バークレー・エコハウス(カリフォルニア)




 バークレー・エコハウスって?

ークレー・エコハウスは、野菜や花、ハーブやきのこを育てるコミュニティーガーデンをつくったり、廃物を利用して楽しい芸術作品をつくったりしている、環境のことを考える地域の人たちのグループです。カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部の学生は、2000年春学期の授業「Constructing a small urban ecology(小さな都市のエコロジーをつくる)」のプロジェクトとして、地域の人たちのお手伝いで、ツール・シェッド(道具小屋)を作ることになりました。道具小屋といっても、道具を収納するだけでなく、水道があったり、コンポスト・トイレがあったり、太陽電池パネルによる照明施設があったりと、小さいながらも中身はいっぱいです。ツール・シェッドにとどまらず、エコハウスは今後も地元の人たちのコミュニケーションの場としてどんどん手を加えられ、いろいろな人の思いが積み重なって、その姿を変え続けて行くことと思います。


 エコハウスの周りの様子



コハウスは、カリフォルニア州バークレー市の北、ホプキンス通り(Hopkins St.)とペラルタ通り(Peralta Av.)の角からすぐのところにあります。
この一角には、エコハウスのほか、ペラルタ・コミュニティーガーデン(Peralta Community Garden)やカール・リン・コミュニティーガーデン(Karl Linn Community Garden)など、地域の人たちの活動の場が集まっています。

これらの土地の所有者は、
ベイエリア高速鉄道(Bay Area Rapid Transit: BART)やバークレー市です。以前、これらの土地は不整形であったため、なかなか良い利用法がなく、そのまま放置されていました。地域の人たちはコミュニティーガーデンとして有効に利用したいと関係当局に働きかけ、現在はすばらしい地域活動の場に変わっています。

BARTはこれより南では地下線となるため、ペラルタ・コミュニティーガーデンのちょうど下から、地下にもぐります。

オーローン・グリーンウェイ(Ohlone Greenway)は、人と自転車のための道で、各地の公園やBARTの高架下の緑のスペースをつないでいます。休日にはたくさんの人たちがこの道を散歩やジョギング、サイクリングをして、楽しんでいます。

バークレー・エコハウスは、将来的には黄色の土地にも拡張される予定です。そこに建っている家を改造し、エコロジー情報を発信する小さなミュージアムやここに集まる人のためのラウンジがつくられます。






■カール・リン・コミュニティーガーデン■
 春には雨と太陽の恵みを受けて、見ているだけでも楽しくなるような景色に変わります。
■ペラルタ・コミュニティー・ガーデン■
 芸術的な鉄製のゲートが、暖かく迎え入れてくれます。野菜や花が栽培されているほか、円形のベンチ、小さな池、日時計などたくさんの作品があります。
■オーローン・グリーンウェイ■
 車社会のアメリカにあっては、このような人と自転車のための道は貴重な存在です。線路跡を利用したこのグリーンウェイは、格子状の街区を斜めに横切れるのも魅力です。


 基礎と骨組み Foundation and Frame


000年春、地元の人たちとデザインを協議した後、いよいよツール・シェッド(道具小屋)づくりがスタートしました。歩道の工事でできたコンクリート片や家の建設で余った木材や配管、生態系に配慮して収穫された木材など、捨てずに再利用することを心がけて材料が集められました。一体どんなツール・シェッドになるのか、果たして自分たちの力で本当に建てることができるのか、期待と不安が混じったスタートでした。

ツール・シェッドの建つ位置を巻尺で測って、印をつけているところ
溝を掘った後、コンクリートの大きな固まりを置き、枠を作ってその上からコンクリートを流し込みます。鉄筋やジョイント、水道、電気の配管も忘れずに設置。
水道管と電気の配線用配管。これは資格のあるプロの人が設置、後で市の職員の人が確認しに来ました。
柱が立ち、立体的になってきました。電動ノコに加えて、日本のノコギリも活躍。90度以外の角度の場所は、加工がちょっと難しい。
3月ごろ、フェンスに這わせるリンゴの木を植えました。エスパリエという仕立て方をして、緑の実のなるフェンスを作ります。
土の上に植物が生きる、「生きている屋根」にするため、屋根は頑丈に作っています。人が上に乗って、雑草抜きをしたりできるくらいです。
屋根の端がきれいに揃えられ、骨組みは完成。


 粘土の壁 Light Clay Wall


土と水を適度に混ぜ、それを藁にかけます。すると、粘り気のある藁の固まりができるので、それを壁の内材として詰め込みます。その後、粘土とセメント、水を混ぜ合わせたもので壁をコーティングします。今回は、セメントの割合が少なかったようで、雨や風でコーティングが剥がれ落ちてしまいそうになり、最後にニスのようなものを上から塗って仕上げました。

柱の間に細い竹を通して、壁の補強材にします。
材料を混ぜているところ。赤い粘土を使ってきれいな壁の色に仕上げます。
混ぜ合わせた材料を詰めているところ。
材料を押し込めるために後ろには板をあてがっています。
壁が乾くまで待って、コーティングを施します。
外壁にニスのようなものを塗っているところ
ニスを塗り終わり、乾いたところ。なめし皮のように深みのある色に変わりました。草を押しつけて作られたレリーフがきれいにでています。


 生きている屋根 Living Roof


から作業を始めてこの屋根が完成したのは夕方遅く、その日は土を敷き詰めるところまでで終わりましたが、とても感動的で満足感がありました。

アスファルト層を屋根に施した後、白色のプラスチックシートと、黒色の帯水層を敷きました。帯水層は谷の部分に水を溜め、山の部分の小さな穴から水を排水します。
穴の開いた筒の周りにフィルター織布を巻き、傾斜した屋根の下部に置きます。小石は土が直接流れ出ないようにするために敷きました。
厚さ13センチ程度の軽量土を屋根の上まで持ち上げ、敷き詰めました。
最後にメキシコマンネングサの仲間、Sedumという乾燥に強い植物を植えました。4つの品種を使ったので、いろいろな色や形が楽しめます。半年後、黄色の花を咲かせました。


 ストロー・ベイル・ウォール Straw Bale Wall


トロー・ベイル・ウォールは、藁束を断熱材に使用し、周りをコーティングした壁です。コーティングには、砂(7から8)、セメント(1)、水(適量)を混ぜたものを使用し、手作りの場合、混ぜ合わせたものを手で壁に向かって投げつけます。加える水の量は、版築壁の場合と異なりかなり多く、ペタペタと音がなるくらいです。ちょうどよい柔らかさだと、跳ね返らず、そのまま壁にくっついてくれます。泥だらけになりながらの作業は、実に楽しいものでした。

藁束を重ねて壁の内材にします。外側にはワイヤーメッシュをかけ形が崩れるのを防ぎ、コーティング層の強度を強めます。
砂(7から8)、セメント(1)、水(適量)を混ぜ合わせます。
混ぜ合わせたものを壁に向かって投げつけます。まわりがよごれないようにビニールシートを掛けておきます。
壁の形を平らなもので整えます。鏝(こて)を使って、テクスチャーを加えることもできます。
乾燥するまで待ちます。
壁に作った窓からは、内側の藁束が見えるようになっています。


 版築壁 Rammed Earth Wall


の壁は、砂(7から8)、セメント(1)、水(適宜)を混ぜたものを、型枠に入れ、上から突き固めて乾燥させてつくります。水の量によって、うまく突き固まるかどうかが決まります。ちょうどよい水の量は、混ぜたものを手で丸めてみて、玉が崩れないか、下に落としたときに割れるかどうかを見ます。玉が崩れず、下に落としたときに割れれば、合格です。微妙なところは実際に突いて確かめてみてください。
コハウス・プロジェクトでは、Nunn's Canyon Soilという近くで採れる砂を使いました。このように地元で採れる材料を使うことは、輸送に消費するエネルギーを節約し、環境への負荷を抑えるという面で、とても望ましいことです。


外枠を取り付けます。上からガンガン突くため、かなり頑丈に付ける必要があります。
上から棒で突いているところ。外枠にビニール・シートを貼り、乾燥させた後、きれいに外枠が取れるようにしています。
外枠をだんだんと上に移動させ、下の部分を乾かしながら、上に新たな層を積み重ねて行きます。
毎週3、4人の人手をかけ、1ヶ月半以上かかって積み上げた壁が、ついに完成。白色のセメントを使ったり、灰色のセメントを混ぜたり、赤い土を加えたりして作った美しい層は、まるで手作りの堆積岩のようです。
壁の上下に4つずつ開けられた穴の外側に、リサイクル・ショップで見つけてきた大きな窓と木枠を付けました。この箱と壁の穴は、太陽熱を利用する自然の暖房装置となります。


青窓 Blue Windows


れいな青い窓が使用済みのビンからつくられました。これはビンのかけらをオーブンに入れるまでの様子です。


自分の好きな色のビンを用意します。
はき古したジーンズで作った袋にビンを入れます。
目を保護するゴーグルをして、ビンをハンマーで砕きます。
砕かれた青いビンのかけら
最終レイアウトを決めるために、かけらをきれいにならべ直しているところ。


 ツール・シェッド全景 the Tool Shed


ール・シェッド(道具小屋)は、まったく何も建っていない空き地に作られました。ゆっくりと作り上げられたツール・シェッドの生い立ちをご覧下さい。


2000年冬。ツール・シェッド建設前の様子。

2000年春。骨組みができつつあります。

2000年10月。屋根や壁がほぼ完成。

2001年4月。ツール・シェッド前のフェンスが取り払われ、ゲートとベンチが付けられました。

2001年4月。ツール・シェッドのうらには、リサイクルショップで見つけてきたスライド式の大きな扉が付いています。


001年6月、残念ながら私は、排水システムやソーラーパネル、ビンを溶かして作った窓ガラスの設置を見ないまま、帰国することになりました。でも、10年後、20年後のエコハウスの姿を想像すると本当に楽しみです。いつかまた、バークレーに戻りエコハウスをのぞいて見たいと思っています。



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Copyright by Junichi Imanishi.
Last updated on May 20, 2002