環境影響評価法の日米比較と法施行による環境訴訟に与える影響について

カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部ランドスケープ学科修士課程
今西 純一
2000年12月




 本稿は2000年秋学期に開講されたLA233Environmental Law and Resource Managementに提出したレポートを一部削除、修正し、日本語に訳したものです。本稿の文責は筆者にありますが、Timothy Duane教授、Jan Stevens氏、 Matt Rodriguez氏にご指導をいただいたことをここに感謝します。
 日本の司法の専門家にチェックを受けていないため、「2.3. 法施行による環境訴訟への環境の予測」のうち「予測される裁判所の論理」については、環境影響評価法施行後に提訴された裁判の判例を参考にされますようにお願いします。

目次
要旨
1. 日米の環境影響評価法の比較
  1.1. アメリカの環境影響評価法の日本への影響
  1.2. 手続きの流れ
  1.3. 法体系の中での位置づけ
  1.4. 環境要素の範囲
  1.5. 評価書類(EIS/EIR)の作成主体
  1.6. 環境影響評価書類の作成が必要な事業
  1.7. スクリーニング
  1.8. 代替案の役割
  1.9. 住民参加
  1.10. モニタリング
  1.11. 環境影響評価法の問題点
2. 環境影響評価法施行が環境訴訟に与える影響について
  2.1. 日本における環境論争の解決法
  2.2. 訴訟における環境アセスメントの役割
  2.3. 法施行による環境訴訟への影響の予測
3. 結論
脚注
参考・引用文献
図表リスト


要旨
 本稿ではまず、1997年6月13日に公布、1999年6月12日に施行された日本の環境影響評価法と、アメリカの1969年に公布されたNational Environmental Policy Act(NEPA)および1970年公布のCalifornia Environmental Quality Act(CEQA)との比較を行い、日本の環境影響評価法の特徴を明らかにした。
 次に環境論争を解決する一手段として訴訟をとりあげ、環境影響評価法が施行される前に提訴された訴訟を分析、整理し、原告の主張する理論と裁判所の論理の相違を明らかにした。環境影響評価法の施行が、今後の環境訴訟に与える効果については、施行前には存在していなかった環境影響評価の法的根拠が与えられる効果が予測された。しかし、NEPAやCEQAと比較すると、環境影響評価法では対象となる事業が限られていること、CEQAのように実行可能な範囲でもっともよい代替案を選ぶ義務がないこと、住民参加の規定が不十分であることなど、いくつかの課題が残されていることが明らかとなった。訴訟が環境論争を解決するための一手段となるためには、これらの課題について法修正を行い、司法制度の観点からは判決が出るまでの期間を短縮させる必要がある。


1. 日米の環境影響評価法の比較
 本稿では、1997年6月13日に公布、1999年6月12日に施行された日本の環境影響評価法(以下、環境影響評価法と呼ぶ)(脚注 1)と、アメリカの1969年に公布されたNational Environmental Policy Act(NEPA)(脚注 2)および1970年公布のCalifornia Environmental Quality Act(CEQA)(脚注 3)との比較を行った。

1.1. アメリカの環境影響評価法の日本への影響
 日本で環境影響評価制度が最初に問題になったのは、昭和40年代後半からで、アメリカのNEPAが日本にも影響を与えたと言われる(脚注 4)。環境庁による環境影響評価法を作成するための事前研究(脚注 5)においては、国内および海外の環境影響評価の現状と課題についての分析整理がおこなわれ、そこではアメリカ、カナダ、EU、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、中国、韓国の10カ国・地域の動向が主に分析された。アメリカの環境影響評価制度としてはNEPAが取り上げられており(脚注 6)、NEPAが環境影響評価法の基礎となり影響を与えたことがわかる。CEQAに関しては、環境庁が作成した報告書やそのほかの書類に、記述はみとめられない。

1.2. 手続きの流れ
 日本の環境影響評価法、米国のNEPA、CEQAのもとでの手続きの流れは、それぞれ図1〜3のようになる。いずれの場合も、スクリーニング、スコーピング、環境影響評価の実施、準備書(draft EIS/EIR(脚注 7))、評価書(final EIS/EIR)、省庁による事業の許認可等における審査という大まかな流れは同じである。以下に詳細は示すが、環境影響評価法、NEPA、CEQAの違いをまとめた表が表1である。

図1. 環境影響評価法の流れ(EICネットホームページ参照)
図2. NEPAの流れ
図3. CEQAの流れ(CERESホームページ参照)

表 1. 環境影響評価法と米国NEPAおよびCEQAとの比較
環境影響評価法 NEPA CEQA
法の性格 手続法 (平成九年法律第八十一号) 基本方針および手続きを規定 (42 U.S.C. 4321-4347) 基本方針および手続きを規定 (Pub. Res. Code Section 21000 et seq)
法を支えるガイドライン、法令、規制、要綱 環境庁の定める基本的事項、施行令、施行規則および主務省令 CEQ Regulations およびGuidance、他機関の定める regulations および guidance CEQA Guidelines および Resources Agency Regulations
他の環境法との関係 既存の法体系にあてはまるように特例を持つ(法第7章) すべての機関は他の法律をNEPAの目的に合うように再検討しなければならない(42 U.S.C. 4333) すべての機関が環境破壊を防ぐために十分な考慮をすることを要求 (Pub. Res. Code Sections 21000(g), 21003, etc.)
法により守られる環境の範囲 基本的に自然環境のみ(表 2参照) (環境基本法第14条) 歴史、文化および自然環境 (42 U.S.C. 4331) 陸、大気、水、鉱物、植物相、動物相、騒音、歴史的及び美的に重要なものを含む物理的状態 (Pub. Res. Code Section 21060.5)
EIS/EIRの作成責任をもつ主体 事業主体 (法第4条) 公共機関、基本的に連邦機関 (42. U.S.C. 4332) 公共機関、たいていは郡の機関 (Section 21000)
EIS/EIRの作成を必要とする事業 国の関与する特定事業であって、規模要件を満たすもの(表3参照)(法第2条) "Major Federal action" (CEQ Regulations 40 C.F.R. 1508.18) 環境に重大な影響を与え、許認可、規制あるいは補助金等により州の公共機関と関係のある公共及び民間の事業(Section 21006)
スクリーニング すべての第1種事業と、基本的事項と主務省令により定められた事業および地域特性に基づき主務省庁が必要と判断した第2種事業に環境影響評価が要求される(法第2章) カテゴリーおよびその他の免除規定、 FONSI、 mitigated FONSIのそれぞれに当てはまらなければEISの作成が必要となる (CEQ Regulations) カテゴリーおよびその他の免除規定、Neg Dec、mitigated Neg Decのそれぞれに当てはまらなければEIRが必要となる(CEQA Guidelines)
代替案の役割 あいまいに定義される(法第14条第1項7号) 明記される (42 U.S.C. 4332, (C) (iii)) 明記される (Pub. Res. Code Section 21001)
代替案あるいは緩和策の選択 法には特に規定はない。しかしながら基本的事項 (2.5.(3).ア.)は、事業者による環境への影響の考慮を要求している。 NEPAは、環境への悪影響を緩和したり、EISにおいて完全な緩和策を提示することの本質的な義務は課していない。 (40. C.F.R. 1502.14) 公共機関は実行可能な代替案や緩和策がある場合、その事業を認めてはならない。(Pub. Res. Code 21002)
住民参加 方法書、準備書、評価書を住民が縦覧できるように規定。住民は、方法書、準備書には意見書を提出し、準備書の記載事項を周知させるための説明会に参加することができる。(法第 7, 8, 16, 17, 18, 27条) 情報公開法にもとづきEISやそれに対する意見、その他の関連する文書を住民に公開しなければならない。(5 U.S.C. 552).住民は、Notice of Intent、スコーピング時の公聴会、draft EISに対する意見提出期間、draft EISおよびfinal EISに対する公聴会など、あらゆる機会に意見を提出することが可能である。 (40 C.F.R. 1506.6) 事業や代替案、緩和策に関連する情報が住民に公開されなければならない。住民は、draft EIRやNegative Declarationなど環境書類に対し意見を提出することが可能である。また、CEQAは公式の公聴会を開くことを要求していないものの、住民は公聴会に参加することが可能である。 (Pub. Res. Code Section 21003.1 and Guidelines Section 15202)
モニタリング 事業者は、不確実性が大きい場合には、モニタリング・プログラムを準備書、評価書に明記し、事業の許認可が下った後にも事後調査を行う。(基本的事項 3.2.(6)) 必要であれば、モニタリング・プログラムと実行プログラム(enforcement program)を採用し、Record of Decisionにまとめることが規定されている。(40 C.F.R. 1505.2) 環境への重大な影響を緩和したり避けたりするための変更や代替案を必要とする場合、mitigated negative declarationを採用する場合には、公共機関が報告プログラムあるいはモニタリング・プログラムを採用すると規定されている。 (Pub. Res. Code Section 21081.6)

1.3. 法体系の中での位置づけ
 平成4年にリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議」では、地球環境問題の顕在化に伴い、いかにして持続可能な開発を実現するかという大きな課題が認識されるようになった。これを受けてわが国では平成5年に環境基本法(脚注 8)が制定され、この中で初めて国全体の施策として環境影響評価が法律上位置づけられた(脚注 9)。これを受けて制定された環境影響評価法は、事業者が広範な人々から意見を聴取して事業者自らが評価を行い、国は事業者がした評価を環境に配慮したかどうか審査して事業の許認可をするという手続法(脚注 10)として法制化されている。これに対してNEPA、CEQAでは、手続きに関する条項とともに、国、州の環境に対する基本方針(脚注 11)も同時に法律の中で示されている。
 ちなみに、それぞれの法には詳細な手続きや評価書類(EIS/EIR)の記載内容、基準などを示す補助的な施行令、規則、要綱などが定められている。具体的には環境影響評価法では、環境庁の定めた「環境影響評価法に基づく基本的事項について」(脚注 12)、施行令、施行規則、その他の省庁の定めた主務省令が法を補足している。同様に、NEPAにおいてはCEQ Regulations(脚注 13)やGuidance(脚注 14)、その他の機関の規則(regulations)あるいは要綱(guidance)が、CEQAにおいてはCEQA Guidelines(脚注 15)やResources Agency Regulationsがその働きをしている。
 また、他の環境法との関係を言えば、環境影響評価法では、都市計画関連の場合(第39条から46条)、港湾計画の場合(第47,48条)、発電所の場合(第59条)には、環境影響評価の手続きがやや変則的となる特例として扱われ、既存の法体系に環境影響評価法が組み込まれたことがわかる。それに対して、アメリカのNEPAは他の法、規則、政策、手続きをNEPAにあわせることを義務づけ(脚注 16)、CEQAでも同様の趣旨(脚注 17)が法の中で述べられた。

1.4. 環境要素の範囲
 環境影響評価法のもとで環境影響評価の「直接の」対象となるのは、環境基本法が自然環境を保全することが目的であったこと(脚注 18)から、基本的に自然環境である(表2)。したがって、文化、歴史的遺産は他の法律で保護されていると考えられる。しかしながら、環境影響評価のための調査においては社会条件についても情報を収集し分析すること(脚注 19)、評価は事業者により実行可能な範囲内で行われるものとする(脚注 20)という「基本的事項」における条項に見られるように、社会経済的要素も間接的には考慮される。
 それに対し、NEPAではSection 101(脚注 21)に述べられているように、自然環境と同様歴史的、文化的環境も同時に保護されている。また同様に、CEQAでも「『環境(environment)』とは、提案されている事業が影響を与えるであろう地域に存在している、土地、空気、水、鉱物、植物相、動物相、騒音、歴史的あるいは美的に重要な対象を含む、物理的状態は意味する」(脚注 22)と規定し、その環境の保護と強化が目指されている(脚注 23)。

表2. 環境影響評価法で対象となる環境要素の範囲(EICネットホームページ参照)

1.5. 評価書類(EIS/EIR)の作成主体
 環境影響評価法では、当該事業の事業主体(脚注 24)が評価書類(方法書、準備書、評価書)を作成することになっている。これに関しては、私企業の場合は利益が最優先であるので、公平な環境影響評価ができないのではという懸念があるが、これは環境影響評価、環境保護を私企業の社会的責任として定着させようという法の意図からの仕組みである。また、事業者が環境影響評価の結果を自らの事業計画や環境保全対策に容易に反映できることも作成主体が事業主体であるひとつの理由である。現在、世界のほとんどの国がこの考え方を採っている(脚注 25)。
 これに対して、NEPAやCEQAでは公共機関が評価書類(EIS/EIR)を作成する責任を持つ(脚注 26)。この方法には、行政が企業の環境影響評価をより中立な立場で指導することができるという利点がある。

1.6. 環境影響評価書類の作成が必要な事業
 環境影響評価法ではあらかじめ12種類の事業が掲げられ、さらにその他政令で定められる事業がある(表3)。第1種事業は必ず評価書類(EIS)が必要になるが、第2種事業は、次の項で述べるように、評価書類が必要かどうかの判定が「基本的事項」および主務省令にしたがって行われる。そして、この事業種、規模による判定のほか、国の関与があることが条件である。その条件には、免許、特許、許可、認可、承認または届出(脚注 27)が実施にさいし必要な事業、国の補助金の交付の対象となる事業、特別の法律により設立された法人(国が出資しているものい限る)が行う事業であることが含まれる(脚注 28)。
 これにたいしてNEPAでは、CEQ Regulationsに定義されている「重大な連邦の事業(major Federal action)(脚注 29)」がEISの必要な事業となる。「重大な連邦の事業」には、環境に重大な影響を与える可能性のあり、潜在的に連邦政府の指導と責任をともなう事業が含まれる(脚注 30)。
 CEQAでは、Friends of Mammoth v. Board of Supervisors(脚注 31)において、許可あるいはその他の認可が必要な民間の事業にCEQAが適用され、EIRを作成する必要が生じるのかが争われた。裁判所は、CEQAとほぼ同じ形態を持つNEPAに注目し、NEPAのガイドラインに定義された「事業(project)」には、貸与、許認可、あるいはその他の使用許可が含まれていることをあげた。そして、裁判所はEIRが必要とされる「事業」とは、直接所有利益があるか、許認可、規制、あるいは民間事業への資金援助があるかといった、何らかの最小限の繋がりが政府とある事業のことであると説明した。この結果1998年のCEQAの改定ではsection 21006が追加された。
 環境影響評価法の定義の利点はどのような事業にEISが必要になるのかがはっきりしているということである(脚注 32)。一方、NEPAやCEQAでは、環境に重大な影響をあたえる可能性があるかを判断することが最も重要である。Minnesota Public Interest Research Group v. Butz(脚注 33)においては、裁判所は、「Major Federal action」について「連邦の事業の規模を考慮することと、環境への影響を分けて考えることは法の目的、つまり環境の劣化、健全性および安全性に関する危険性、あるいはその他の望ましくなく意図していない結果を引き起こすことなしに、できるだけ広範囲にわたる環境の有益な利用を達成するという目的に沿わない。」と結論づけた。このような定義の仕方は、法本来の目的に沿った本質的な定義の仕方である。この定義によって、さまざまな形態の事業がカテゴリーの指定から抜け落ちる危険性、ぎりぎりの規模でアセスメントを逃れようとする事業者の抜け道を作ることを防ぐことができる。
 しかしながら、このような本質的な定義の仕方においては、EIS/EIRが必要かどうかの時点で議論が巻き起こり訴訟にまで発展する可能性が高い。Fulton(1991) (脚注 34)が指摘するように、CEQAのこのような性格は、カリフォルニア州の環境法、計画法の中でCEQAをもっとも訴訟に結びつきやすいものにしている。これに関し、青山は、「(アメリカには)連邦行政に判断の裁量を与える代わりに、司法が最終的にその判断を審査するという歴史があ[る]。日本にはこういう風土も歴史もないので、ある程度、必須科目(第一種)、選択科目(第二種)という方法をとらざるをえなかった」(脚注 35)のではないかと述べている。訴訟を避ける日本と訴訟を頻繁に利用するアメリカの社会・文化的違いの一端が、法律の作られ方にも影響していることが観察された。

表3. 環境影響評価法の対象事業(EICネットホームページ参照)

1.7. スクリーニング
 先ほどの項でも述べたように、環境影響評価法におけるスクリーニングでは、事業種と規模により第一種事業と第二種事業にあてはまる事業が抽出される(表3)。第一種事業は必ずEISの作成を行うことになるが、第二種事業は事業者が事業の概要を書面により届け出、EISの作成を行うかどうかの判定を管轄行政庁に求める。さらに、その判断に際し所管行政庁は、該当する都道府県知事に意見を求めることになっている(脚注 36)。第二種事業の判定基準は、「基本的事項」に定められる事業特性と地域特性から構成されており(脚注 37)、具体的な基準は事業種ごとに主務省令(脚注 38)において定められている。NEPAやCEQAにみられるような「mitigated Finding of No Significant Effect (FONSI)」や「mitigated Negative Declaration (Neg Dec)」といったミティゲーションによりEIS/EIRの作成を免除する方法はない。
 アメリカのNEPAやCEQAのスクリーニングでは、まずその活動が「事業(an action/a project)」であるかがカテゴリーや法律の規定に照らし合わせて決められる(図2、図3)。もしその活動がEIS/EIRを必要とする可能性がある事業であれば、「Environmental Assessment」や「initial study」と呼ばれる簡易な環境影響評価によりその活動が環境に重大な影響を与える可能性があるかどうかが判断される。もしその活動が環境に重大な影響を与える可能性がなければ、EIS/EIRは免除され、「FONSI」や「Neg Dec」が作成される。また、もしその活動がミティゲーションにより環境に重大な影響を与える可能性がなければ、その決定とその理由を記した「mitigated FONSI」や「mitigated Neg Dec」が作成される。そして、もしその活動が環境に重大な影響を及ぼす可能性があったり、その可能性の判断が不確かであったりする場合には、EIS/EIRが作成されることになる。

1.8. 代替案の役割
 環境影響評価法では、「環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)」(脚注 39)というあいまいな定義にとどまっており、それが代替案の比較検討を意味するとは読み取りにくい状況になっている。しかしながら、法の公布後、環境庁により作成された「基本的事項」では、代替案の比較検討が明記された(脚注 40)。一般的に言えば、国の代替案の役割の重要性に関する認識は、環境庁を除き、いまだに低い。例えば、吉野川第十堰の問題(脚注 41)をめぐっては、建設省が代替案の比較検討をわざと避けているとの批判が住民から起こった。
 これに対し、NEPAでは、法の目的のなかで「すべての連邦政府の機関は、立法とその他の人間の環境の質に重大な影響を与える重大な連邦の事業(major Federal actions)への提案についてのすべての推薦事項や報告の中に、提案された事業に対しての代替案についての詳細な記述を責任係官によって入れるべきこと。(脚注 42)」と記述している。また、CEQAにおいては、Inyo County v. City of Los Angelsで裁判所は「EIRの主要な機能はすべての合理的な代替案が責任係官や委員会によって完全に評価されることである。(脚注 43)」との判断を示した。
 代替案の選び方に関しては、環境影響評価法には特に規定がない。さらに「基本的事項」(脚注 44)は、環境に一番良い案を選ばなくてはならないというような義務はひとつも課していない。その代わりに、「基本的事項」は事業者による環境への影響の考慮を確保している。同様に、NEPAにおいてもRobertson v. Methow Valley Citizens Councilで裁判所は、「NEPAは環境への悪影響を緩和したり、EISのなかで完全に緩和策を発展させたりすることを機関に本質的な義務として課してはいない。(脚注 45)」と述べた。
これに対し、CEQAでは、「公共機関は事業の重大な環境への影響を著しく低減するであろう実行可能な代替案あるいは実行可能な緩和策が存在する場合、そのような事業を認めるべきではないというのが、州の政策であるということを立法府は認め、宣言する。(脚注 46)」とし、さらに厳格な代替案の選び方を要求している。

1.9. 住民参加
 環境影響評価法では、方法書、準備書、評価書を住民が縦覧できるように定めている。また、住民は縦覧された方法書、準備書には意見書を提出することができる(脚注 47)。しかしながら、許認可等の審査が行われる前の評価書に関しては縦覧はできるが、意見を述べる機会は法律上設定されていない(脚注 48)。また、住民は準備書の記載事項を周知させるための説明会に参加することができるが(脚注 49)、法の中では説明会はあくまでも説明をするための会であり、公衆の意見を取り入れるための会ではない。もちろん、事業者は自らの意思で公聴会を開くことも可能であるが、法には規定されていない。
 NEPAでは、EISや受け取った意見、あらゆる下敷きとなった書類を、情報公開法(the Freedom of Information Act)(脚注 50)に従い、住民に公開する必要がある(脚注 51)。個人はEIS作成の告知(Notice of Intent)、スコーピングのための公聴会、draft EISの住民が意見を提出する期間(public review period)、draft EISやfinal EISに対する公聴会を含むあらゆる機会に意見を提出することが可能である(脚注 52)。CEQ Regulationsによれば、機関は公聴会(public hearings)や公会(public meetings)を適切だと判断した場合、あるいは法により要求された場合、そのような会を開いたり、後援したりすることになっている(脚注 53)。
 CEQAでは、「事業、代替案、緩和策の重大な影響に関する情報を公開するべきこと。個人は、draft EIRやNegative Declarationを含むがそれに制限されない、環境書類(environmental document)に対し、意見を提出することが可能である。(脚注 54)」と定められている。また、CEQA Guidelinesによれば、「CEQAは住民による再検討の過程(review process)のいかなる段階においても公式の公聴会を要求しない。住民の意見は書面によるものに制限することが可能である。(脚注 55)」しかしながら、CEQA guidelinesはCEQAの過程の必要不可欠な部分として住民参加を奨励し、機関の活動に関係する環境問題に関しての住民の反応を受け取り、評価することを要求している(脚注 56)。
 住民に公開されている文書、住民が意見を提出できる機会に関しては、環境影響評価法ではそれらが限られている点で劣っていた。また、公聴会に関しては、環境影響評価法、CEQAがともに公聴会を開くことを義務付けていない。しかしながら、CEQAでは住民参加を奨められており、住民の反応に応えることも要求されている。Concerned Citizens of Costa Mesa, Inc. v. 32nd District Agricultural, Assoc. (脚注 57)では、裁判所は市民は環境保護に重要な貢献をすることができるという信念と、民主的意思決定の表明に基づき、住民がCEQAの過程において「特権的地位」を持っていることを強調した。環境影響評価法の目的は事業者に事業の環境への影響を考慮させることであるから、住民参加は法の主な関心事ではない。しかしながら、住民に参加の機会を積極的につくっていくことが日本の重要な課題である。

1.10. モニタリング
 環境影響評価法では、不確実性が大きい場合には、モニタリング・プログラムを準備書、評価書に明記し、事業の許認可が下った後にも事後調査を行わせるという仕組みをとり入れている(脚注 58)。NEPAでは、CEQ Regulationsによれば「何らかのミティゲーションに該当する場合は、モニタリング・プログラムとどのように実行するかのプログラム(enforcement program)を採用し、Record of Decisionにまとめること。(脚注 59)」と定められている。したがって、mitigated FONSIにはモニタリング・プログラムは記される必要がない。これに対してCEQAでは、「事業のなかで環境への重大な影響を緩和したり避けたりするための変更や代替案を必要とする場合、あるいはmitigated negative declarationを採用する場合には、公共機関は報告のためのプログラムあるいはモニタリング・プログラムを採用すること(脚注 60)」と定められている。

1.11. 環境影響評価法の問題点
 環境影響評価法には法の本質的な意図と反するような理屈に合わない点がいくつかある。まず、環境影響評価法では例外的な手続きが、都市計画関連の場合(第39条から第46条)、港湾計画の場合(第47,48条)、発電所の場合(第59条)に定められているのであるが、このうち都市計画関連の場合、港湾計画の場合に関しては、それぞれ都市計画手続きとの同時実施、港湾法における環境影響評価手続との整合性という手続き上の効率化を図るという理由がある。しかしながら、発電所の場合には通商産業省がこれまで指導してきたことが理由としてあげられ、このような特例が他省庁に認められず通産省だけに認められる理由は特に見つからない。
 また、代替案の作成、評価は、NEPA/CEQAに見られるように環境影響評価の要であり、環境影響評価法の「環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)」(脚注 61)というあいまいな表現は不適切であった。事実、環境庁はより明確に代替案を作成し、評価することを法の中で規定しようとしていた。例えば、法の制定前、1997年2月には、中央環境審議会が「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)」において、代替案の役割の重要性を認識した記述(脚注 62)をしていたし、法の公布後、環境庁により作成された「基本的事項」には、代替案の比較検討が明記されている(脚注 63)。
これらの不合理な点は、法の制定過程で環境庁の他省庁や与党、産業界との交渉の妥協の産物である。結果として、法の意図がこれらの条項において見えにくくなったことは不幸であった。これに関連して、青山は、環境影響評価法は経済界に見方をする政府案が採択されたことによりNEPAにはるかに及ばないシステムになってしまったと批評している(脚注 64)。
 一方、アメリカのNEPAやCEQAは1969年、1970年に公布され、明確な環境保全政策の宣言のもとで深く広い影響を与えてきた(脚注 65)。そして、法の中で現われたさまざまな問題点は、その後の法の修正、行政の規制やガイドラインにより、また裁判所の法の解釈により、円滑かつ有効な法の運用の試みが続けられてきた。また、NEPA、CEQAと並び環境保全のための強力なツールである1973年のEndangered Species Act (ESA)も同様に、当初は1978年のTVA v. Hill(脚注 66)に見られるように、明解な主旨が貫ら抜き通されていた。ESAの1982年のIncidental Take Permitに関する修正も、そのような手段が必要であるという議論の末あとから加わった。
 これらの法の制定の仕方の違いがなぜ起きたのかは、日本とアメリカの社会的、文化的違いとも言えるかもしれない。すなわち、日本には伝統的に内部調整をしがちな社会があり、アメリカには情報を公開した上で議論をするという社会がある。内部調整が多くの利点を持つことは確かであるが、内部調整を行うとしてもその情報を公開し、クリーンな議論を深めていくことが必要であろう。


2. 環境影響評価法施行が環境訴訟に与える影響について
2.1. 日本における環境論争の解決法
 アメリカと比較し、日本では環境論争は訴訟よりもむしろ多数の市民らによる環境保護への働きかけ、交渉により解決されることが多い。藤前干潟の場合にも、市民環境団体が名古屋市や環境庁にたいしマスコミや嘆願書を通じて干潟の保護を訴え、次第に高まった市民の声が環境庁を後押しし、市は事業を再考せざるをえなくなった(脚注 67)。このような姿勢の一般的な背景には、Davis (1996) (脚注 68)が指摘しているように、歴史的に対立を好まない文化や、結審するまで時間がかかるといった制度上の不備が考えられる。しかしながら以下に述べるように、もうひとつの見方は、環境影響評価が法制化されていなかったことが、日本において市民らによる環境保護運動と当局への交渉が環境論争の主要な解決法となっている理由である。

2.2. 訴訟における環境アセスメントの役割
 環境影響評価法施行後の判決は未だに出ていなかった。そこで、ここでは環境影響評価法が施行される前までの環境アセスメント(環境影響評価)の役割を6つの判例を使って、環境影響評価制度の歴史的変遷とともに分析した。
 昭和40年代日本では公害問題が深刻化し、昭和47年6月には「各種公共事業に係る環境保全対策について」という閣議了解がなされ、その中で公共事業について環境アセスメントをする方向が示された(脚注 69)。また、事業の実施にあたって事前の環境影響評価が必要であるとした最初の判決(脚注 70)は、昭和47年に津地方裁判所四日市支部が下した四日市の公害訴訟にたいする判決で、判決では大気汚染物質を副生することが避け難い工場建設の際には、事業者は事前に環境影響評価について調査を行うべき注意義務があるとされた(脚注 71)。
 その後、昭和47年から48年にかけて、具体的な内容には欠けるが環境影響評価を義務付けるものが現れ、港湾法(脚注 72)、公有水面埋立法(脚注 73)、工場立地法(脚注 74)の一部が改正され、瀬戸内海環境保全臨時措置法(脚注 75)が制定された。自治体では、昭和51年川崎市がいちはやく環境影響評価制度の条例(脚注 76)を制定し、その動きは他の自治体にも徐々に広がっていった。
 昭和54年判決の宇和島市ごみ焼却場建設差止に関する訴訟(脚注 77)では、原告は環境アセスメントを市が実施していなかったこと、住民の同意を得ていなかったことを理由に差止を求めた。しかしながら、裁判所は公害対策基本法(脚注 78)や自然環境保全法(脚注 79)の地方公共団体にたいする環境保全義務、昭和47年の閣議了解によって直ちに差止を認めるほどの法的義務はないとの判断を示した。このほかにまた、原告はごみ焼却場により環境権(脚注 80)、人格権(脚注 81)、財産権が侵害されるとして差止を求めた。これにたいして裁判所は、環境権については認めなかったが、人格権、財産権に基づき受忍限度を超える健康上・財産上の損害を受ける蓋然性が高いことを理由に住民らの求めた差止申請を認めた。またこの判決において裁判所は、債務者が環境アセスメントを行っていなかったことを、原告の被害と施設の必要性の比較衡量する際の重要な判断材料として扱った。しかしながら、判決では同時に、ゴミ焼却場の建設が原告らに及ぼす被害の蓋然性は高いことが認められ、施設が原則として建設を許すべきものでないと判断されたとしても、市によって適切な環境アセスメントが行われ、住民に対しても誠意のある説明をし、その協力を取り付けるべき努力等をしたなどの事情があれば、例外的に建設を許す可能性もあることも示唆した。
 昭和55年判決の伊達火力発電所建設差止に関する訴訟(脚注 82)では、原告らは「地域の環境に長期的かつ重大な影響を与えるおそれのある開発行為をするについては、事業主体において、事前に、当該行為によって環境にどのような影響が生ずるかを科学的に調査するとともに、調査結果のすべてを周辺地域の住民に公表して、それに対する反論の機会を十分与え、住民の納得を得る義務がある」と主張した(脚注 83)。しかしながら、裁判所は宇和島市の判決と同様に「環境影響評価手続きについて制定法の定めない現段階においては、にわかに首肯しがたい」とし、発電所により住民が受忍限度を超える被害を被る蓋然性も高くないとして原告らの請求を棄却した。
 昭和59年判決の小牧市共同ごみ焼却場操業禁止に関する訴訟(脚注 84)では、申請人らは被申請人の行った環境アセスメントは不適切であり、申請人に受忍限度を超える被害を与えるとして、環境権、人格権、財産権に基づき差止を請求した。裁判所はまず、被申請人の実施した環境アセスメントには住民が参加しておらず、またアセスメントの規模、内容も極めて不十分であるとした(脚注 85)。つぎに、そのようなアセスメントからは公害発生の有無の予見が不可能であり、公害発生予防のための種々の改善策を実施することもできないとの見解を示した。そして、たとえ差止を受ける側の損害及び社会公共的損失を勘案しても、公害発生による受忍限度を超える被害をもたらす蓋然性が大であると判断し、人格権、財産権に基づき申請人の操業禁止に関する仮処分を認めた。
 昭和51年起訴、昭和61年判決の松原市ごみ焼却場建設差止に関する訴訟(脚注 86)では、申請人らは不適切な環境アセスメント、環境権、人格権、財産権の侵害に基づき市のごみ焼却場建設の差止を求めた。これにたいし裁判所は被害が発生するおそれの疎明がないとし、申請を却下した。環境アセスメントについては、裁判所はまず、「申請人らは松原市が十分な環境アセスメントを実施していないことにより直ちに新清掃工場の建築が違法となるかのように主張するが、現行法上は[中略]法的根拠は存在しない」との見解を示した。さらに、アセスメントの代替措置、代替地の検討が不十分であるという申請人らの主張については、新清掃工場を建設することにより申請人らに受忍限度を超える被害の生ずることが疎明されない以上、それが建設を違法たらしめるとは言えないとした。
 この間、環境庁は、昭和56年に環境影響評価法案を国会に提出した。しかし、両院での審議がなかなか進まずに、何回か継続審議になった後、昭和58年の衆議院の解散で法案は廃案となった。結局法律にならなかったことから、政府は閣議決定という形で「環境影響評価の実施について」という決定をし、これに基づくアセス手続きが昭和59年から始まった。
 平成10年判決の和白干潟に関する訴訟(脚注 87)では、申請人らは不適切な環境アセスメントが環境に重大な影響を与え、申請人らの環境権、人格権、財産権、幸福追求権(脚注 88)が侵害されることを根拠とし、福岡市の和白干潟を含む博多湾の開発の差止を求めた。この裁判では、公有水面埋立法と閣議決定によるアセスメントがそれぞれ扱われた。まず、公有水面埋立法に基づくアセスメントに関しては、裁判所はアセスメントの内容に軽視することができない問題があることを認めたが、被申請人のアセスメントは一応の義務を果たしていると判断した。また、閣議決定によるアセスメントに関しては、これまでの判例と同様、行政機関内部の取り決めに過ぎないためあくまでも法的拘束力を有しない行政指導であるとした。以上のように、裁判所は環境アセスメントの違法性を認めることはなく、原告らの申請を棄却した。
 以上、環境影響評価法施行前の6つの判例(表4)からは、裁判所と原告の論理に違いが存在していることが明らかになった(図4)。原告の論理のひとつは、アセスメントの欠如・不備、あるいは、手続き上住民の参加がなかったことが、公害対策基本法、自然環境保全法における地方公共団体の環境保全義務、昭和47年閣僚了解、昭和59年閣議決定等の定めた環境影響評価の方針に反し、その違法性から差止請求等が認められるという論理であった。しかしながら、いずれの判例でも、和白干潟の公有水面埋立法の場合を除き、環境アセスメントを義務づけた法がないことを理由に裁判所はこの論理を認めなかった。
 一方、裁判所が用意した論理は、「原告が被害を受ける蓋然性は高いか?」、「被害の程度と施設の公共性・必要性を比較衡量し、原告の受忍限度を超える被害を生じる蓋然性は高いか?」という2つのテストに対しいずれも蓋然性が高いと認められれば、差止請求が認められるというものであった。この論理の中では、環境影響評価は、宇和島市や小牧市の判例のように、環境アセスメントの欠如あるいは不備が受忍限度を超える被害を生じる蓋然性が高いと判断する材料となったり、松原市の判例等のように被申請人の申請人の主張に対する反証材料を提供する役割を果たしていた。
 しかしながら、このような裁判所の論理には大きな欠点があった。それは、事業者が不適切なアセスメントを行い、その結果環境保全への対策が不十分であったとしても、原告がその事業によって受忍限度を超えるほどの被害が生ずる可能性が高いことを証明しない限り、差止請求が認められないということである。また、事業が完成する前の段階で、技術的情報を持たない原告がこのような証明を行うことは難しく、結審するまでの期間が長いことともあいまって、訴訟は環境論争を解決するための手段として機能してこなかった。

表4. 環境影響評価制度の変遷
S 47. 6. 6 公共事業における環境影響評価の実施を閣議了解
S 47. 7. 24 四日市ぜん息損害賠償請求事件判決
S 47〜48 港湾法、公有水面埋立法、工場立地法の改正、瀬戸内海環境保全臨時措置法の制定
S 51. 1. 「川崎市環境影響評価に関する条例」の制定
S 54. 3. 22 宇和島市ごみ焼却場建設差止仮処分申請事件判決
S 55. 10. 14 伊達火力発電所建設等差止請求訴訟判決
S 56. 4. 28 環境影響評価法案の国会提出(第94回国会)
S 56〜58 法案が国会で継続審議
S 58. 11. 28 法案廃案となる(第100回国会)
S 59. 4. 6 小牧市共同ごみ焼却場操業禁止仮処分事件判決
S 59. 8. 28 「環境影響評価の実施について」閣議決定
S 61. 6. 16 松原市ごみ焼却場建設差止等仮処分申請事件判決
H 5. 11. 19 環境基本法公布・施行
H 9. 6. 13 環境影響評価法公布
H 10. 3. 31 和白干潟損害賠償等請求及び公金支出差止請求事件判決
H 11. 6. 12 環境影響評価法施行
(環境庁、環境影響評価法の制定の経緯http://www.eic.or.jp/eanet/assess/law/ex-150.htmlに修正、追加)

図4. 原告と裁判所の論理の不一致

2.3. 法施行による環境訴訟への影響の予測
 1999年の環境影響評価法の施行により環境影響評価の手続きが法的に義務づけられたことは裁判所の論理に次のような変化を引き起こすであろう(図5)。この論理においては環境影響評価法に基づき環境アセスメントの手続き上の不備を理由に差止請求を認める可能性が出てくる。さらに、「基本的事項」や主務省令に基づいて、不十分な環境保全対策が、差止請求を認める理由となる可能性もある。
 しかしながら、NEPAあるいはCEQAとの比較からは、環境アセスメントをめぐる訴訟において、次の3つの限界が明らかとなった。まず最も大きな限界は、環境影響評価法の定めるスクリーニングの過程で、多くのプロジェクトが環境アセスメントの対象から抜け落ち、環境アセスメントが法的には義務づけられないということがあげられる。表3にあるように、環境影響評価法では基本的に国による大規模な公共事業が対象である。NEPAやCEQAと異なり、国との関係のほかに事業種及び規模によってスクリーニングを行う環境影響評価法の場合、環境に重大な影響を与える事業であっても環境アセスメントが要求されない可能性がある。貴重な生息地における森林伐採、川の上流におけるゴルフ場開発、周りからよく見える山の尾根での塔の建設、40ヘクタール未満の湿原の埋め立て、マスタープランにおける自然保全地域の開発地域への指定変更などはそのような事業の例である。このような欠点を補うために、地方自治体では独自により小さな規模の事業や違った事業種を対象とした条例を制定している(脚注 89)。しかしながら、数ヶ所の地方自治体では行政指導により環境アセスメントを行っており、いくつかの自治体は独自の環境アセスメント制度を持っていない(脚注 90)。
 次に、もうひとつの限界は、CEQAのように「公共機関は事業の重大な環境への影響を著しく低減するであろう実行可能な代替案あるいは実行可能な緩和策が存在する場合、そのような事業を認めるべきではないというのが、州の政策であるということを立法府は認め、宣言する。(脚注 91)」という、積極的に環境に対する影響を最小にしようとする条項が、環境影響評価法および「基本的事項」にないことである。これに従えば、実施可能なよりよい代替案が存在していたとしても、事業者が環境に重大な影響を与えない代替案を選ぶ限り、その案を選ぶ義務はない。
 最後に、環境影響評価法においては住民参加がもうひとつの限界である。環境影響評価は事業者に自主的に環境への配慮をさせることが目的である。それゆえに、方法書、準備書の広告、縦覧、住民からの意見書の受け入れ、評価書の広告、縦覧、説明会の実施が行われていれば、法律上の義務は果たしたと考えられる。住民の意見書をどこまで採り入れるか、公聴会を行うかは、事業者の意思に任されており、従来から訴訟において原告の主張であった不十分な住民参加は、引き続き差止の理由にはならないことが予想される。

図5. 予測される裁判所の論理


3. 結論
 Davis (1996) (脚注 92)が指摘するように、日本には訴訟を避ける文化が伝統的に存在している。それが、日本においては環境論争の解決手段として、交渉が最もよく利用される理由のひとつでもあった。
 しかしながら、もう一つの見方は、環境アセスメントに法的拘束力がないこと、判決が出るまで時間がかかることが理由で、日本の環境保護団体は訴訟を利用したいにもかかわらず、有力な手段として利用できなかったということである。今回の環境影響評価法の施行により、環境アセスメントの手続き、および内容の不備が裁判所に事業の差止を決断させる理由となることが予想され、訴訟が環境保護団体にとってより有効な手段となることが期待される。しかしながら、環境影響評価法には、NEPAやCEQAに比較すると、対象となる事業が限られていること、CEQAのように実行可能な範囲でもっともよい代替案を選ぶ義務がないこと、住民参加の規定が不十分であることなどまだいくつかの課題が残されている。またこれに加えて、判決が出るまでの期間を短縮させることも、司法制度の重要な課題である。
 Harashina(1998)が述べているように、環境影響評価法は事業者に自主的に環境への配慮をさせることが目的であるものの、環境情報を公開し市民の意見を反映させるシステムとして法制化されたことは大きく評価できる。NEPAおよびCEQAの比較から明らかとなった課題が、今後の法の修正により改善されることに期待する。


脚注
1 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)


2 The National Environmental Policy Act of 1969, as amended (Pub. L. 91-190, 42 U.S.C. 4321-4347, January 1, 1970, as amended by Pub. L. 94-52, July 3, 1975, Pub. L. 94-83, August 9, 1975, and Pub. L. 97-258, Section 4(b), Sept. 13, 1982)

3 The California Environmental Quality Act, Public Resources Code 21000 et seq.

4 森島昭夫他. 環境影響評価法をめぐって. ジュリスト No. 1115. 有斐閣. 1997. p.4.

5 環境庁環境影響評価制度総合研究会. 環境影響評価制度の現状と課題について−環境影響評価制度総合研究会報告書. 1996年6月. http://www.eic.or.jp/eanet/assess/study/index.htm

6 NEPAに対しては、とくに対象事業の範囲、環境影響評価手続の実施時期、代替案の比較、影響の緩和措置、影響の重大性の定義が吟味された。

7 評価書類(準備書および評価書を含む)はNEPAではEnvironmental Impact Statement (EIS)、CEQAではEnvironmental Impact Report (EIR)と呼ばれる。

8 環境基本法(平成五年法律第九十一号)

9 環境基本法 第20条 (環境影響評価の推進)
国は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
10 森島昭夫. 環境影響評価法までの経緯(1). ジュリスト No. 1115. 有斐閣. 1997. pp. 25-30.

11 NEPA Title I Sections 101 to 105, 42 U.S.C. 4331 to 4335; CEQA Chapter 1, Cal. Pub. Res. Code Sections 21000 to 21005.

12 基本的事項は、1)第二種事業の判定の基準、2)環境影響評価の項目等の選定の指針、3)環境の保全のための措置に関する指針のそれぞれに関し、基本となるべき事項を定め公表したもので、各省庁はこれを受けて省令を定めた。

13 40 C.F.R. 1500 et seq.

14 例えば、Memorandum: Forty Most Asked Questions Concerning CEQ's NEPA Regulations (40 Questions). 46 Fed. Reg. 18026 (March 23, 1981) as amended, 51 Fed. Reg. 15618 (April 25, 1986).

15 Administrative Code Section 15000 et seq.

16 NEPA Section 103, 42 U.S.C. 4333.
連邦政府のすべての機関は、現在の法に定められた権威、行政規則、現在の政策と手続きにこの法の目的と条項に反するような欠陥あるいは不一致があるかどうかを再検討し、1971年7月1日までにこの法の表明する意図、目的、手続きに沿うのに必要な権威、政策をとり入れる方法を大統領に提案するべきこと

17 Pub. Res. Code Sections 21000(g)
CEQAはすべての機関に環境の破壊を防ぐために十分考慮することを必要とする
(その他、Section 21003等にも同様の趣旨の条項があり、NEPAと同様に既存の法を見直すことが要求されている)(カリフォルニア州弁護士Jan Stevensへのインタビューより)

18 環境基本法第14条
一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。二 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。三 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。

19 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 2.1.(4). 1997年12月12日.
調査は、選定項目について適切に予測及び評価を行うために必要な程度において、選定項目に係る環境要素の現状に関する情報並びに調査の対象となる地域の範囲の気象、水象等の自然条件及び人口、産業、土地又は水域利用等の社会条件に関する情報を、国、地方公共団体等が有する既存の資料等の収集、専門家等からの科学的知見の収集、現地調査・踏査等の方法により収集し、その結果を整理し、及び解析することにより行うものとする。

20 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 2.5.(3).ア1997年12月12日.

21 NEPA Section 101, 42 U.S.C. 4331.
すべての実行可能な手段を用い、国家の政策に必要なその他の考慮に従い、国家が以下のことを行うことを可能にするために、連邦の計画、機能、プログラム、資源を改良しコーディネートすることは、連邦政府の絶えることのない責任である。[省略]
4.われわれの国家的遺産の重要な歴史的、文化的、自然的側面を保護し、多様性をもつ環境とそれぞれの多様性をできる限り可能な場所において維持すること。

22 CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21060.5.

23 CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21000 (e)

24 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第2条第5項
国が行う事業にあっては当該事業を実施する行政機関(地方支分部局を含む)の長、委託にかかわる事業にあってはその委託をしようとするものとする

25 環境庁. 環境影響評価制度の現状と課題について−環境影響評価制度総合研究会報告書. 1996年6月. http://www.eic.or.jp/eia/study/inst/istr3x4.htm#2

26 NEPA Section 102. 42. U.S.C. 4332. および CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21000.

27 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第2条第2項第2号イ
当該届出に係る法律において、当該届出に関し、当該届出を受理した日から起算して一定の期間内に、その変更について勧告又は命令をすることができることが規定されているものに限る。

28 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第2条第2項

29 CEQ Regulations. 40 C.F.R. 1508.18

30 Bass, R. and A. Herson. Mastering NEPA: a step-by-step approach. Solano Press Books, Point Areana, California. 1993. p.27

31 Friends of Mammoth v. Board of Supervisors, 8 Cal. 3d 247 (1972)

32 第2種事業に関する判定の基準は「基本的事項」および主務省令に定められている。

33 Minnesota Public Interest Research Group v. Butz, 498 F.2d 1314 (8th Cir. 1974)

34 Fulton, W. Guide to California Planning. Solano Press Books, Point Arena, Califorinia. 1991. p.151.

35 青山貞一 et al. 環境影響評価法をめぐって. ジュリスト No. 1115. 有斐閣. 1997. p.12.

36 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第4条

37 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 1.2. (1997年12月12日)
■事業特性に関する判定基準
* 当該事業が、同種の事業の一般的な事業の内容と比べて環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある場合(例えば、当該事業において用いられる技術、工法等の実施事例が少なく、かつ、その環境影響に関する知見が十分でないもの)
* 当該事業が、他の密接に関連する同種の事業と一体的に行われることにより、総体としての環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある場合
■地域特性に関する判定基準
* 環境影響を受けやすい地域又は対象が存在する場合(例えば、閉鎖性の高い水域、人為的な改変をほとんど受けていない自然環境、野生生物の重要な生息・生育の場としての自然環境、学校、病院、住居専用地域、水道原水取水地点)
* 環境の保全の観点から法令等により指定された地域又は対象が存在する場合
* 既に環境が著しく悪化し、又はそのおそれが高い地域が存在する場合(例えば、環境基本法(平成五年法律第九十一号)に基づき定められた環境基準の未達成地域)

38 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第4条第9項
主務省令は、第二種事業の種類及び規模、第二種事業が実施されるべき区域及びその周辺の区域の環境の状況その他の事情を勘案して判定が適切に行われることを確保するため、判定の基準につき主務大臣(主務大臣が総理府の外局の長であるときは、内閣総理大臣)が環境庁長官に協議して定めるものとする。

39 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第14条第1項第7号ロ

40 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 2.5.(3).ア. 1997年12月12日.
建造物の構造・配置の在り方、環境保全設備、工事の方法等を含む幅広い環境保全対策を対象として、複数の案を時系列に沿って若しくは並行的に比較検討すること、実行可能なより良い技術が取り入れられているか否かについて検討すること等の方法により、対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれのある影響が、回避され、又は低減されているものであるか否かについて評価されるものとすること。

41 徳島県吉野川の老朽化した堰をめぐる治水施設に関する論争

42 NEPA Section 102, 42 U.S.C. 4332, (C) (iii)

43 Inyo County v. City of Los Angels,139 Cal. Rptr. 396 (1977)

44 脚注40 参照. 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 2.5.(3).ア. December 12, 1997

45 Robertson v. Methow Valley Citizens Council, 490 U.S. 332, 109 S.Ct 1835 (1989)

46 CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21002

47 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第7、8、16、18条

48 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第27条

49 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第17条

50 5.U.S.C. 552

51 CEQ Regulations 40 C.F.R. 1506.6 (f)

52 Bass, R. and A. Herson. Mastering NEPA: a step-by-step approach. Solano Press Books, Point Areana, California. 1993. pp.20-21

53 CEQ Regulations 40 C.F.R. 1506.6 (d)

54 CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21003.1

55 CEQA Guidelines Section 15202 (a)

56 CEQA Guidelines Section 15201

57 Concerned Citizens of Costa Mesa, Inc. v. 32nd District Agricultural, Assoc. (1986) 42 Cal. 3d 929

58 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 3.2.(6). (1997年12月12日)
選定項目に係る予測の不確実性が大きい場合、効果に係る知見が不十分な環境保全措置を講ずる場合等において、環境への影響の重大性に応じ、工事中及び供用後の環境の状態等を把握するための調査(以下「事後調査」という。)の必要性を検討するとともに、事後調査の項目及び手法の内容、事後調査の結果により環境影響が著しいことが明らかとなった場合等の対応の方針、事後調査の結果を公表する旨等を明らかにできるようにすること。

59 CEQ Regulations 40 C.F.R. 1505.2

60 CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21081.6

61環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第14条第1項第7号ロ

62 「複数案を比較検討し、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当である。[改行]この場合、複数案の比較検討の内容は、建造物の構造・配置の在り方、環境保全設備、工事の方法等を含む幅広い環境保全対策について比較し検討することを意味するものであり、事業者が事業計画の検討を進める過程で行われるこうした環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当である。」(中央環境審議会. 今後の環境影響評価制度の在り方について(答申). 1997年2月10日)

63 脚注40 参照. 環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について 2.5.(3).ア. December 12, 1997.

64 「今回の法は、スクリーニング、スコーピング、事後調査など、従来の閣議アセスに事前、事後の手続きのプラス・アルファはあるものの、NEPAにはるかに及ばないシステムであると思います。[改行]森島さんらの審議会答申はNEPAに近いものであったと評価しています。しかし、法案は大幅にそれから後退しています。それゆえに私達は公聴会とか議員を通じてさまざまな修正要求を出しました。仮に修正要求が通ればNEPAにかなり近付くと期待していたのです。しかし、衆院環境委の採決では、[中略]社民党が政府案に1票を入れたことで、共同修正案は通りませんでした。」(青山貞一 et al. 環境影響評価法をめぐって. ジュリスト No. 1115. p.8. 有斐閣. 1997.)

65 例えば、Fulton, W. Guide to California Planning. Solano Press Books, Point Arena, Califorinia. 1991. pp.148-154.

66 TVA v. Hill, 437 U.S. 153, 98 S.Ct. 2279 (1978)

67 藤前干潟を守る会. http://www2s.biglobe.ne.jp/~fujimae/japanese/index.html
藤前干潟問題総集編 in 環境と正義. http://www1.jca.apc.org/JELF/FUJIMAE.html

68 Davis, J. W. S. Dispute Resolution in Japan. Kluwer Law International. 1996. pp.121-128

69 森島昭夫. 環境影響評価法までの経緯(1). ジュリスト No. 1115.有斐閣. 1997. p.25.

70 四日市ぜん息損害賠償請求事件. 昭和42年 (ワ) 第138号. (昭和47年6月24日判決) 判例時報 672号. 判例時報社. pp.30-111.
LEX/DBインターネット・データベース. http://www.tkclex.ne.jp/

71 「大気汚染物質を副生することの避け難い被告ら企業が、新たに工場を建設し稼動しようとするとき、[中略]事前に排出物質の性質と量、排出施設と居住地域との位置・距離関係、風向、風速等の気象条件等を総合的に調査研究し、付近住民の生命・身体に危害を及ぼすことのないように立地すべき注意義務があるものと解する。」

72 昭和25年法律第218号

73 大正10年法律第57号

74 昭和34年法律第24号

75 昭和48年10月2日公布、11月2日施行

76 川崎市環境影響評価に関する条例. 昭和51年10月.

77 宇和島市ごみ焼却場建設差止仮処分申請事件. 昭和53年 (ヨ) 第17号、第19号. (昭和54年3月22日判決) 判例時報919号. 判例時報社 pp.3-22.

78 昭和42年法律第132号

79 昭和47年法律第85号

80 憲法第13条及び第25条に基づき主張されている権利

81 憲法第13条に基づく権利

82 伊達火力発電所建設等差止請求訴訟. 昭和47年(ワ) 第929号. (昭和55年10月14日判決) 判例時報第988号. 判例時報社. pp.37-197.

83 原告は環境権と人格権によりただちにこのような義務が生ずると主張した。

84 小牧市共同ごみ焼却場操業禁止仮処分事件. 昭和57年 (ヨ) 第257号. (昭和59年4月6日判決) 判例時報第1115号. 判例時報社. pp.27-50.

85 裁判所は環境アセスメントの法的根拠はないとしたが、焼却場の操業により公害が発生することが予想されるのでそのようなアセスメントは必要であると述べた。

86 松原市ごみ焼却場建設差止等仮処分申請事件. 昭和51年 (ヨ) 第175号. (昭和61年6月16日判決) 判例時報 第1209号. 判例時報社. pp.67-92.

87 和白干潟損害賠償等請求及び公金支出差止請求事件. 平成6年 (行 ウ) 第14号、第15号、第16号. (平成10年3月31日判決) 判例時報 第1669号. 判例時報社. pp.40-78.

88 憲法第13条に基づく権利

89 例えば、平成6年より運用されている「京都市環境影響評価等に関する条例」改正平成11年条例第32号 available online at http://www.city.kyoto.jp/somu/bunsyo/REIIDX/INDEX/IDXPAGE.HTML
国の環境影響評価法は既存の地方公共団体の環境影響評価制度の最低限のレベルの制度を一律に提供し、それ以上のレベルの環境影響評価に関しては地方公共団体に決定権を与えるという考えが最初から織り込まれている

90 平成11年6月12日現在、全国の都道府県、政令市59団体のうち、46団体が環境影響評価法に対応した制度(条例44団体、要綱2団体)を制定していた。

91 CEQA Cal. Pub. Res. Code Section 21002

92 Davis, J. W. S. Dispute Resolution in Japan. Kluwer Law International. 1996. pp.121-128


参考・引用文献

日本国憲法

法令
環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)

環境基本法(平成五年法律第九十一号)

California Environmental Quality Act, Public Resources Code 21000 et seq.

National Environmental Policy Act of 1969, as amended

規則
環境庁. 環境影響評価法に基づく基本的事項について. 1997年12月12日.

Council of Environmental Quality Regulations. 40 C.F.R. 1500 et seq.

Office of Planning and Resources. CEQA Guidelines, Cal. Code of Regs., Tit. 14, Sections 15000-15387. 1998.CEQA Guidelines. Administrative Code Section 15000 et seq.

条例
川崎市環境影響評価に関する条例. 昭和51年10月.

京都市環境影響評価等に関する条例. 改正平成11年条例第32号

文献
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環境庁環境影響評価制度総合研究会. 環境影響評価制度の現状と課題について―環境影響評価制度総合研究会報告書. 1996年6月. (URL: http://www.eic.or.jp/eanet/assess/study/index.htm)

中央環境審議会. 今後の環境影響評価制度のあり方について(答申). 1997年2月10日.

"藤前干潟問題総集編"環境と正義. (URL: http://www1.jca.apc.org/JELF/FUJIMAE.html)

藤前干潟を守る会. (URL: http://www2s.biglobe.ne.jp/~fujimae/japanese/index.html)

森島昭夫. "環境影響評価法までの経緯(1)"ジュリスト No.1115. 有斐閣. 1997. pp. 25-30.

Bass, R. and A. Herson. Mastering NEPA: a step-by-step approach. Solano Press Books, Point Areana, California. 1993.

Canter, L.W. Environmental Impact Assessment, Second Edition. McGraw-Hill Inc. 1996.

Curtin, D. J. Jr., California Environmental Quality Act in Curtin's California Land Use and Planning Law, 17th Edition. Solano Press Books. pp. 87-100.

Davis, J. W. S. Dispute Resolution in Japan. Kluwer Law International. 1996.

Fulton, W. Guide to California Planning. Solano Press Books, Point Arena, Califorinia. 1991. pp.148-158.

Harashina, S. "EIA in Japan: Creating a More Transparent Society?" Environmental Impact Assessment Review. Vol. 18. 1998. pp. 309-311

判例
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小牧市共同ごみ焼却場操業禁止仮処分事件. 昭和57年 (ヨ) 第257号. (昭和59年4月6日判決) 判例時報 第1115号. 判例時報社. pp.27-50.

伊達火力発電所建設等差止請求訴訟. 昭和47年(ワ) 第929号. (昭和55年10月14日判決) 判例時報第988号. 判例時報社. pp.37-197.

松原市ごみ焼却場建設差止等仮処分申請事件. 昭和51年 (ヨ) 第175号. (昭和61年6月16日判決) 判例時報 第1209号. 判例時報社. pp.67-92.

四日市ぜん息損害賠償請求事件. 昭和42年 (ワ) 第138号. (昭和47年6月24日判決) 判例時報 672号. 判例時報社. pp.30-111.

和白干潟損害賠償等請求及び公金支出差止請求事件. 平成6年 (行 ウ) 第14号、第15号、第16号. (平成10年3月31日判決) 判例時報 第1669号. 判例時報社. pp.40-78.

Concerned Citizens of Costa Mesa, Inc. v. 32nd District Agricultural, Assoc. 42 Cal. 3d 929 (1986)

Friends of Mammoth v. Board of Supervisors, 8 Cal. 3d 247 (1972)

Inyo County v. City of Los Angels,139 Cal. Rptr. 396 (1977)

Minnesota Public Interest Research Group v. Butz, 498 F.2d 1314 (8th Cir. 1974)

Robertson v. Methow Valley Citizens Council, 490 U.S. 332, 109 S.Ct 1835 (1989)

図表リスト
図1. 環境影響評価法の流れ(EICネットホームページ参照)
図2. NEPAの流れ
図3. CEQAの流れ(CERESホームページ参照)
図4. 原告と裁判所の論理の不一致
図5. 予測される裁判所の論理

表1. 環境影響評価法と米国NEPAおよびCEQAとの比較
表2. 環境影響評価法で対象となる環境要素の範囲(EICネットホームページ参照)
表3. 環境影響評価法の対象事業(EICネットホームページ参照)
表4. 環境影響評価制度の変遷





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Last updated on February 18, 2001