ひとことで言えば?エコロジカル・ランドスケープとは、「人と自然がともに生きる環境」のことです。以下は、私が大学院生のときに考えた、「エコロジカル・ランドスケープ」と「自然」についての定義ですが、興味がある方はお読みください。 エコロジカル・ランドスケープの定義エコロジカル・ランドスケープとは、自然を保全、開発、創造する分野であるランドスケープ(landscape architecture)に生態学的要素をより濃くあたえた語である。すなわち、エコロジカル・ランドスケープとは、空間に要求される人間のためのさまざまな機能を満たしながら、より健全な生態系の確立をめざして、自然を保全、開発、創造する分野である。2つの「自然」以下に、エコロジカル・ランドスケープの主役である2つの「自然」と「人間」の関係についてまとめる。このホームページの目的でも述べたように、自然には大きく2つの自然がある。それらは、上の図の「もともとの自然」と「つくられた自然」にあたる。 とりあえず、ここでは、「もともとの自然」というのは、人の手を借りずに成立していた自然と定義しておく。 つくられた「自然」のわかりやすい例は、庭園である。長い歴史の中で生まれたさまざまな美しい庭園は、人の心を癒す舞台装置であった。「自然を町に取り戻そう」という言葉のなかの「自然」には、この心を癒す装置としての「つくられた自然」の要素が欠かせない。 しかし、最近では、「つくられた自然」を「もともとの自然」に近づけようという動きもある。例えば、ビオトープは生態系として機能するように「自然」がつくられる例である。 また、別の意図で「つくられた自然」(例えば、京都御苑、各地の公園や庭園、神社の境内など)に、「もともとの自然(生態系)」の価値を再評価しようという動きもある。 そして、もしこれらの「つくられた自然」が、生態系にたいし十分に貢献している(または、貢献する可能性が高い)場合には、「もともとの自然」と同様に、保全される対象となり、また開発を受ける対象にもなる。(図参照) 自然再生(nature restoration)は、「もともとの自然」の構造や機能を取り戻すことを目的として自然をつくる行為である。 「つくられた自然」の生態的価値「つくられた自然」が生態系の機能をどれだけもつかは、それ自身のもつ潜在的能力のほかに、それをとりまく空間とどのような生態的な結びつきをもっているかにかかっている。ところで、「つくられた自然」には、生態系の機能のほかに、遊び、スポーツ、眺望、貯水など人間に供するための機能をあわせもつことを要求されることが多い。また、生態系に貢献する「つくられた自然」の価値には、生態的価値のほかに、教育的価値もある。「つくられた自然」がまわりの空間と希薄な生態的関係しかもちえないことが多い都市空間においては、「つくられた自然」を生態的価値だけによって判断するよりも、教育的価値など他の価値をあわせて判断するのがよいかもしれない。 注: 生態的価値 生態系の健全性 生態的価値や生態系の健全性は、どのように測ればよいのかは、興味深く、また難しい課題である。 |