪い人が言います。本当に12月25日にイエス・キリストは生まれたのか、と。

 確かに、この日に生まれたのではないようです。そして、いつ生まれたのかは分かりません。しかし、生まれたことは確かなことで、そうなると、昔の人々の願いは、いつをイエス・キリストの誕生日にすれば一番ふさわしいのかという考えに向かったようです。

 そして、選ばれたのが12月25日でした。その理由は、冬至と関係があります。冬至は、一年で一番昼間が短い日です。光が少ないこの季節は、わたしたちの心も暗くします。何かすべての希望が失われて、これですべてが終わりになるかもしれないという不安を引き起こす気持ちにさせます。

 この冬至にからめてクリスマスが祝われるようになりました。それは、一年の中で一番暗くなる時に、ここに新しい光が照らされ、みんなの心をもう一度明るくしてくれるからです。

 クリスマスの出来事は、希望の出来事です。冷えた心、憎しみで歪んだ心、悲しみに押しつぶされている心をもう一度、「とんとん」と叩いてわたしたちの生活の中に新しい光が入り込む出来事です。

 わたしの弟の家庭に今年赤ちゃんが生まれました。それまで共働きだった夫婦は、お母さんが一年間の育児休暇に入り、子育てに励んでいます。仕事を離れて、育児に専念する生活は、これまでの生活に変化をもたらしました。

 先日家を訪ねると、闇夜の中に屋外イルミネーションが輝いていました。これまでは忙しくて、クリスマスが来てもそこまでする余裕がなかったのです。しかし、新しい赤ちゃんという光が家族を揺り動かしてクリスマスを祝う心を育てました。

 育児の苦労、経済的な問題など赤ちゃんが生まれることは、責任も増えてきます。しかし、赤ちゃんが放つ光は、それらの重荷を越えて、わたしたちの生活を包み込むのです。

 皆さんも今年のクリスマスこそ、イエス・キリストという赤ちゃんがあなたの生活を照らし出して、そこにもなお希望があることを告げていることに気づいてみませんか。

(沼津朝日「言いたい放題」 2001年12月19日掲載)